愛知県職員措置請求書
                                2001年7月24日
 愛知県監査委員 殿
                請求者 名古屋市千種区若水2丁目3-17
                    サンマンション千種公園A-208
                                      田 口 龍 司   地方公務員

 地方自治法第242条の規定に基づき、下記のとおり住民監査請求をします。
                    記
1 請求すべき事柄
 次の出張にかかる旅費の返還を各学校長及び出張した職員に対して請求するものである。
 (1)愛知県立豊田西高等学校長が教諭那須恵理子始め13名の職員に対し、平成1
  3年2月24日及び25日に大学受験の生徒激励及び大学視察を目的として命じた
  出張。(一号証)
 (2)愛知県立一宮高等学校長が教諭小川裕之に対して平成13年2月25日に大学
  2次試験受験指導を目的として命じた出張及び、教諭白石藤博に対して進路指導用
  務を目的として命じた出張。(二号証)
 (3)愛知県立西春高等学校長が教諭酒井順一に平成13年3月7日から8日まで大
  学施設見学及び情報通信の学習を目的として命じた出張、教諭浅野康平に同年3月
  16日から17日まで佐賀大学及び地域に関する調査研究を目的とした出張及び上
  島昌之始め6名に2月20日、3月8日及び3月9日に生徒の進路指導を目的とし
  て命じた出張。(三号証)

2 請求する理由
 豊田西高校の職員を進路指導のためと称して京都大学、山梨県立大学、山梨医科大学、
岐阜大学、名古屋大学、愛知県立大学、静岡大学浜松キャンパス、名古屋工業大学、愛
知教育大学へ出張させているが、特定の大学の受験にわざわざ出張させるのは生徒を差
別し、受験競争を過熱化させているだけである。
 一宮高校の職員が京都大学を受験する生徒のみに対して、現地へ赴いて激励する行為
は生徒に対する差別的な取り扱いである。また名古屋大学の後期日程試験の合否確認に、
わざわざ出張命令しているのは、個人情報保護条例違反になり、校長の裁量権の逸脱で
ある。
 西春高校の職員が東京、千葉及び佐賀まで大学の施設見学に出張しているのは、年度
末の旅費予算の消化を目的としたものであり、わざわざ出張しなくて情報を得ることは
できる。しかも、佐賀大学への見学依頼を怠り、目的である就職状況や入試状況を直接
大学学生部から聞くことができなかった。また、南山大学、愛知県立大学、愛知教育大
学の合否確認にわざわざ出張命令しているのは個人情報保護条例違反にあたり、校長の
裁量権の逸脱である。
 以上の理由により、上記出張は不必要なものであり、不当な出張に当たる。


                             2001年8月10日

監 査 追 加 理 由 書
                                      田 口 龍 司
1、愛知県立豊田西高等学校分
 平成13年2月24日(土)及び25日(日)に豊田西高等学校長は教諭那須恵理子始め13名の職員に前期日程の一部の大学入試試験会場(京都大学始め9大学)へ受験生徒の激励のために出張させている。本来、大学入試に教員が試験会場まで出かけ、生徒を激励するという行為自体がとうてい公務ととは言い難く、全くの私事である。個人的に特定の生徒の大学受験に不安があるので、心配して受験会場まで出かけて生徒を激励したという行為も公務とは言えず、私的な行為である。18歳にもなった生徒の大学受験に教員がついていき、激励しなければならないという合理的根拠は見あたらない。このような出張が公務と認められるというのであれば、その根拠を明らかにされたい。公務との関連性について言えば、生徒の大学受験に関しては、適切なアドバイスや、必要書類の作成、受験に際しての注意などがあると思われるが、これらはいずれも校内で十分できるものであり、現地まで出張していかなければできない用務とはいったい何があるのか。そのような用務がないにも関わらず、県民の税金でまかなわれている予算をいたずらに執行し、出張を命ずることは校長の裁量権の乱用である。また、本件出張が合理的根拠のない出張であることの証として、特定の大学を受験する生徒の激励にのみ出張させていることが上げられる。昨年度の豊田西高等学校3年生は大学別出願者数一覧(四号証)に見られるように、多くの大学を受験しているが、大学受験会場での激励行為が公務であるとするならば、全ての大学の受験会場へ出張させ、等しく生徒たちを激励しなければならない筈である。しかしながら、特定の大学にのみ出張させているのは公務性がないことの証であり、裁量権を逸脱した気ままな出張命令である。

