「手をとりあって」 Let Us Cling Together 《第4章 手をとりあって》 |
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フィダック城陥落に関する知らせは瞬く間に広がり、多くのバクラム人を驚愕させた。 敵軍の指導者がわずか16歳の若者であったことや、司祭ブランタが信用するに足りない男であったこと、 無敵のはずの暗黒騎士団が敗退したこともそうだが、何よりもドルガルア王の娘が生きていたことにある。 人々は長く続く戦乱の世に疲れ果てており、民を導く正統の統治者を渇望していた。 カチュアの出現は救世主の再来に他ならなかった。 ランスロット・タルタロスはローディスの代表として、カチュアをヴァレリアの正式な王位継承者と認め、 後継者争いに端を発した内戦の終結を宣言した。 ランスロットはこうした行為によって、これまでの争いを民族やイデオロギーなどの対立ではなく 権力を欲したエゴイスト達の反逆と位置づけ、世界的な立場から内戦自体を否定したのである。 しかし、こうした主張を受け入れ、支持したのは、一部の特権階級と財をなした富裕層のみで、各地に 広がっている反バクラム主義を封じ込めるだけの力はなかった。 ヴァレリア戦乱は、もはや民族紛争などではなく、支配する側とされる側の対立、言い換えるなら 束縛を逃れ、自由を得るための戦いへと、その姿を変えていたのである……。 |