カムチャッカ夏の旅(その7)
 
  2002年7月21日〜29日 

7月27日(土)

 今日は曇っていて、ホテルの窓を開けると寒い。いつもより遅めに11時過ぎにアンドレイに電話した。なかなか来ないので11時40分頃に妻が駐車場まで見に行くと来ていて、スヴェータが部屋まで迎えに来た。先ずアンドレイの家に行き家には上がらずにアレクセイと合流して出発した。今日はシャシリークをやろうということで、昨日の夜からアレクセイが肉をつけ込んで用意してくれていた。

 途中でガソリンを入れにスタンドに立ち寄った。ガソリンの種類はいくつかありДТというのはディーゼル車用の軽油で1リットル8ルーブルくらいで、Ай-72、Ай-92、Ай-95というのがガソリンで、Ай-72は10ルーブルくらいで安いが日本車にはこのガソリンは質が悪いので向いていない。これで走っていると車が悪くなるそうだ。日本車にはАй-92かАй-95を入れなければならないということで、値段はどちらも12ルーブルくらいだが、Ай-95の方が少しだけ高い。アンドレイはАй-95を入れていた。日本のディーゼル車にはロシアの軽油はあわない(品質が悪くて)ので車が早く傷むそうだ。
 
 行く途中にユーリヤの工場によって昨日頼んでおいたイクラの缶詰を10個もらってきた。缶もちゃんとイクラの缶だった。

 目的地の森に行く途中、飲める水が川になって流れている所があり、そこで水を飲んだ。美味しい水でアンドレイは水筒にくんでいた。私が冗談でこの水を日本に持って帰りたいと言ったら、1.5リットルのペットボトルに入れてくれた。冗談で言ったのだが、本当に持って帰らなければならなくなった。

 ここの水をはるばる日本まで持って帰ってきた

 ペトロパヴロフスク・カムチャツキーを出て1時間半くらい走り、道路も舗装していない道路になり、更に30分程ほこりを巻き上げて走り、温泉が湧いているところに着いた。山の中腹に白樺の木が2、3本立っていて、それが目印になっているという。まだあまり知られていないそうだ。ちょっと急な坂もあり、木の枝におおわれてトンネルみたいになった細い道を5分ほど登っていくと温泉が山の上から流れてきて、小さな池のようになっている所に着いた。さわってみると温かく丁度良い湯加減だ。でも深さがなく20-30センチなので服を脱いで入るわけにもいかず、足をつける程度だ。私たちはそこで写真を撮るだけにした。

 温かいお湯が流れていた

 そこから脇へいって少し下ったところにもう一つの温泉の湧いている所があったが、斜面が急だったのでアレクセイだけが下りていった。

 もう一つの温泉が湧いている所

その後、山を下りて車の所へ戻った。車を止め場所の近くに広い原っぱがあり、よその人たちがシャシリークをやっていたので、「ここにするか、川のそばにするか」と聞かれ、ここの先客のそばでやるよりは川のそばの方がいいと言ったがそれからが大変だった。

 道路を少し戻ると川があり、川に沿って道路があるので、その道を行くのだが、でこぼこが激しい上、車の通った後の轍の間に草が30-50センチも伸びている。そんな道を抜けて川べりに出ると、既に他の家族がやっていた。更に先へ進んだが川が道を横切っており、冬なら凍っていて渡れるかもしれないが、今はとても渡れる状態ではなかった。Uターンして大きな道路まで戻ったが、途中に地中に穴をあけてガスの圧力を調べているという施設があった(コンクリートの台の上にポンプのようなものが1台載っているだけのもので、周りは金網で囲われていた)。ここの圧力が増大すると火山の噴火が近い(2週間以内に噴火する)と言われているが、どこの国も同じようになかなか爆発を予知することはできないと言っていた。

 川のそばは水が冷たいので寒いんじゃないかということで、川から離れた方を探し、やっと3本の大きな白樺の木が生えていて周りが少し空き地になっている場所を見つけた。以前も誰かがここでシャシリークをやったらしく、火を使った跡があった。林の中にいるとすぐに蚊が寄ってくる。ここの蚊は大きめの蚊だった。早速全員虫除けスプレーを頭、顔(目をつぶって、鼻をつまんで)、手、服にもかける。大きな蚊だったがここの蚊は刺さないとアレクセイが言っていたが、確かに1回も刺されなかった。でも、食べている間、周りを飛ばれるとうっとうしくなる。昨日と同じバーベキューセットを組み立て、火をおこし、火が丁度いい加減になるまでの間、昨日アンドレイがスーパーで買ってきたкреветкаというエビのゆでたのを3袋(1.5キロ)とカレイの干物を肴に量り売りで買ってきたビールを3リットル飲んでいた。

