■□■□■ サンフランシスコ講和条約第十一条の毎日新聞社訳(オロモルフ)■□■□■


■■■ まえがき ■■■

 サンフランシスコ講和条約の第十一条は、一部の政治家がA級戦犯の靖国合祀に反対する理由として持ち出してから、「第十一条問題」として有名になりました。
 これについて条約発効当時の新聞社がどのように理解していたかがわかる資料がありますので、ご紹介します。
 その前提として、「第十一条問題」についての正論派の意見を概観します。


■■■ 「第十一条問題」とは ■■■

 昭和二十七年四月二十八日、「サンフランシスコ講和条約/Treaty of Peace with Japan 」が発効したことによって、日本は建国以来初の占領から脱して独立権を回復したのですが、この条約の第十一条の日本文に「日本国は・・・連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し・・・」とあるのを、恣意的に拡大解釈して、
「東京裁判を認めると約束したのだから、元A級戦犯もたしかに戦犯だと認めるべきであり、したがって合祀はよくない」
 ――という言い方で、反日家たちが靖国神社反対運動に利用しました。
 これが「第十一条問題」です。

 ここで、問題の第十一条の全文を、外務省訳の日本語と英語(正文)で記しておきます。

『第十一条』
 日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。これらの拘禁されている者を赦免し、減刑し、及び仮出獄させる権限は、各事件について刑を課した一又は二以上の政府の決定及び日本国の勧告に基くの外、行使することができない。極東国際軍事裁判所が刑を宣告した者については、この権限は、裁判所に代表者を出した政府の過半数の決定及び日本国の勧告に基くの外、行使することができない。

『Article 11』
Japan accepts the judgments of the International Military Tribunal for the Far East and of other Allied War Crimes Courts both within and outside Japan, and will carry out the sentences imposed thereby upon Japanese nationals imprisoned in Japan. The power to grant clemency, to reduce sentences and to parole with respect to such prisoners may not be exercised except on the decision of the Government or Governments which imposed the sentence in each instance, and on the recommendation of Japan. In the case of persons sentenced by the International Military Tribunal for the Far East, such power may not be exercised except on the decision of a majority of the Governments represented on the Tribunal, and on the recommendation of Japan.


■■■ 第十一条の理解 ■■■

〈一〉
 講和条約を締結した以上、講和条約の原則によって、国内で拘束されている元戦犯たちを釈放するのは日本の自由です。そこで講和後も日本を束縛するために付加されたのがこの第十一条だと言われています。
(つまりこの第十一条自体が講和条約の精神に反していると考えられます)

〈二〉
 第十一条では、裁判の結果拘禁されている人々の刑執行を日本が肩代わりすることや、赦免や減刑や仮出獄する場合の手続き、などが決められています。
「赦免・減刑・仮出獄の手続を定めている」点に注目するべきです。

〈三〉
 赦免や減刑や仮出獄については、東京裁判の場合(A級)は日本国の勧告と代表を出した連合国の過半数の決定が必要、その他(BC級)については、日本国の勧告と刑を科した政府の決定が必要――と決められています。

〈四〉
「裁判を受諾」とは、独立したとたんに日本が戦犯とされた全員を放免してしまわないように留め金をかけた文言ですが、この原文は、「accepts the judgments」です。
 つまり和訳文で「裁判」となっているのは東京裁判の正当性といった事ではなく、単なる「判決の結果(複数)」にすぎませんから、ここは「判決を受諾」あるいは――渡部昇一先生が言われるように――「諸判決を受諾」とするのがより正確な訳文でしょう。
「諸判決の結果を勝手にはくつがえさない。釈放するときなどは連合国側の同意が必要」という意味です。
 他の正文であるフランス語では「accepte les jugements」、スペイン語では「acepta las sentencias」で、いずれも英語と同じく裁判ではなく「判決(複数)の受諾」という意味です。
 ですから、講和後まで日本を束縛する第十一条自体が講和の精神に反しているだけでなく、訳文もおかしいのです。

 この部分をあえて素人向きの意訳にしてみますと、
「とりあえず諸判決を受け入れなければならないが、それを変更する場合には以下の手続きを必要とする」
 ――となるでしょう。
 条文の後半の英文は否定文ですが、実質上は元戦犯の赦免の方法などを定めた条項だからです。
 そして占領後の日本はそれに忠実に従って元戦犯を釈放したのです。


