■■■ フレミングの左手則と右手則(オロモルフ)■■■


◆◆◆ 1 偉大なフレミング ◆◆◆

 フレミングというのはイギリスの有名な物理学者・電気工学者で、真空管を発明した人物として知られていますが、同時に無電機回路にも大きな貢献をしており、マルコーニの学術上の相談相手になっていました。
 私が感心したのは、明治期に翻訳された『ヘルツ波無線電信』という本です。
 下に写真を示しましたが、じつに素晴らしい内容でして、流石はフレミングです!
 日本の本ではどうも分かりかねた問題のいくつかが、このフレミングの本で解決しました。
 現在の目で見て問題の本質だと思う事柄が、明治の本にちゃんと書いてあるのです。

 さておそらく、一般の方々にとってフレミングの名は、高校時代の理科でたぶん習ったであろう、左手則と右手則でお馴染みではないでしょうか。
 最近ではあまり教えないようですが、石原博士の高校時代には授業に出てきました。
 左手や右手の親指・人差し指・中指に、磁場の向き・電流の向き・力の向き・導体が動く向きなどの電磁気的な意味を与えて覚える法則です。
「フレミングの左手則」
「フレミングの右手則」
 の二つがあり、左手則はモーターに関係の深い法則で、右手則は発電機に関係の深い法則です。
 じつは私は、この法則がとても苦手でした。
 何が何だか分からずに終わりました。
 ところが、大学に入って二年から三年になり専門的に電磁気学を学ぶようになってから、ファラデイ→マクスウエルの場の概念を身につける事が出来まして、先生の講義にあったテンションフィールドという考え方でよく理解出来まして、フレミングの法則など覚えなくとも結果が簡単に導けるのだと分かりました。
 物体の力学的な歪みのアナロジーで電磁場を理解したファラデイやマクスウエルはじつに偉大でした。それはのちにアインシュタインの相対論にも結びつきました。

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◆◆◆ 2 左手則と右手則 ◆◆◆

 次の図は、昔の百科の解説図です。

「フレミングの左手則」
 左手の人指指:外部からかかっている磁場の向き
 左手の中指 :その磁場の中での電流の向き(電線を流れる電流の向き)
 左手の親指 :そのとき電流に作用する力(電線にかかる力の向き)
 これは、磁場の中に磁場と直交する電線を張ってそこに電流を流すと、磁場とも電線とも直交する向きに、電線への力が働くというものです。その親指はその力の向きを示します。
 つまり、磁場と電流とによって力が発生するわけで、これが電動機(モーター)の原理です。
 エネルギーという観点では、電気的なエネルギーを運動のエネルギーに変換する装置の原理です。

「フレミングの右手則」
 右手の人指指:外部からかかっている磁場の向き
 右手の親指 :その磁場の中の電線を動かす向き
 右手の中指 :そのときに電流が流れる向き(発生する電圧の向き)
 これは、磁場の中に磁場と直交する電線を張ってそれを磁場とも電線とも直交する向きに動かすと、その電線に電流が流れるというものです。中指はその電流の向きを示します。
 つまり、磁場と力によって電流が発生するわけで、これが発電機の原理です。
 エネルギーという観点では、運動のエネルギーを電気的なエネルギーに変換する装置の原理です。

 さて以下は、大学に入ってから理解した記憶法です。
(私のような理解の仕方は、最近では当然の事になっているようです)

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◆◆◆ 3 フレミングの左手則 ◆◆◆

 フレミングの左手則を、場による歪みという観点で説明してみます。
 図をご覧ください。
 Mという破線で描かれた直線は外部から加えられている磁場です。図の下から上に向かっています。
 中心の小さな丸と×は、電流Iが画面の手前から奥側に向かって流れているという意味です。電流を矢で示し、×は矢尻を意味します。
 電流がこのように流れますと、それによる磁場はmとされる破線の円のように出来ます。この円周状の磁場の向きは、矢を右ネジをねじ込むような向きになっているので、右ネジの法則と言います。
(右ネジというのは定義ですから、すべてを反対にしても同じことですが、伝統的にこうしています)
 で、こういう図を描きますと、電流の左側は、磁場のMとmが足し合って、磁場が濃くなる事がが分かります。右側はその反対で、引き合って薄くなります。
 つまり、電流としては、自分の左が混んでいて右が空いた状態ですから、混んでる方に押されて空いた方に身体が動くでしょう。
 それが、この電流に働く力です。図で右側に力が働くのです。
 これが、フレミングの左手則の、場の歪みという観点からの理解です。
 この電流に作用する力の向きは、電磁場のエネルギーが場という形で空間に蓄えられるというイメージが頭の中にあれば、絶対に間違えることがありません。
 またもう一つ、「自然の性質」が頭に入っていれば、間違えません。
「自然の性質」にはいろいろな種類がありますが、私が好きなのは、