2、愛知県立一宮高等学校分
 平成13年2月25日(日)、一宮高等学校長は教諭小川裕之に対して京都大学を受験する生徒の受験指導のために京都大学への出張を命じている。本件出張に関しても豊田西高校の大学受験指導の問題点で指摘したことと同様の問題点がある。昨年度の一宮高校3年生の大学別出願者数一覧(五号証)によれば、多くの大学を受験しているにもかかわらず、どうして京都大学の受験生だけを現地で指導しなければならないのかその理由を明らかにされたい。さらに本件出張についての出張計画書の用務欄には「京都大学2次試験受験指導」としか記載がなく、具体的に現地でどのような用務をしようという出張なのかが明確でない。しかもこのような出張計画書に校長は決済印を押印し、出張を命じている。復命書の復命記事についても「京都大学2次試験受験指導」としか記載がなく、本当に現地に赴いて指導をしてきたのかどうか疑問である。よって、本件出張は校長の裁量権を逸脱した、理由のない気ままな出張命令である。
 また、3月22日(木)の名古屋大学への後期合格発表合否追跡のための出張については、まず第一に生徒の合否確認に行くということ自体が、愛知県個人情報保護条例第7条第3項「実施機関は、個人情報を収集するときは、本人から収集しなければならない。」
に違反している。生徒に受験番号を報告させ、勝手にその合否を確認に行く、このような条例違反の出張命令は校長の裁量権の逸脱である。
 仮に、本件出張が愛知県個人情報保護条例に違反しないとしても、どうして名古屋大学の後期日程の合格発表だけを出張で見に行かなければならないのか、合理的な根拠がない。多くの学校では、生徒個人個人から大学入試の合否の結果を集めており、それに基づいて進路指導をし、翌年度以降の進路指導にも利用している。何も高校が大学の合格発表の日に現地まで赴いて合否の確認をしなければならない理由はない。地元有名大学に誰が合格したかということを早く知りたいというだけの興味本位で命じられた本件出張については条例違反がないとしても裁量権の乱用である。本件出張に合理的な理由があるとするならば学校長はそれを明らかにされたい。なぜ、名古屋大学の後期の合格発表だけは出張してまで見に行かなければならなかったのか、その結果は他の方法では(つまり生徒本人から)入手できなかったのか、そこまでして入手した結果をどのように活用したのかを明らかにされたい。

3、愛知県立西春高等学校分
 (1)平成13年3月7日(水)、3月8日(木)の二日間、西春高等学校長は教諭酒井順一に東京工科大学、東京理科大学へ大学施設見学、情報通信工学の学習及び学生生活の調査を目的とする出張を命じている。本件出張は年度末の旅費予算消化を目的とした出張であり、不必要な出張である。教員がわざわざ出かけて、大学の施設を見学することの意味はなく、生徒が進学を希望する大学を見学に行くということとは意味が違う。学校長は教員に大学施設の見学に行くことを百聞は一見に如かずと言うことで昨年度も秋田まで出張させているが、教員が見てきて、生徒に伝えても、生徒にとっては百聞の一つにしかすぎない。大学の施設見学というのは生徒が行ってこそ意味があるものである。また、最近ではいろんな大学の情報は様々な形で容易に入手することができるようになっており、わざわざ出張する必要はない。よって本件出張は校長の裁量権の乱用であり、不当な出張である。
 また、3月16日(金)、17日(土)に教諭浅野康平に佐賀大学及び佐賀県立博物館へ佐賀大学及び地域に関する調査研究を目的として出張を命じているが、本件出張については、いくつかの重大な問題がある。第一に、英語科の教員がどうして佐賀県立博物館へ見学に行かなければならないのか。職務との関連性が見られず、単なる物見遊山であるとしか言いようがない。第二に、佐賀大学への出張に当たり、事前に相手側に訪問の依頼をしておらず、その結果学生部は施錠されていて、直接入試状況や就職状況を聞くことができず、開いていた図書館と学生会館を見学してきている。県外の大学を訪問するときには、事前に相手の都合を聞き、それに合わせて出張の計画を立てるというのが一般的なやり方である。しかも、依頼文書を学校長名で出さなければならないことになっているがこの手続きを怠っており、学校長は依頼文書の決裁が提出されないことを看過している。以上見てきたように、本件県外出張には正当な理由がなく、校長の裁量権の乱用であり、また重大な瑕疵があるので本件出張にかかる旅費の返還を求めるものである。
 (2)西春高等学校長は、南山大学(2月20日)、愛知県立大学(3月8日)、愛知教育大学(3月9日)の入学試験合格発表日に教諭上島昌之始め6名(延べ人数)を出張させている。その用務の内容は、生徒の進路指導のための情報収集及び生徒指導となっており、合否情報の収集を行っている。個人情報の違法な収集については一宮高校の場合と同じであり、本人の同意なしに、本人以外から個人情報を収集することは個人情報保護条例違反であり、校長の裁量権を逸脱した不当な出張命令である。また、仮に個人情報保護条例に違反していなかったとしても、これら3校についてだけ合否情報を収集し、現地で生徒に適切な進路指導を行ったことには、問題点が二つある。まず、これら3校の合否情報だけは出張してまで収集しなければならなかったという必然性がない。昨年度の西春高校3年生の大学別出願者数一覧(六号証)によれば、生徒は名古屋大学始め163校を受験している。第二に、これら3校を受験した生徒についてだけ合否発表があった現場で受験指導をしなければならない合理的な理由がないし、復命書によってどのような受験指導がなされたのか全く記載されておらず、とうてい現地で受験指導が行われたとは思われない。つまり本件出張は個人情報保護条例に違反していなかったとしても、校長の裁量権の乱用であり、その出張には理由がない。


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