いま話題の裁判員制度についての、解法者さんの論説です。ご専門の経験を生かした解説とご意見は傾聴に値します。


■□■□■ 裁判員制度 ■□■□■


裁判員制度(0) 投稿者:解法者  投稿日: 1月27日(火)09時29分6秒

 一般国民のなかから刑事裁判に携わる者を参加させる<裁判員制度>の大要がまとまったようだ。
 裁判員は、原則として、裁判官3人に、裁判員6人、例外として、裁判官1人に、裁判員4人、裁判員は選挙人名簿に登録された20歳以上の者から、<無作為>に選出され、死刑・無期の懲役・禁錮に当たる重罪事件を担当し、守秘義務を負い、違反には懲役・罰金が科せられる
 裁判を今のままのように<職業裁判官>に独占させるのは大反対だが、この制度は国民の負担を強いることになるので反対だ。
 また、外国人から裁かれる対象になっているのだから、裁く<裁判員>にも登用しろ、というが必ず出て来るから、この制度を採用するなら<国民>に限ると明記すべきだ。裁判は国家の根幹に係わる問題だからだ。外国人を<裁判員>に登用すると裁判が外国人の権利主張の場と化す可能性がある。例えば、外国人に対する事実認定が甘くなる、量刑が甘くなることが十分に予想される。


裁判員制度(1) 投稿者:解法者  投稿日: 1月27日(火)09時30分24秒

 裁判官にせよ、検察官にせよ、弁護士にせよ、確かにある程度のレベルは必要だが、その試験に合格したものが特急列車というは間違っている。試験とは別に実社会にいる人を公募したらどうだろうか。彼らの判断が国民と遊離しているのは、実社会を経験したことがないことに大きな要因があると確信している。
 最近、裁判員制度の導入が叫ばれているが、それよりも先の公募制度を導入したらよい。
負担が大きいなら5年などと期限を切ってもよい。国民に負担が大きいというなら、夜間に裁判を行い、会社帰りに裁判を担当してもらってもよい。
 職業裁判官にしても任官したときに3年位くらい民間企業に勤務させたらどうだろう。それも小売などの最前線がよい。裁判官の任期は10年だが、これを少なくとも任期を迎える10年ごと2回は繰り返す。こうすれば国民の置かれている状況が理解できるであろう。
 裁判で判決を下す。そのための時間的拘束、能力を考えたら一般の人には負担が大き過ぎる。母の従兄弟がアメリカにおり、陪審員になった経験を聞いたが、時間的拘束(1ヶ月、2ヶ月というのもざらだそうだ)も大変だが、それよりも隔離されて外部との接触を禁じられたのがとてもつらかったという(州によって運用が異なるが、電話は原則として禁止、できる場合も立会い、盗聴付き)。日本の裁判員制度は身体的拘束がないが、時間的拘束は大きい。2,3年もある。身体的拘束がなければ、それでは秘密保持をどうするのか、暴力団事件の加害者側からの脅迫にはどう対処するのか、刑罰だけでは阻止できない。朝日新聞・日本弁護士連合会などは熱心に導入を説くが、皆さん、それに耐えられますか?


裁判員制度(2) 投稿者:解法者  投稿日: 1月27日(火)09時31分23秒

 有罪・無罪の判断も大変だ。一般人の方が正しい判断をくだす可能性も大きいが、証拠をどう評価する基準も難しい、均一な基準を一般人がどう策定できるか。さらに、量刑の判断が難しいと思われる、量刑を重くしてもかまわないが、類似犯罪に対する刑の均一性は重要だと思う。
 その他にも問題が山積している。裁判には裁判員の他に職業裁判官が加わることになっているが、表決の際に裁判員が職業裁判官の意見に引きづられないか、そうなっては何のための裁判員制度かということになる。
 また、裁判員の日当、交通費・宿泊費も大変だ。人数が増えるため法廷、庁舎も改造が必要となる。この費用をどうするのか。解決すべき問題が多い。


裁判員制度(3) 投稿者:解法者  投稿日: 1月27日(火)09時32分4秒

 この裁判員制度は、弁護士会の「法曹一元制度」のすりかわったものである。かって、弁護士会は裁判官は弁護士経験者から選任されるべきだという「法曹一元」を唱えていた。
これは、実社会に精通している弁護士こそが法曹の中心となるべきであって、裁判官もそこから選ばれるべきだという理念にささえられていた。<弁護士こそが実社会に精通している>とはとんだお笑い種で、傲慢不遜のそしりを免れないが、実際、弁護士から裁判官に替わった人はとても少なかった。これは収入、転勤、手持ち事件の他の弁護士への引継ぎなど困難な問題を解決できないため、「絵に中の餅」となってしまったのである。だが、何としてでも裁判官を民主的にしなければならないという信念から、次に考えたのが<陪審員制度>である。これはわが国でも一度大正年間に取り入れられている。結果は大失敗ですぐに廃止された。日本人は判官贔屓なところがあって、被告人が法廷で涙を流すとすぐに刑が軽くなってしまうことが多く、法の適正な適用が阻害されたからである。「陪審員」は訓練されないので、そのまま感情が法廷に持ち込まれ、このような結果となったのである。この傾向は現在でも危惧されるから、この制度を賛成する見解はついぞ支配的とはならなかった。


