詰中将棋第25図解説


解説
正直言って、私が今まで作った中でも、大いに自慢できる作品である。 手数では遥かに及ばないが、オリジナリティにおいては、第16図「摩天楼」以上に優れているであろう。 攻方王将で相手の玉に体当たりする手順は、第4図「80日間世界一周」で既に作成した。 しかし、今回は攻方王将に足がついていない(同玉と取られた後、直ちに同XXと取り返せない) のだ。まったくの只捨てである(攻方に太子があるからこそだが)。 しかもこうした攻方王将の押し売りを上下往復化(車井戸)してしつこいまでに繰り返す趣向は、過去に例が ないであろう。普通詰将棋では絶対不可能な技である。

獅子を横に控えさせ、王将を取られたら獅子で追っかけて詰ます。そこまでは、容易に考え付く。 だが、どうやって折り返すのか?3一王将を同玉将と取られたときは、獅子の効き筋は届かない。 3四竪行(成銀)から6五獅子で8八ちょろ角の効き筋を通し、獅子を近づけて詰ます変化。この仕組み を発見するまでが第一の難関だった。第2の難関は玉方1四鯨鯢の配置で、これを置くことで、攻方3二王将 が成立するのが2三に相手の玉がいるときのみとなった。これが出来れば下辺での折り返しもこれを応用 すればよいのだ。

本局の構成は、攻方12三横行を12二へ移動させる手を取られないように、玉方12十一竜王を移動させる ことを目標とする。そのために、8十二竜馬を捨て、11九竜馬を捨て、11十二奔王を実現させるのだ。
ところが、196手目9七同猛豹となったところで、攻方の太子に逆王手がかかってしまうのだ。 こうなると、今度は攻方王将では足がつかない王手はできなくなり、往復趣向はここで終わる。 横行を奔猪に成って、何と奔猪鋸が発生するのだ。5一奔猪となったところで2二へ逃げると 3三王将が成立する(奔猪の足がつく)ので玉方は4一鯨鯢と粘るがあえなく捕まる。最後は攻方王将で 止めを刺す。

是非とも、駒を動かして確認していただきたい。攻方と玉方双方の王の軌跡を。 趣向手順の手の感触と、それらが成立する仕組みを。

尚、題名は、スティーブン・スピルバーグ監督の名作映画よりつけました。