絵日傘や

(三下り)
絵日傘や
鈴のぽくりに
猫じゃらし
絵に描いた様な
後つき
かけぬけて
見たら
鼻っピー

(新暦初夏五月・昭和六年作)
森暁紅 詞
吉田草紙庵 曲

この小唄にある「絵日傘」は昭和六年頃に流行したもので、
「銀座の柳」の歌謡曲にも唄われている。
「猫じゃらし」は帯の結び方で、
猫をじゃらかすように、
帯の掛と垂とを同じ長さに結んで垂らしたものである。
昭和六年は、前年から続いて不景気のドン底であったが、
夏は楽しく、娘は派手な水着を楽しみ、
鎌倉や逗子はピーチパラソルの花が咲いて賑わっていた。
小唄は背後から見ると、
絵にかいたような日本趣味の美しい娘姿に、
駆け抜けて前から見たら鼻の低い鼻ピー娘だった、
という「風鈴」と同じく飄逸男唄である。
木村菊太郎著「昭和の小唄その一」より