裁判員制度(4) 投稿者:解法者  投稿日: 1月27日(火)09時37分19秒

 そこで、最後に飛びつたのが国民が裁判に参加するという「参審員制度」から導かれた<裁判員制度>である。これなら、法的な訓練がなされるので、「陪審員」のような感情的になることも少ない。しかも、一般人を加えれば民主的になる。
 しかし、どうだろう、裁判に民主的な判断は必要であろうか。例えば、死刑が少なければ民主的か? 量刑が軽ければ民主的か? 無罪が増えれば民主的か? おそらく<裁判員制度>を唱える者たち(特に弁護士会)は、死刑が減り、量刑が軽くなることを期待していると思うが、そう問屋が卸さない。昨今の凶悪犯罪の多発から全く逆の結果の方が多いと思われる。そうなったときに、彼らはそれでも<裁判員制度>を支持するであろうか。
 裁判には適正な判断が必要である。>適正な判断<とは、>国民の意識から遊離しない判断<ということである。「民主的な判断」などは全く必要ない。
 私が<裁判員制度>に反対するのは、一般人が適正な判断を下せないという理由からではない。多大な負担をかけてまで、裁判に引きずり込む必要はないというのである。それでも裁判に参加したいという人があれば、登用する途を開けておけばよいというのである。「法は常識の集まりだ」というのがこちらの考えだ。「良い法曹とは良い常識人である」。こう考えれば何も法学専門家、法学を修めなかった人でも立派な裁判官になれると考える。法学などは登用されてからでも充分に修めることができる。同じ<裁判員制度>に反対する裁判所のように<裁判は職業裁判官に任せておけばよい>という考えは採らない。反対する理念が全く違うのである。


裁判員制度(5) 投稿者:解法者  投稿日: 1月27日(火)09時38分10秒

 裁判員制度を巡って、今、問題になっているのは、裁判員に課せられる「守秘義務」と「事件についての報道のあり方」である。
 この「守秘義務」については、評議の経過、裁判官・裁判員の意見とその多少の数、その他の職務上知り得た秘密を<永久>に漏らしてはならないとし、これに違反した場合には懲役刑も科すという。これについては、守秘義務を課すのには反対しないが、その範囲を限定すべきであるという意見がある(報道機関、弁護士会)。なお、全く「守秘義務」を課すべきではないとする意見は個人はともかく団体としてはないようである。
 そもそも、裁判官に「守秘義務」が課されているのは、@裁判官の自由な意見交換を保障する。A判決の権威を保持する(判決の正当性を確保する)、ことにあるとされる。
 裁判官の評議の内容が漏れると裁判官の自由な発言が保障されず、裁判の公正さが失われる、また、評議に参加した裁判官がその評議の内容を明らかにすれば(例 評議の結果は有罪だったが、自分は無罪を主張した)、判決の権威は失われてしまう。
 先の「守秘義務」の範囲、期間を限定すべきだという見解の根拠は、<裁判員制度>の運用の実態を知ることも国民の重要な権利であり、そのためには裁判員の体験を語ることを奪ってはならない、にある。


裁判員制度(6) 投稿者:解法者  投稿日: 1月27日(火)09時39分19秒

 外国の<裁判員制度>の例をみると、イギリス、フランス、ドイツでは、「守秘義務」が課されており、懲役刑が科される可能性もある。これに対し、アメリカでは「守秘義務」が課されていない(裁判官が個別に守秘を命ずる場合もある)。
 日本の場合を考えてみると、「守秘義務」の範囲の基準が難しい。仮にこれが可能としても、実際、素人である「裁判員」が発言する場合に、これを守れるかどうか疑問である。
やはり、職業裁判官に課せられている「守秘義務」の趣旨から、一律にこれを禁じるとすべきである。
 次に、「守秘義務」に違反した場合の刑罰についてであるが、戦前の「陪審制度」、「検察審査会制度」においては、罰金刑しか科せられていない、ことを根拠に「罰金刑」にすべきであるという意見がある(弁護士会、市民の裁判員制度をつくろう会)。
 しかし、現在、政府の「裁判員制度・刑事検討会」では「検察審査会制度」においても、その権限を拡大する(例 検察審査会の判断に検察官が拘束される)案が検討されており、この「検察審査員」の「守秘義務」違反についても懲役刑を科すという意見が支配的になっている。
 素人である者が名簿から無抽出に選ばれて「裁判員」になって、「守秘義務」違反について懲役刑を科すというのは酷なような気がするが、この制度を導入するなら、国家公務員に課せられた守秘義務違反についての懲役刑との整合性から、やはり、「裁判員」の「守秘義務」違反についても懲役刑を科すという方向が妥当である。


