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FEMI KUTI LIVE IN DAKAR, 1999 (Copyright : HIDAKA DJIN)

これからアフリカのポピュラー音楽を聴いてみようと思っている人たちのためのガイドとして、20枚ほどアルバムを選んでみました。しかし、あくまでも今の個人的気分で選んだものであり、絶対的ベスト10だとかベスト20だとかいった選定は不可能です。またここに並べた全てが傑作と言い切れる訳でもありません。

しかし、最初にあげた5枚は文句なしのアルバムばかり。初心者向けの推薦盤という以前に、私にとってのアフリカ音楽ベスト5と断言しても構わないくらいのリストになっています。この中のどれか1枚を試聴するなり買ってみるなりして、アフリカ音楽の扉を開き、その広い世界を楽しんでいただけたら幸いです。

ジャケット下の星の数はあくまでもこのページ内での相対評価といったものです。特別大きな意味はありませんが、コメントだけではどのアルバムを聴いてみようか判断がつかないことでしょうから、アフリカ音楽に関する知識をこれから増していこうとお考えの方は、☆の数が多いアルバムから試してみてはいかがでしょう?

選んだ対象はサハラ以南のブラック・アフリカ域の音楽で、北アフリカ域の音楽は選定外にしました。また極力日本盤CDが出ているもの(店頭やインターネットで容易に購入できるもの)を選びました。そのため、ガーナのハイライフや東アフリカ音楽が漏れるなど、地域的/ジャンル的なバランスが悪い結果になっています。

このページは時々見直しして、盤を入れ替えたり、枚数を増減したりするようにしたいと考えています。よろしくおつき合い下さい。


MOST IMPORTANT 5 ALBUMS
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☆☆☆☆☆

< SET / YOUSSOU N'DOUR >

西アフリカのセネガルが生んだ世界的スーパースター、ユッスー・ンドゥール(1961年生まれ)の最高傑作(89年作)。セネガルの伝統的リズムであるンバラをベースに、ロック的要素をはじめとする当時最先端のサウンドを絶妙に統合した、ダイナミックで独特なグルーヴ感溢れるンバラ・ポップが圧巻。そしてユッスー・ンドゥールの強靱でしなやかなヴォーカルは、あらゆる聴き手を驚愕させる素晴らさで、ユッスーが現代最高のシンガー/サウンド・クリエイターであることが十二分に伝わってくる。このアルバムはサリフ・ケイタの『ソロ(SORO)』と並ぶ80年代アフロ・ポップの金字塔であることは勿論、20世紀のあらゆる音楽を代表する一枚とさえ言える。

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☆☆☆☆☆

< SYNCHRO SYSTEM / KING SUNNY ADE >

ナイジェリアのジュジュ・ミュージックの王様、サニー・アデが英アイランドに残した彼の最高傑作。幾多ものギターや太鼓類、鳴り物系パーカッションの細やかなビート、そしてカラフルなヴォイス群が彩なすサウンドは、ヨルバ人の伝統リズムを昇華したもので、エレクトロニクスとの理想的な融合を図ることで、見事に現代化が達成されている。艶やかなスライド・ギターや、力強いトーキング・ドラムも素晴らしい。じわじわ盛り上がるその妖艶なグルーヴは、クールで熱く、リラックスとトランスを誘う心地よさ。まさに最高の良性ドラッグだ。超多作なサニー・アデが最もグローバルな姿勢を示し、世界に衝撃を与えた絶頂期のアルバムであり、アフリカ音楽史上の最強力盤。84年作。

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☆☆☆☆☆

< ROFOROFO FIGHT / FELA KUTI >

ナイジェリアのアフロビートの創始者、フェラ・クティ(1938-97年)の71年作。彼のサウンドは、20世紀中盤にナイジェリアやガーナを席巻したハイライフという音楽に、ジャズやソウルの要素をミックスして生み出したもの。フェラというとその政治的なメッセージ性も不可欠なポイントだが、まずは超強力なダンサブルでグルーヴィーなサウンドこそ堪能すべき。その意味では、70年代に録音した一連の膨大な作品はほぼ全てが必聴作と言えるが、中でもタイトル・トラックがクラブでも必殺チューンとなっている本作がフェラ初体験としては最適。イントロから延々続くリフのカッコ良さにまず秒殺され、あとは通低音を生み出す重いビート、ブリブリぶつかり合うホーンズ、クールなエレピ、バンド全体を煽るかのようなドラミング、これらが一体となって激しくうねる音塊にただ身を任せれるばかり。

