NEW BOOKS / 2000

□ Gary Stewart / RUMBA ON THE RIVER
    : A History of the Popular Music of the Two Congos
   (Verso/New Left Books, London/New York, 2000) 
       ISBN : 1-85984-744-7 / Hard cover ($35)
「BREAKOUT」というアフリカン・ポップスの概説書を、1992年に出したゲイリー・スチュアートの新著が登場。その「BREAKOUT」は、冒頭からカンダ・ボンゴマンの紹介だったりして今ひとつの内容だったが、今回はとんでもない本を書き上げた。20世紀初頭に始まるふたつのコンゴの音楽の歴史について、何と438ページにわたってびっしり書かれている。コンゴ(旧ザイール)はアフリカ随一の音楽大国であるだけにその全体像が把握しにくく、その点からもとても有益な一冊だ。写真などが控えめで読み通すにはやや根気がいること、それにペーパーバックが出るまでは若干高めの価格が難点か。『アンボス・ムンドス』第6号でも紹介予定。(4/10)
□ Michael E. Veal
    / FELA : THE LIFE AND TIMES OF AN AFRICAN MUSICAL ICON
   (Temple University Press, Philadelphia, 2000) 
       ISBN : 1-56639-764-2 / Cloth cover ($84.50)
       ISBN : 1-56639-765-0 / Paper back ($24.95)

フェラ・クティの伝記としては、これまでに『Fela : This Bitch of a Life』と『Fela : Why Blackman Carry Shit』の2冊が出ているが、イェール大学の助教授であり自らもサックス・プレイヤーであるヴィールの著したこの本は、フェラの研究書としては決定版ともいえる内容だ。フェラとの共演体験があるほどにもかかわらず、情緒的な表現に陥ることなく、多くの文献を引用しつつ冷静にフェラという音楽家、活動家について論じている点はいかにも学者らしい。本文260ページのうち丁度100ページを費やして1974年までについて書いているが、個人的にはここまでの部分を特に興味深く読むことが出来た。ここまで読むと、アフロ・ビートが様々な条件が重なって生み出された様子が納得でき、逆に1975年以降の部分は音楽的な分析が控えめな印象を受ける。これは著者自身も1974年頃までにアフロ・ビートが音楽的完成に達したと考えていることの現れと思う。ただし、一般には実際に音を聞くことの出来ない録音に基づいた分析が多く、60年代〜70年代初頭のレア音源の復刻を改めて期待したくもなった。後半は、様々な形をとった国家権力との対立(逮捕劇、軍隊によるカラクタの襲撃、など)、そしてそれを反映した詩について詳述されているが、このあたりはよく知られた話が多くなる。

読み通してみて、フェラに対するアンビバレントな感情は変化しなかった。彼の音楽には強烈に惹きつけられるものの、彼の言動には納得しきれない部分が多すぎる。そのようなことも含めて、この本については書きたいことが多いのだが、とりあえず今は彼の録音を順に聞き返しながら、再読するつもり。その結果は、改めて、このサイトかどこかで書いてみたいと思う。(08/08)

日本には未入荷のようだが、アマゾンでは20%引きで購入できる。(10/15)

□ THE GARLAND ENCYCLOPEDIA OF WORLD MUSIC VOLUME 1
    : AFRICA
     Edited by Ruth M. Stone
   (Garland Publishing, New York & London, 1998) 
       ISBN : 0-8240-6035-0 / Hard cover ($195)
現在刊行が進められている百科事典「The Garland Encyclopedia of World Music」(全10巻)の第一巻。民族音楽からポピュラー音楽まで網羅しており、850ページを越える大著で、実に立派な研究書だ。しかし、その価格といい重さといい、購入することを躊躇させるに十分なものでもある。学術論文的傾向の感じられる部分もあるが、「The Guitar in Africa」、「Kru Mariners and Migrants of the West African Coast」、「Latin American Musical Influences in Zaire」、「Yoruba Popular Music」、それにヒュー・トレイシーの研究を紹介する「The Scholarly Study of African Music」あたりは、アフリカのポピュラー音楽の形成過程に関心のある方にとって、興味深いテーマだろうと思う。(10/15)
□ THE GARLAND HANDBOOK OF AFRICAN MUSIC
     Edited by Ruth M. Stone
   (Garland Publishing, New York & London, 2000) 
       ISBN : 0-8153-3473-7 ($39.95)
こちらは上の「The Garland Encyclopedia of World Music Volume 1 : Africa」の要約版で、完全版の全39項のうち、19項(+1項)を収録している。「The Guitar...」、「Kru Mariners...」、「Latin American...」、「Yoruba Popular Music」が収められており、完全版に付属のCDもついて、価格が5分の一なので、こちらがお勧めだ。表紙からはセンスのかけらも感じられないが、代表ミュージシャンの紹介を中心にした安易な作りということはない。(10/15 改)
□ Eric Charry / MANDE MUSIC
    : TRADITIONAL AND MODERN MUSIC OF THE MANINKA
      AND MANDINKA OF WESTERN AFRICA
   (The University of Chicago Press, Chicago & London, 2000) 
       ISBN : 0-226-10161-4 / Cloth cover
       ISBN : 0-226-10162-2 / Paper back ($27.00)
ギネア、マリ、セネガル、ガンビアなどに広がって暮らすマンデの人々の音楽に関する研究書。中でもギネアとマリに力点を置き、その伝統音楽とポピュラー音楽について詳述している。「ハンターの音楽」「ジェリ(グリオ)の音楽」「ドラム」「ギターとモダン・ミュージック」の4つのテーマがこの本の骨格をなしているが、この中で最後のテーマが興味深いだろう。ギネアとマリのビッグ・ネーム達について、その歴史とメンバーの動向を洗い出すとともに、ギター演奏の解析を行っている。巻末のデータも圧巻で、ホントよくこれだけ調べたものだと感心。500ページ(本文は350ページほど)もある大著だが、かなり平易な英語で書かれているので、これらの音楽に関心がある人にとっては、読み通すにはさほど苦労しないかも知れない。(10/30)
□ Thomas A. Hale / GRIOTS AND GRIOTTES
   (Indiana University Press, Bloomington and Indianapolis, 1998) 
       ISBN : 0-253-33458-6 / Paper back ($28.00)
タイトル通り西アフリカのグリオに関する研究書。「A Job Description for Griots」「The Origin of Griots」「The Verbal Art of Griots」「Music across the Griot World」「The Making of a Griot」「Would You Want Your Daughter to Marry One?」「Griottes: Unrecognizes Female Voices」「From the Courtyards of the Nobility to a Global Audience」「The Value of Words」「New Millennium Griots」の10章からなる、410ページ。ボリュームたっぷりのため未読。(12/29)
□ Banning Eyre / IN GRIOT TIME
    : An American Guitarist in Mali
   (Temple University Press, Philadelphia, 2000) 
       ISBN : 1-56639-758-8 / Cloth cover
       ISBN : 1-56639-759-6 / Paper back ($19.40)

