■■■ 女流将棋タイトル戦について(オロモルフ)■■■


◆◆◆ オロモルフ号の航宙日誌5316『世相家事雑感』◆◆◆

▼女流タイトル戦の一番目「女流名人戦」

(今日からしばらく、あまり知られていない女流棋士界のタイトル戦を調べて、ご紹介します。全部で六つあります)

「女流名人」というタイトル戦は、1974年にスタートしました。
 女流タイトル戦でもっとも古い歴史があります。
 主催は報知新聞で、現在の特別協賛が株式会社ユニバーサルエンターテインメントでして、現在の正式名称は「ユニバーサル杯女流名人位戦」です。
 ですから、最近森内九段が名人になった朝日と毎日の名人戦とは、かなり違います。
 蛸島彰子が初代女流名人で、それから、山下カズ子といった大ベテランの時代を過ぎて、林葉直子、中井広恵、清水市代の時代となり、斎田、矢内などを挟んで、現在は里見三冠が清水を連続して下して、女流名人位を二期堅守しています。

 挑戦するまでの過程ですが、挑戦者は10人からなるA級リーグ戦の優勝者です。
 その下にB級リーグ戦があり、これも10人からなっていて、成績上位が次の年度にA級に上がります。
 B級リーグの前にトーナメントがあり、5名が選ばれて、B級に入ります。つまり毎年半数が交代するわけでして、激しい世界です。
 A級とB級の入れ替えは、毎年3名です。

 まあ、(男性)名人戦のA級からC2級までの五段階の順位戦とフリークラスを簡単化したものと思えます。
 昇段昇級では、B級に一度入るとまだ一級になっていない棋士は一級になります。A級に一度入ると、まだ初段になっていない棋士は初段になります。
 このあたりの規程も男性順位戦に似ています。
 現時点では、A級では清水六段が全勝中です。昨期も清水が全勝して里見に挑戦しましたが、三連敗で退けられました。今度こそは――と決意していると思います。

 リーグ戦の対局の様子は、インターネットでの公開はなされていないようです。
 なおタイトル料は、(男性)に比してかなり低いと思います。

 日本将棋連盟では、強い女流棋士を育てて宣伝したいと、必死になっているようです。


◆◆◆ オロモルフ号の航宙日誌5318『世相家事雑感』◆◆◆

▼女流タイトル戦の二番目「女流王将戦」

 この棋戦は女流名人戦についで古く、1978年に開始されました。タイトル戦は三番勝負で、短めです。
 主催は「囲碁将棋チャンネル」で、したがってスカパーによく出ます。
 協賛が霧島酒造(株)なので、現在は「霧島酒造杯女流王将戦」と呼ばれています。また協力としてBTVケーブルテレビ(株)の名があります。

 初期のタイトルは当然ながら蛸島彰子で、その後林葉直子が長いこと独占し、それを清水市代が破ってから、いろんな人がタイトルを取りました。千葉、中井、石橋、斎田などです。そして現在は、昨年清水を破った里見三冠がタイトルを持っています。

 まず予選ですが、全女流棋士に選ばれた女流アマ(今年は5人)が加わったトーナメントでなされます。
 ほぼ二局の戦いで12人が選ばれ、それにシード選手を加えた16人で本戦がなされます。本戦もトーナメントで、その優勝者がタイトルホルダーに挑戦します。
 今年は誰が里見に挑戦するのか、見物です。

 この棋戦はタイトル戦も三番勝負で、特別短いのですが、対局そのものも、持ち時間25分、切れたら40秒将棋と、早指し戦となっています。
 したがって長考型は不利です。

(この棋戦が現在の形になったのは比較的新しく、最初は将棋マガジン主催、後に株式市場新聞が主催、さらに後に日刊スポーツが主催。などで、ごく最近も休止が伝えられ、霧島酒造などの協賛で再開となったらしいです。日本社会の経済情勢で大きく左右されてきたのですね)