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☆☆☆☆☆

< LE GRAND MAITRE / FRANCO >

コンゴ(旧ザイール)のフランコの晩年のアルバムから選曲した編集盤。コンゴのポピュラー音楽は、ルンバと呼ばれることからも分か通り、20年代あたりから流入したキューバ音楽から大きく影響を受けており、50年代以降そのようなルンバを完成させた立て役者のひとりがこのフランコである。影響度や歴史的ポジションの重さ、作品数や育てたミュージシャンの多さから考えると、アフリカ音楽界のデューク・エリントン的存在で、最初期以降全キャリアを通じて代表作も数多いが、大編成なバンドを率いてダイナミックなサウンドを展開したこの時期の録音群も圧巻。グイグイ盛り立てる強烈なリズム、鈴が鳴るようと形容される美しいギター、豪快なホーン・アンサンブル、逞しいノドを聴かせる男性リード群、艶やかな女性コーラス、これら全てが素晴らしい完璧なアルバムだ。

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☆☆☆☆☆

< THE HISTORY OF TOWNSHIP MUSIC / V.A. >

アフリカが誇る音楽大国のひとつ、南アフリカ共和国の黒人音楽を俯瞰した素晴らしい編集盤。南アは多彩な伝統音楽、あるいは米国のジャズやジャイブを吸収・発展させ、多様なポピュラー音楽を生み出してきた。このアルバムには、マラービクウェーラジャイヴンバクァンガ、等々、そのようなスタイルの傑作曲が詰まっている。陽気で弾むようなビート感、インストゥルメント群による絶妙なインタープレイ、どこまでも美しいコーラス・ワーク、などなどいずれもが20世紀のアフリカが遺した偉大な音楽遺産だ。

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AND MORE...
☆☆☆☆

< NOTHING'S IN VAIN / YOUSSOU N'DOUR >

ユッスー・ンドゥールの最新作(02年作)。いつものスーパー・エトワールの面々の卓越した演奏に加え、伝統楽器によるアンサンブルや様々なゲスト参加と相まって、カラフルなもうひとつに仕上がっている。従来通りンバラのノリの良さを楽しめる一方、話題となったアコースティック・サウンドでは、近年多い同趣向のアフリカ音楽とはスケールの違いを見せつける。

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☆☆☆☆

< SPECIALIST IN ALL STYLES / ORCHESTRA BAOBAB >

70年代を中心にセネガルで大活躍したオーケストラ・バオバブの再結成アルバム(02年作)。キューバ音楽と、西アフリカ諸地域の音楽をミックスして生み出したオリジナリティー溢れる、バオバブ・サウンドが素晴らしい。

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☆☆☆

< BOOMERANG / DAARA J >

アフリカ全域でヒップホップ/ラップ世代の興隆が著しいが、その中でも抜きん出ているのが、セネガルの3人組ダーラ・ジイ。これは彼らの最新作(02年)で、どのトラックからも今の彼らの絶好調さが伝わってくる。スパニッシュ風トラックに挑んだ曲の仕上がりも最高。

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☆☆☆

< DA HOP / V.A. >

セネガルでのヒップホップ/ラップの盛り上がり振りを示すもう一枚がこの編集盤。有名グループの最近の代表曲を集めているので、セネガルの状況を知るには手頃なアルバムである。

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☆☆☆☆

< FIGHT TO WIN / FEMI KUTI >

ナイジェリアのフェミ・クティの第5作目(02年作)。基本はアフロビートに置きながらも、欧米の新世代のサウンドクリエイター達と生み出した斬新なサウンドからは、フェラ・クティの息子という呪縛をとうにかなぐり捨てた印象を受ける。今一番カッコ良いアフリカ音楽のひとつ。

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☆☆☆☆

< HOME COOKING / TONY ALLEN >

60〜70年代にフェラ・クティのバンドのドラム奏者を務め、フェラとともにアフロビートを完成させたトニー・アレンの最新作(02年作)。現在はフランスに拠点を移していて、現代ソウルなどのフィールドで活躍する最先鋭のミュージシャンらとの多様なコラボレーションなど、グローバルな方向性を探りつつ音楽制作に取り組んでいる点は、フェミ・クティとも共通している。新たなアフロ・ポップを提示する一方、彼のスネア一発の魅力も全く不変。今乗りに乗っているトニーの完成させたこのクールなサウンドはもっと評価すべき。