アメリカ人ギター奏者(白人)がマリに渡り、バマコのジェリマデ・トゥンカラに師事した体験を中心に書いているようだ(未読なので、詳しい紹介は後日)。

なお、同タイトルのCDも出ているが、そちらはロビ・トラオレの未発表ライブなどが含まれた興味深い内容で、最近のマリ音楽のコンピレーションとしても、お勧め!!(STERN'S STCD 1089)(08/08)

途中まで読んだのだが、あまりにも個人的感想が多く、個人的には役に立ちそうもないようなので、現在読み進めるのを止めているところ。(10/1)

□ Gerhard Kubik / AFRICA AND THE BLUES
   (University Press of Missippi, Jackson, 1999) 
       ISBN : 1-57806-146-6 ($18.00)
表紙と表題に惹かれて買ったものの、こちらも未読なので、読み終えてから改めて紹介したい。タイトル通り、アメリカのブルーズとアフリカの民族音楽との連関について書かれているようだ。マウス・ボウ、親指ピアノ、パン・パイプ、ペニー・ホイッスル、などが取り上げられている。(08/08)
□ THE ROUGH GUIDE : WORLD MUSIC VOLUME 1
    Africa, Europe and the Middle East
   (The Rough Guides, London,1999) 
       ISBN : 1-85828-635-2 ($26.95/USA)
旅行ガイドブックが専門のイギリスの出版社による音楽シリーズの一冊で、ワールド・ミュージックは5年振りの第2版。今回は2分冊で、その第一巻がアフリカ、ヨーロッパ、中東、第二巻がラテンやアジアなど(今夏刊行予定)。今日買ってきてパラパラとめくってみたところ、二色刷りになったこととディスク紹介が拡充されたことに目がいく。ただし、西アフリカについてはLPやカセットも取り上げているところが苦しい。アフリカは各国ごとの概略と歴史の紹介なのだが、それらと同列に「ピグミー」と「ヒュー・トレイシー」という2項目を取り上げている点は、このサイトと共通していて驚いた。760ページ以上というボリュームなのでしばらく楽しめそう。(4/10)

□ AMBOS MUNDOS
  (インパクト出版会、 東京、1999〜)  ¥1200〜1300(+税)

昨年発刊した季刊音楽誌。これまでは、キューバ、ブラジル、ペルー、それにアルゼンチン・タンゴなどラテン中心の内容だったが、今年からはアフリカ音楽についても力を入れていくらしい。という訳で第6号(8月発売)では、アフリカ音楽特集が決定している。(4/10) 

その第6号は10月20日に発売された。アフリカに関しては新譜紹介が少なかったので、執筆者のひとりとして、今後このあたりを改善したいと考える。(10/30)

□ 『ストリートの歌〜現代アフリカの若者文化〜』鈴木裕之
  (世界思想社、京都、2000)  ¥1900(+税)

日本人の書いたアフリカ音楽書が久しぶりに登場。西アフリカ、コート・ジヴォアール最大の都市アビジャンにおけるラップ、ヒップ・ホップを中心とするストリート文化の紹介。現地で実際に暮らし、多くの若者たちと行動を供にし、そして音楽が生まれる現場を見つめてきた著者による貴重なドキュメントとなっている。

鈴木氏は、アフリカ音楽に関する必読書『アフリカン・ロッカーズ』(エレン・リー著)、『フェラ・クティ:戦うアフロ・ビートの伝説』(マビヌオリ・カヨデ・イドウ著)の訳者としても知られる。(5/31)


これまでの紹介で漏れていたグリオの研究書を1冊追加。これも含めて未読のものが多いが、内容についてはまた改めて紹介する機会があるかも知れない。それにしても今年はアフリカ音楽関連の書籍に関しては当たり年だったと思う。(12/29)


(2000/04/10 Ver.1.1)
(2000/12/29 Ver.1.7)


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