◆◆◆ オロモルフ号の航宙日誌5326『世相家事雑感』◆◆◆

▼女流タイトル戦の三番目「マイナビ女子オープン女王戦」

 毎日コミュニケーションズという会社は、将棋に関するいろんな出版をしていますが、昔から「週刊将棋」という新聞を出しています。
 それの主催という形で、1987年から20年間、レディースオープン・トーナメントという公式戦をやっていました。
 それを2007年にタイトル戦に昇格させて、マイナビ女子オープンという名の棋戦を作りました。タイトルの名は「女王」です。
 優勝賞金は500万円で、現在の女流棋戦では最高額です(他にも同額がありますが)。本戦トーナメントの賞金は、一回戦の10万円から最終の45万円まで。なおタイトル戦で敗れた方は150万円です。正直、少ないですね。女流棋士で公式対局だけで生活出来る人は少ないそうです。

 2008年からタイトルを取ったのは、矢内理絵子・矢内理絵子・甲斐智美・上田初美で、次は第五期となります。

 それまでに無かった大きな特色は、「オープン」という言葉で分かりますように、アマの参加を認めていることで、年々拡大しています。また他に無い特色としては、予選は全員の一斉対局で、無料で見学出来る事です。
 今年は7月16日に、主催会社の建物のマイナビルーム(とても大きな部屋らしい)でなされます。
 持ち時間は予選が40分。本戦とタイトルマッチ(五番勝負)が三時間です。

 タイトルに挑戦するまでの棋戦は下記の通りです(第五期の場合)。

(1)チャレンジマッチ本戦トーナメント
 多くの有名アマに前期成績の悪かった少数のプロが加わって、敗者復活方式のトーナメントがあり、全勝で5名、敗者復活戦で5名、計10名が選ばれました。その中にはツアープロの渡辺や女流三級でプロを目指している相川も含まれていました。プロがだいぶ負けています。

(2)一斉予選
 上で選ばれた10名のアマ(+少数のプロ)と、3名の奨励会娘と、昨期アマとしてはただ一人本戦に進出した長谷川優貴アマの計14人が、プロ棋士34人に加わって、合計48人で一斉になされます。
 長谷川アマは昨年の一斉予選で二人のプロを破って評判になった中学生です。今年はたぶん高校一年だと思います。
(とにかく女流プロは中学高校生のアマによく負けるのです。負けん気の強い米長会長が躍起になるのも分かりますね)
 この48名が4人ずつ12の組みに分かれてトーナメントをして、各組の優勝者計12人が本戦に進みます。
 4人ですから、2勝すれば選出されます。

(3)本戦
 やはりトーナメントで、上記予選を抜けた12名と、シード4名の計16名で争い、優勝者がタイトル戦に出て、上田女王と五番勝負をするわけです。
 なお今期の本戦シードは、前期タイトル戦敗者と本戦四強です。具体的には、石橋・矢内・斎田・甲斐(前女王)です。


◆◆◆ オロモルフ号の航宙日誌5328『世相家事雑感』◆◆◆

▼女流タイトル戦の四番目「女流王位戦」

 これは、*(男性)王位戦(今年は羽生さんが挑戦者に決定し、早稲田学生の広瀬王位への挑戦が7月12.13日から開始)と同じく、新聞三社連合(北海道新聞・東京新聞・中日新聞・神戸新聞・徳島新聞・西日本新聞)が主催です。
 方式もほとんど同じです。

 *:「女流王位戦」と「王位戦」って、とても紛らわしくて書きにくいので、混乱しやすい場面では、女流で無い方に(男性)を付けます。
 女流でない棋戦は男女を問わないのですが、今のところは男性しかいませんので、そういう書き方にします。

 これまでに女流王位のタイトルを取りましたのは、
 1990年から92年まで中井広恵、1993年から96年まで清水市代、1997年矢内理絵子、1998年から2006年まで清水市代、2007、8年石橋幸緒、2009年清水市代、2010年から11年は甲斐智美。過去は清水が圧倒的です。
 この掲示板でも書きましたが、ごく最近清水が甲斐に挑戦するタイトル戦が有って、二勝二敗という好勝負の末、甲斐が三勝してタイトルを守りました。

 タイトルまでの方式は(今期の場合)、

◎予選トーナメント
 シード以外の全女流棋士が、六人か七人よりなる六つのブロックに分かれて、各ブロックからトーナメントで全勝一人を選び、選ばれた六人が紅白リーグ戦に進みます。