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☆☆☆☆

< GHANA SOUNDZ >

70年代にはアフリカにもファンクやソウルの波が押し寄せたが、そのような影響下西アフリカのガーナで録音されたファンク系音楽の編集盤。ほとんど無名なバンドの曲ばかりだが、知られざる傑作曲・佳曲が並んでいる。

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☆☆☆

< PALM WINE A GO GO / ABDUL TEE-JAY >

西アフリカで最初のポピュラー音楽が誕生したのは、19世紀末から20世紀初頭にかけてのこと。そのうちシエラ・レオーネで親しまれたものにパームワイン(やし酒)・ミュージックというものがあるが、これは在英ミュージシャン、アブドゥル・ティージェイが、そのパームワイン・ミュージックを今に受け継いだ作品。ゆったり爪弾かれるギターや木訥としたパーカションがほんわかした良い雰囲気を醸し出しており、どこまでも和んだ気分にさせてくれるアルバムだ(03年作)。

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☆☆☆

< FOLON / SALIF KEITA >

西アフリカ、マリ共和国のベテラン・シンガー、サリフ・ケイタの代表作。『ソロ』の頃はまだ余りに強靱すぎる声と大胆なエレクトロニクス指向が目立っていて、今聴くと時代遅れの感も否めないが、このアルバムの頃には感傷的な歌い口にも深みが感じられ、個人的にはこの『フォロン』こそ彼の最高作とみなしている。最新作『MOFFOU』(02年作)も推薦盤。

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☆☆☆☆

< WANITA / ROKIA TORAORE >

マリから登場した若き歌姫ロキア・トラオレの第2作目。マリやギニアなど西アフリカは、グリオと呼ばれる伝統歌手の絶叫調な歌が有名だが、ロキアはそうしたものとは対照的な繊細で可憐な表現に魅力がある。

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☆☆☆

< SINIKAN / SEKOUBA BAMBINO >

元ベンベヤ・ジャズ(60年に結成されたギニアのトップ・バンド)のセクーバ・バンビーノの最新作。華美なシンセの音、バンビーノの見事なボーカル等々、極めて親しみやすいポップ・アルバムにまとまっている。

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☆☆☆

< RUMBA CONGO / KEKELE >

コンゴの大ベテラン・ミュージシャンが集結して生まれたユニットであるケケレの1作目。洗練・芳醇な歌と演奏を楽しめる、清々しいアルバム。(01年作)

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☆☆☆

< REBEL WITH A CAUSE / KABELO >

南アフリカも現在はヒップホップ時代に突入しており、その中からクワイトという南ア流の強烈なダンス・ミュージックが生まれ、英国にまでブームが飛び火している。なので、若手世代の代表は数多いが、日本盤まで出たブレンダやマキフィゾロ、アーサーなどとともに、世界水準のポップを造り続けているのが、このカベーロだと思う。素直に踊れるポップ・アルバム。

(※ これだけは国内リリース/配給なし)

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☆☆☆☆

< KANYOK AND LUBA / V.A. >

南コンゴの伝統音楽などをまとめたヒュー・トレイシー・シリーズの傑作アルバム。

(コメント後日)

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☆☆☆☆

< ORIGINS OF GUITAR MUSIC / V.A. >

ヒュー・トレイシーが遺したギター・ミュージックのコンピレーション。

(コメント後日)

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アフリカ音楽に何を期待するかは人それぞれでしょうが、一般的にイメージされやすい太鼓や親指ピアノを主体とするタイプの(民族音楽的な)ものは、アフリカ音楽全体の中ではかなり限られたものであることをまず知って欲しいと思います。現在「アフリカ音楽」と呼ばれている音楽、そして私が愛するアフリカ音楽は、プリミティヴなものに留まっているのでは決してなく、逆に伝統音楽をベースのひとつにしながらも、ジャズやソウルやフレンチポップやヒップホップなど多様な要素を融合して完成させた、世界最先端のポピュラー音楽のひとつなのです。

こうして選んでみると、私個人の趣味・嗜好も強く反映されていると思います。私が好きな音楽は、アフリカ音楽に限らず、とにかくまずカッコいい音楽、そして聴いていると快感をもたらし、自然と体が揺れ動いてしまうような音楽です。じっくり歌詞に耳を傾けることで理解の深まるタイプの音楽も多く、そうしたモノの方が好みという方もいるでしょうが、ダイナミックでダンサブルなサウンドのもたらす「グルーヴ」にこそアフリカ音楽の素晴らしさがあると感じ続けているので、まずそうしたサウンドを体感して欲しいと考えて、最初の5枚を選びました。

(2003/09/23)


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