 креветка

 ビールは缶入り、瓶入りのも売っているが、量り売りのビールが美味しいと言っていた。空のペットボトルを持って行き、それに入れてもらううのだ。今日買ってきたのは、普通のビールと、少し黒いビールの2種類で飲み比べてみたが、色の薄いビールの方が美味しかった。креветкаというエビは日本の車エビの半分くらいの大きさで、メスは卵を持っていた。アレクセイはいつも卵は食べないで捨てていると言っていたが、アンドレイや私が食べているのを見て、初めてたべてみて、美味しかったと言っていた。頭を取って胴体の皮をむいてしっぽを引っ張ると身だけになる。塩ゆでしてあるのでそのままで美味しい。カレイの干物はひれの部分を切り落として、あとは適当な大きさに切るだけ。脂がたっぷりのっていてやはりビールにはぴったりだ。鮭の薫製もあり、最高だった。

 すっかり食べ、飲み、満足したあとで、シャシリークを作り始める。昨日から豚肉の角切りをタマネギやいろんな野菜の入ったたれに漬け込んでおり、それを金串に刺し炭火で焼くのだ。

 金串に刺した豚肉の焼けるのを待つ

 先ほどあんなに食べて飲んだのにシャシリークが焼けてくる頃にはいい匂いにまた食欲が湧いてくる。曇り空で、雨が時折ポツポツとするがすぐに止む。雲が高いから大丈夫だとロシア人達は言う。焼きたてのシャシリークで今度はウォッカで乾杯。

 
 焼き上がったシャシリーク   シャシリークを手にウォッカで乾杯

 スヴェータはコニャックの方がいいと言って360ml入りのコニャックのポケット瓶を持ってきていた。私の妻は飲めないので最初のビールで何回も乾杯していた。こんなに飲んで帰りは大丈夫なのだろうかと心配していたら、私と妻を車の中で寝かせ、自分たちは広げた敷物の上で横になって昼寝をしていた。シャシリークをしたあと薪や拾った木の枝を燃やすと煙が出て蚊が嘘のようにいなくなった。私は1時間ほどウトウトして外に出ていくとロシア人達も起き出し、コーヒーを飲んだ。妻がまだ寝ていたので車のエンジンをかけて暖房を入れてくれた。私たちはたき火を囲んでいろんなことをしゃべっていたが、酔っていたので余りよく覚えていない。コニャックを飲むのに、砂糖をかけたレモンを一緒に食べると美味しいという話は覚えている。6時に出発し、途中でコニャックとレモンを買って川のそばまで行き、川原でレモンスライスに砂糖をかけて、コニャックを飲んだ。

 川原でコニャックを飲む

 コニャックをウォッカのようにぐいっと一息で飲み干した後にそのレモンを食べると、口の中がレモンの酸っぱさで一杯になり、コニャックが飛んでいくような気がする。3人で360ml瓶を空けた。アンドレイは運転していたので飲まなかった。

 帰る途中にイクラの缶詰を作ってくれたユーリヤの魚工場に寄った。ユーリヤがちょっとコーヒーでも飲んでいかないかと誘ってくれたので、行くことになった。彼の妻はタタール人で髪は黒いのだが、金髪に染めているという。14歳の男の子と1歳半の女の子がいた。

 
    14歳のアレクセイ              ユーリヤとカーチャ

 
イクラがいっぱいのったオープンサンド    ユーリヤの妻とカーチャ

 14歳のアレクセイは日本に関心があり、一番行ってみたい国は日本だそうだ。好きな科目は物理、数学、科学だと言っていた。1歳半のカーチャは人見知りがひどく、知らない人に話しかけられるとべそをかいていた。シャンパンで乾杯し、白パンにバターを塗り、イクラがたっぷり載ったオープンサンドを出してくれた。どんぶりのような茶碗にイクラを入れたのを持ってきてスプーンで食べろと言う。さらにボイルしたカニの身だけを取り出したものを山のように出してくれた。私たちの食欲はとどまることを知らなかった。山のようなイクラとカニににすっかり満足し、「もし必要になったら」と持ってきた当てのないお土産の中から、ユーリヤとアレクセイにドクターグリップのボールペンを、奥さんにはハンカチをあげた。反対に向こうからはЛЮБЕ(リューベ)のCDをもらった。その後、何かの実で作った自家製のワインを飲ませてもらい、最後に紅茶とケーキを食べた。ちょっとコーヒーのつもりが、すっかり長居をしてしまい、ホテルに戻ったのは12時を少し回っていた。
 

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