◎挑戦者決定リーグ
 予選トーナメントから勝ち上がった六名と、シードの六名を混ぜた十二名を、六名ずつの紅白二組に分けます。そして各組みで総当たりのリーグ戦をおこないます。
 紅組みの優勝者と白組みの優勝者が、挑戦者決定戦をおこない、その勝者がタイトルホルダーに挑戦します。タイトル戦は五番勝負で、三勝した方がタイトルを取ります。

 持ち時間は女流棋戦としては比較的長く、予選が二時間、紅白リーグ戦が三時間、タイトル戦が四時間です。四時間というのは女流棋戦では最長だと思います。

 次期王位戦の予選はこれからだと思います。


◆◆◆ オロモルフ号の航宙日誌5342『世相家事雑感』◆◆◆

▼女流タイトル戦の五番目「大山名人杯倉敷藤花戦」

 大山名人杯倉敷藤花戦というのが正式名称で、主催は倉敷市と倉敷市文化振興財団と山陽新聞です。
 倉敷市出身で数々の大記録を作った大山康晴十五世名人の功績をたたえ、倉敷市芸文館の開館に合わせて1993年に創設された棋戦で、藤花というのは倉敷市の花。

 棋戦の制度は、タイトル保持者を除く全女流棋士でトーナメントをおこない、その優勝者がタイトルに挑戦します。
 タイトル戦は三番勝負です。(うち二回は倉敷でなされ、そのうち一回は公開されます)
 持ち時間は二時間で、チェスクロック使用。
 これまでのタイトル保持者は、
 初代が林葉直子で1回、清水市代が10回、中井広恵が3回、斎田晴子が1回、現在は里見香奈で3回。


◆◆◆ オロモルフ号の航宙日誌5358『世相家事雑感』◆◆◆

▼女流タイトル戦の六番目「リコー杯女流王座戦」

 女流タイトル戦の最後が「リコー杯王座戦」です。
 これは、インターネットで棋譜も現場写真も中継されますので、多くの棋戦の中でもっとも引用がしやすく、そのためこの掲示板で何度も取り上げています。
 リコー杯のサイトによって、その内容をご説明します。

◎設立
 今年度――つまり2011年4月から始まった、もっとも歴史の新しい女流タイトル戦で、(株)リコーと日本将棋連盟が主催し、日経が協力しています。

◎特徴の一
「女流棋界最高学の優勝賞金」
 タイトル戦は五番勝負で、賞金は500万円です。
 これは女流棋戦としては最高額です。
 準優勝賞金は150万円です。
 タイトルの名前は「王座」です。

◎特徴の二
「すべての女性に門戸を開くオープン大会」
 これまではプロの女流棋士のみの参加が主流でしたが、最近ではオープンと称して正規のプロ棋士以外の参加を認める棋戦が出来るようになりました。マイナビ女子オープンはその例ですが、リコー杯はさらに徹底しています。
 すなわち――
 出場する選手の対象を、すべての女流棋士に加えて、女性奨励会員、アマチュアの女性にまで拡大。
 また出場については女流棋士・女性奨励会員を含めて、将棋界初となるエントリー制による完全なオープン大会とする。
 アマチュア選手は別途、予選会を実施して八名程度を選抜する。
(奨励会員は、希望さえすれば一次予選に参加でき、今年は計三名の全員が参加しました。今年のアマは、関西でのアマ予選で三名、関東のアマ予選で五名が選ばれました。エントリー制というのも、珍しいもので初めての試みだそうです)

◎特徴の三
「将棋のグローバル化への貢献」
 将棋界としてははじめて、出場選手に海外枠を設けた。
 今年は、中国の将棋少女である張天天が推薦されて出場した。

◎タイトル戦までのスケジュール
(今年度の場合)
 4月:アマチュア予選
 5月:一次予選トーナメント(アマを含めた約60名が20組に分かれてトーナメントをして各組の勝者が二次に進む)
 6月:二次予選トーナメント(一次を勝ち進んだ20名とシード8名の計28名から14名が本戦に進む)
 7月〜:本戦トーナメント(14名+シード2名の計16名で行う)
 10月〜:タイトル戦五番勝負
 来年1月:就位式

◎持ち時間
 一次予選:40分(チェスクロック)
 二次予選:3時間(チェスクロック)
 本戦:3時間
 タイトル戦:3時間

◎新聞掲載
 タイトル戦と挑戦者決定戦を日経に掲載。

(女流タイトル戦の解説はこれで終了です)


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