裁判員制度(7) 投稿者:解法者  投稿日: 1月27日(火)10時20分21秒

 政府の「裁判員制度・刑事検討会」では>報道機関の裁判員に接触を禁じ、裁判終了後の元裁判員に対して「職務上知り得た秘密を知る目的」で接触することを禁止する<ことが検討されている。この根拠は、守秘義務を課せられた「裁判員」を保護することにある。
 これについても、<裁判員制度>の運用の実態を知ることも国民の重要な権利であり、そのためには裁判員の体験(評議の経緯、裁判員制度の利点・欠点、感想など)を語ることを奪ってはならない、という意見がある(報道機関)。
 報道機関がこれまで<偏向報道>を行って来た経緯、それへの自制がなお困難である現状から、政府の「裁判員制度・刑事検討会」に賛同する。
 なお、犯罪者の実名、写真、職業などに対する報道は、<裁判員制度>を害しない。裁判員が裁判の場で知り得るからである。
 この「取材の制限」についても、外国の<裁判員制度>の例をみると、イギリスでは、陪審員に接触が禁止され、「裁判所侮辱罪」で懲役刑が科される可能性もある。フランスでは、接触の禁止規定はないが、評決前に取材に応じると判決が上級審で破棄される可能性がある。ドイツでも、接触の禁止規定はないが、評議の内容を聞き出すと「秘密漏洩罪」の教唆にあたり、懲役刑が科される可能性もある。アメリカでは、裁判中の取材は禁止されている(陪審員が隔離され、報道機関と接触ができない場合(州)もある)。


裁判員制度(8) 投稿者:解法者  投稿日: 1月27日(火)10時21分11秒

 裁判に関する報道機関への規制については、報道機関は報道機関の自制に委ねるべきだと主張している。報道機関の意見としては当然といえば当然だが、これに賛成できないことは前記のとおりである。
 この「裁判に関する報道機関への規制」についても、外国の<裁判員制度>の例をみると、イギリスでは、公平な裁判を妨げる場合には、「裁判所侮辱罪」で懲役刑が科される可能性がある。フランスでは、規制が厳しく罰金刑が科せられる。ドイツ、アメリカでは、規制がない。
 政府の「裁判員制度・刑事検討会」は、犯罪者に対する報道については、裁判の評議・評決に影響を及ぼすことを禁止するが、罰金は科さない方針である。
 犯罪者に対する報道について規制を設ける必要はないと考えるが、<裁判員制度>を導入するならば、裁判の評議・評決に影響を及ぼすことを禁止し、違反した場合は、罰金を科さないと実効性がないと思う。


裁判員制度(9) 投稿者:解法者  投稿日: 1月27日(火)10時27分57秒

 私は<裁判員制度>の導入には前記の理由から反対だが、これを導入するならば、最大の課題は、「裁判員」をどう犯罪組織から守るということにある。一番重要な課題であるにもかかわらず、このことが全く語られていない。全く理解できない。
 職業裁判官は多く官舎に住み、警察などに守られている。一般人の「裁判員」はそれが難しい。もちろん、任期中の警護も必要だが、任期後の警護も忘れてはならない。裁判が終われば任務は終了し、今までの生活に戻る。犯罪者の証人などへの報復は今でもある。これをどう防ぐかである。<刑罰>だけでは防げない。暴力団、外国人などの犯罪者が「裁判員」に圧力をかけることは十分に考えられる。警察の検挙率の低下を考えれば、とうてい、これを防止できない。弁護士会、市民の裁判員制度をつくろう会の方々、そういう事態が発生した場合には責任を負担していただけますね。裁判の「民主化」はいいが、犠牲者も出ますよ。アメリカでもこれを題材にした映画がある。危険はすぐそこに来ている。
 ここのところの討論が欠けているところに、政府の「裁判員制度・刑事検討会」および先の団体の欠陥がある。
 <裁判員制度>は、国民に多大な負担を強いるもので、賛成できない。

 この稿については、資料として「読売新聞 平成15年(2003年)11月21日朝刊 13版」、「産経新聞 平成16年(2004年)1月27日朝刊 15版」、を引用した。


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