a<自然は均質化を好む>
b<自然は変化を嫌う>
c<エネルギーは保存される>

 ――の三つです。
 場の混んでる場所から空いてる場所に移動しようとする上の力は、aやbの性質が自然に有るからだ――として理解する事が出来ます。

 マクスウエルは、コイルによるファラデイの電磁誘導にマクスウエル自身が考えたコンデンサーを流れる変位電流の仮説を元にして、空間の場という概念を物体の歪み(たとえば硝子の歪み)のアナロジーで描いて、電場と磁場の微分方程式を導きました。
 そしてそれを四元法で記述し、それをヘビサイドやギブズがベクトル解析法で分かりやすくしました。
 これが現在学生が習うマクスウエルの電磁方程式です。
 この方程式はニュートン力学とアインシュタインの相対論をつなぐ偉大な架け橋でした。
 ニュートンの方程式は相対論によって修正されますが、マクスウエルの方程式は相対論的に正しく、修正の必要はありません。
 アインシュタインは、マクスウエルの電磁方程式が正しいという前提のもとに、相対論(ローレンツ変換式)を導いたのですから、これは当然の事です。
 アインシュタインが偉大なのは、マクスウエルの方程式が座標によらず正しいことを、光速不変の原理として表して、高校生でも分かるような簡単な方法で相対論の式を導いた事です。アインシュタインの特殊相対論の論文には、ややこしい数式はまったく出てきません。
(マクスウエルの電磁方程式から電波の式が出てきますが、その波長を極端に短くしたのが光ですから、電磁方程式が座標によらず正しいという事は、光の速度が座標によらず一定という事なのです)
 文系の方にも分かるような記述法でこのあたりの事を伝記風に書いたのが、拙著『ニュートンとアインシュタイン』(早川文庫)です。もう絶版ですが、古書店にはあるかも・・・。

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◆◆◆ 4 フレミングの右手則 ◆◆◆

 次は「フレミングの右手則」です。
 これの理解は、前記のaやbによる方法もありますが、ここではcによって説明してみます。
 図をご覧ください。
 上下の線が電流が流れるようにされた電線です。
 左右にある○に×の記号は、磁場が画面の手前から奥に向かって存在しているという意味です。
 この外部からの磁場の中を、電線を右に向かって動かすと、どういう向きに電流が流れるか――というのが右手則です。
 図の場合は、ここに描かれているように、下から上に向かって流れるのが正解です。
 mと書かれた、電線の左右の記号は、右側が電線に流れる電流による磁場が手前から奥に向き、左側が奥から手前に向いているという意味です。○に・は、矢の先端がこちらを向いているという意味です。
 さて、この正しい向きに電流が流れますと、電線の左側ではMとmが引き合って磁場が薄くなり、右側ではMとmが足し合って濃くなりますから、左手則で説明したように、それによる力は右から左に向きます。
 つまり、電線を右に動かすと、流れる電流によって左に動こうとする力が発生し、動きを遮ろうとするのです。
 したがって電線を右に動かしますと、この力以上の力を加えて移動させねばなりません。「力をかけて移動する」と汗をかきますが、その汗が、力学的なエネルギーを加えているという事で、その力学的なエネルギーが電気に変換されて電流を流しているのです。
 つまり、動きを電気に換える発電機の原理です。

 逆に、上から下に電流が流れたとしますと、その電流による力は右を向きますから、最初にほんのわずか力を加えれば、あとは何もしなくとも電線は勝手に動き、力学的エネルギーを加えなくとも電気エネルギーが無限に出てくる――という事になります。
 これは前記のcに反しますから、SFには有りますが自然界には有り得ない事です。
 というわけで、「フレミングの右手則」が分からなくなったら、とにかくどちらに流れれば逆らう力が発生するかを図で見ればよいわけです。
 この方法も、場の歪みという感覚を持ち、エネルギーの保存則を知っていれば、間違えようがありません。

 エネルギーの保存則による現象の理解はじつに便利です。
 昔、講談社のブルーバックスで『銀河旅行とSF相対論』という一連のシリーズ本を書きました時、宇宙船の飛び方についてエネルギーの保存則で考えまして、その便利さを実感した事があります。
 いまは明治時代の無電機を調べていまして、またもその便利さに感激しております。
 一例をあげます。
 電気振動というのは、コイルとコンデンサーの間を場のエネルギーが往復する現象なのですが、電磁気学の簡単な操作によって、
 コイルによって溜まる場のエネルギーは、Lii/2であり、
 コンデンサーによって溜まる場のエネルギーは、Cvv/2になります。
 Lは、電線を沢山巻くほど増える量で、Cは面積を大きくするほど増える量です。
 この二つは、エネルギーの保存則によって等しいですから、
 Lii=Cvv となり、v=i√(L/C) となりまして、Cが小さいほど電圧vは大きくなります。
 ヘルツやマルコーニや木村駿吉が扱っていた電気回路では、Cはほとんどゼロに近かったので、何十万ボルトという大変な高電圧が、簡単な回路で出ていたのです。
 テスラコイルやテスラ電流も同じ事です。

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