■□■□■ 建築設計偽装事件の民事責任(解法者)■□■□■


 解法者さまが、今度は偽装問題の民事責任を解説してくださいました。
 どうかご覧ください。
(オロモルフ)


◆◆◆ 建築設計偽装事件の民事責任(1)  投稿者: 解法者  投稿日:12月31日(土)00時42分59秒 ◆◆◆

 民事訴訟については、購入者は建築主(売主)に対しては、瑕疵担保責任を追及することになるだろう。
 具体的にいうと、マンションの場合は、購入者はヒューザー、木村建設などの売主に対して瑕疵担保責任を求めることができる。
 これについては「住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成12年4月1日施行)」によって、建物の引渡を受けたときから10年間瑕疵担保責任を請求できる(同法第88条1項)。
 その「瑕疵担保責任」とは、
@建物の補修の請求、
A損害賠償である(民法第634条1項、2項前段、同法第566条1項)。
 Aの内容は、
(1)補修期間の代替建物の賃貸料、引越費用(民法第634条1項、2項前段)
(2)補修が不可能(不能)なときは、購入代金およびこれに対する支払日より年6分の遅延損害金(民法第566条1項)、ということになる(本件建物売買契約の解除が必要)。
 つまり、民法の瑕疵担保責任が強化されている。「住宅の品質確保の促進等に関する法律」は民法の特別法ということになる。

 瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん) 法律を見慣れてない人には用語からして敬遠したくなるような感じがすると思うが、購入した物に隠れた欠陥(瑕疵)があったときに、それを補償するというものである。タンスを買ったが、後で見てみたら大きな傷がついていたとか、数量が足りなかったというような場合の補償規定と考えれば、容易に理解できると思う。


◆◆◆ 建築設計偽装事件の民事責任(2)  投稿者: 解法者  投稿日:12月31日(土)00時38分53秒 ◆◆◆

 瑕疵担保責任が追及できるのは、あくまで、契約関係にある売主に対してであって、契約関係にない建築会社、設計士、建築確認機関などに対してはできない。
 具体的にいうと、マンションの場合には例えば、ヒューザーが建築主(売主)となって、木村建設が建築し、設計を姉歯1級建築士が行い、イーホームズが建築確認の偽造を見逃して建築確認証を交付したとすると、購入者は売主のヒューザーとは契約関係にあるが、その他の者とは契約関係にない。したがって、これらの者に対しては、不法行為責任を追及することになる(民法第709条)。
 売主についても瑕疵担保責任ではなく、この不法行為責任を請求できる。ただし、両方はできない。同時に請求してもよいが一方のみ認容される。ただ瑕疵担保責任の方が立証が簡単なので(売主の故意・過失を立証しなくてよいーこれが大変大きい)、それでいくことになると考える)。
 不法行為責任の内容は、購入代金と同額の損害金およびこれに対する支払日より年5分の遅延損害金ということになる。
 なお、建築会社、設計士、建築確認機関などは、共同不法行為責任を負うことになる(同法第719条)。


◆◆◆ 建築設計偽装事件の民事責任(3)  投稿者: 解法者  投稿日:12月31日(土)00時33分54秒 ◆◆◆

 共同不法行為(民法第719条)は難しい概念である。本来は加害者が被害者に加えた損害についてその間に相当因果関係(一般人の常識からみて、原因があって結果が生じたという関係)が存在しないと責任を負担しない。
 ところが、共同不法行為とは、この相当因果関係が存在しなくとも責任を負担しなければならないというもので、この原理の例外となっている。
 つまり、加害者の各々が通謀(加害意思の共謀)していなくとも、全ての責任を負うということである。つまり、本件でいえば、ヒューザー(建築主―売主)、木村建設(建築会社)、姉歯1級建築士(構造設計担当者)、イーホームズ(建築確認機関)が負う損害を<相当因果関係の存否に関係なく>各々が全て賠償しなければならないということであり、連帯責任(正確には不真正連帯責任)を負担しなければならないのである。
 条文にいう「共同不法行為」および「共同行為」の概念が明確でないことに難問があるが、これはあまりに専門的なのでここでは解説しない。
 ここでは、加害者が複数存在し、誰が被害者の損害についての原因を作り出したか不明の場合にも、その損害については全責任を負うと理解していただきたい。
 例えば、交差点で自動車同士が正面衝突し、お互いの車がさらに他の自動車に衝突し、その他の一台が歩道に乗り上げ、通行人を死亡させた場合、衝突した自動車にしても最初の衝突が原因で通行人の死亡とは<相当因果関係>がないと考えられる。こうした場合でも全ての自動車の運転手がその損害を賠償しなければならないというもので、被害者保護がその根底にある。
 本件でもこれと同じ構造である。


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