■■■ 当時の日本政府の条文解釈 ■■■

 発効の前年の昭和二十六年の国会で、大臣や外務省が質問に応じて第十一条についての意見を述べておりますが、それらを見ましても、「東京裁判の思想そのものを受諾する」という意味の文脈はまったくありません。
 すべて「判決の受諾」と理解しているように思われます。
 例をあげます。
 昭和二十六年十月十一日の衆議院の「平和条約及び日米安全保障条約特別委員会」において、外務省の西村熊雄条約局長は、
「第十一条は戦犯に関する規定であります。戦犯に関しましては、平和条約に特別の規定を置かない限り、平和条約の効力発生と同時に、戦犯に対する判決は将来に向かって効力を失い、裁判がまだ終わっていない場合は釈放しなければならないというのが国際法の原則であります。従つて十一条はそういう当然の結果にならないために置かれたものでございます(大意)」
 ――と説明しています。
 ここには、東京裁判の理念を認めるという解釈はまったくありません。

 なおこの第十一条に直接関係する国内法としては「平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律」が「サンフランシスコ講和条約」発効と同一年月日に施行されていますが、そこでは、旧敵国と密接に連絡をとりながら第十一条を適正に実行することが決められていて、日本側が条約に忠実であったことがわかります。


■■■ 毎日新聞社が発表した第十一条の正しい訳文 ■■■

 下に、昭和二十六年の七月に毎日新聞社が発表した講和条約の訳解書の写真を掲示します。



 上が表紙で、人物はダレス特使です。



 これが第十一条の訳文です。問題の箇所が「判決を受諾」となっている事に注意してください。新聞社がこのような妥当性の高い訳文を発表しているのに、なぜ外務省が「裁判を受諾」という誤解を招く訳にしたのか、疑念を持ちます。



 これは第十一条に関連する毎日新聞社の解説です。
「戦争裁判は占領軍の軍事行動として行われたもので、講和後は、・・・当然に自由になるわけである」――と、明白に記しています。
 これは前記の西村条約局長の答弁と同じ解釈です。
 講和条約が結ばれるまでは日本と連合軍との間には戦争状態が続いていたわけですから、その期間に一方的になされた裁判がが軍事行動である事は明白です。
 講和条約の第一条にも、
「日本国と各連合国との戦争状態は、第二十三条(批准、効力発生の条文)の定めるところによりこの条約が日本国と当該連合国との間に効力を生ずる日に終了する」
 ――と記されています。
 つまり東京裁判などがなされていた期間は戦争状態だったわけで、その期間に一方的に断罪され死刑になった方々は一種の戦死であり、靖国神社に合祀されない理由は無いのです。



 この奥付によって、講和条約締結の直前の訳解であることがわかります。


■■■ 補足 ■■■

 ここまでも国際法の権威である佐藤和男教授(青山学院大名誉教授・植草学園短期大学学長・法学博士)の本を参考にしていますが、さらに佐藤先生の言葉をつけ加えます。

(一)
 この第十一条はアムネスティ条項(交戦法規違反の責任を免除する規定)を無視したものであることが、国際法学者によって指摘されています。
 つまり第十一条それ自体が、法の精神に違反していると考えられるのです。

(二)
 昭和六十一年にソウルで、世界中の国際法学者が集まる国際法学会が開催されましたが、その会議に出席した佐藤教授に対して、第十一条問題について議論したすべての国際法学者が、
「日本政府は、東京裁判については、連合国に代わり刑を執行する責任を負っただけで、講和成立後も、東京裁判の判決理由によって拘束されるなどということはない」
 ――と、語ったそうです。
 佐藤教授はさらに次のように記しておられます。
「(東京裁判に対して)いかなる批判や再評価をもその裁判や判決理由に下すことが自由であり、この自由こそが、講和を通じ代償を払って獲得した国家の「独立」の実質的意味なのです」


■■■ 日本を弁護してくれた国々 ■■■

 同じ連合国でもメキシコ、アルゼンチンなどいくつかの国は、この第十一条自体にも猛反対して日本の味方をしてくれました。
 靖国神社のパンフからメキシコ代表の発言を引用しておきます。
「われわれは、できることなら、本条項が連合国の戦犯裁判の結果を正当化しつづけることを避けたかった。あの裁判の結果は、法原則と必ずしも調和せず、特に「法ナケレバ罪ナク、法ナケレバ罰ナシ」という近代文明の最も重要な原則、世界のあらゆる文明諸国の刑法典に活用されている原則と調和しないと、われわれは信ずる」
 さらにインドは、パール判事が裁判で日本の味方をしてくれただけではなく、日本にとって有利な条約を個別に結んでくれました。


■■■ むすび ■■■

 そもそも講和条約とは、国と国との間で戦争などの紛争が有った後、紛争による敵対行為を終了させて平和を築くという近代の知恵ですから、講和条約が結ばれた後で、合意した内容に反して反日運動のような敵対行為を行うのは、近代国家とは言えません。
 第十一条を靖国神社参拝反対の根拠とする議論は、完全に破綻しているのですが、この破綻を感情論を煽ることによって覆い隠そうとしているのが、プロパガンダに専念する近隣国や反日家たちなのです。


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