しげぼうの言いたい放題


・立憲民主党への提言(2017年10月31日)

去る10月22日の衆議院総選挙で自民党が圧勝、立憲民主党躍進、希望の党が惨敗という結果となった。
当初は、森友・加計学園問題に伴う安倍内閣の支持率低下、強引な国会運営、更には大義のない解散強行などで、 野党に受け皿があれば政府与党は惨敗し政権交代も起こりうる状況であった。 そして、その受け皿は小池都知事率いる希望の党となるものと誰もが思っていた。 小池都知事は7月の東京都議選において自らが率いる都民ファーストの会を大躍進させ、 自民党を大惨敗に追い込んだ。
その勢いもあり、小池都知事は国政に進出したわけであるが、彼女はとんでもない失敗をした。 民進党を吸収合併することを民進党の前原代表との口約束で決めたのだが、 その際「憲法改正に反対する者、先の国会で安保法制に反対の立場の者は排除する」 と言ったのだ。 無論、小池都知事には選別する権利があり、この件はむしろ民進党前原代表が事前に政策協定を詰めずに勝手に突っ走った ことが最大の過ちであったが、排除ということばには第三者が聞けば恐怖と独裁を連想してしまうのは当然だ。 この種の排除の論理は、小泉元総理が郵政解散の時に用いた手法だが、小泉には良し悪しはともかく 郵政民営化を成し遂げるという政策的に明確な目標と理念があり、だからこそ選挙で民意を掴むことが出来たのだ。 安倍政治に対抗すると言いながら憲法改正反対、安保法制反対の人を排除するというのはどう考えても矛盾だ。 更には、自分自身が選挙に出るかどうかも直前まで曖昧にして結局出ず、選挙後の展望について、公明党の山口を首班指名したい石破茂と組みたいなどとスタンスがまるで支離滅裂だった。

もっとも、これは小池、前原の失敗というより、 彼らは最初からリベラル勢力を切り捨てて保守二大政党を目指すという考えだったのかも知れない。 だが、今迄もそういう政治勢力はことごとく失敗している。1990年代の新進党しかり、2010年代初頭のみんなの党しかり、 維新の党しかり。
何故、失敗したのか。理由は明快だ。保守政党を2つ作ることの意義がはっきりしなかったからだ。 自民党と似たり寄ったりのスローガンしか掲げておらす、違いが有権者にわからない。 「違いがあまりないのであれば自民党で充分じゃないか」ということになり新進党、みんなの党は選挙で自民党に負け崩壊し、 維新も今回の選挙で後退した。
希望の党もこれらの政党と発想は殆ど全く変わらない。 更に小池、前原は彼らが切り捨てようとしたリベラル勢力の存在の大きさが全くわかっていなかった。 前原はリベラルは時代遅れ、ここは保守の小池人気にあやかろうという極めて単純な発想で選挙に臨んだ。 その結果、希望の党に加わらず信念を曲げなかった枝野幸男代表代行の立ち上げた新党立憲民主党共産党が候補を降ろしたこともあり躍進。 希望は共産党に対立候補を立てられ結局右も左も敵に回し立憲民主党よりも当選者で及ばない惨敗を喫した。 自民党に明確な対立軸を打ち出さなければ選挙に勝てないということが改めて証明された今回の選挙であった。

今後の政界は、自民党、公明党の与党に対して野党は立憲民主党が軸となっていく構図になっていくだろう。 自民党に対抗する指針として、格差縮小で中間層の拡大、原発ゼロの実現、個人の権利を尊重しともに支え合う社会、 徹底して行政の情報を公開、立憲主義の回復などが柱になっている。
大変素晴らしく、自民党との明確な対立軸を打ち出した内容だと思う。 先の集団的自衛権を盛り込んだ安保法制も反対の立場を取る。 私も先の安保法制の内容は明らかに憲法違反であり、一度廃案にすべきと考えているので、大いに賛成する。

但し、私としては、それだけでは不充分と考える。 共産党、社民党、自由党、旧民進党は安倍政権の安保法制強行採決を機に4野党共闘に踏み出した。
それは単に安保法制を廃案にするということだけが目標になっているような感じがする。 無論それは大切なことであるが、では再発防止はどうするのか、という点が曖昧なのだ。 独裁者が憲法無視の法案や政令を強行して決めた場合の咎める手段を構築すること、 それこそが野党4党が追究すべきことなのではないだろうか。 それをやらなければ、また将来第2、第3の安倍晋三が生まれる。 ちなみに私は安倍晋三を悪玉扱いにするつもりはない。 これは日本の憲法運用上の穴があったことが問題だと言っているのであって安倍晋三はその穴を突いたに過ぎない。 姑息で卑怯であるが。
現に、安保法制だけでなく、例えば一票の格差が明らかに違憲状態なのに、裁判所では、 違憲であるが選挙は有効などと1、2年も経ってから間抜けな判決を出すなど、 現在の日本の裁判所の行政チェック機能には問題があった。 もっと恐ろしいことを言えば、国会で今の憲法の停止宣言を出すことだってあり得る状況なのだ。 そういう右翼政治屋が現実に存在するのだ。誰がそれを止めるんですか? (あまり知られていないようなので付け加えておくが、ちなみに現在の日本国憲法は、 明治憲法73条の手続きに則り帝国議会の衆議院と貴族院を経て成立しているのだ。お忘れなく。)
憲法運用上の穴がある以上、まずはその穴を埋めなくてはならない。 憲法裁判所を設置するのか(この場合憲法改正が必要となる)、憲法を意図的に無視した政治家に刑罰を設けるのか、 具体的にどうするかは共産党などとよく話し合って決めてもらいたい。 そういう具体的なことを打ち出してこそ、4野党共闘の意義が真に生きるのである。

今は、与党が3分の2の圧倒的多数を握っている状況で野党にとっては厳しい状況ではあるが、 立憲民主党には野党第一党として与党に対するチェック機能をしっかり果たして欲しい。 無理に党勢の拡大を図って自分達と正反対の考えの人物と妥協をせず力を蓄えることだ。 今出来ることをしっかりやっていけば、政権を担えるだけの勢力を築くという結果はいずれ後から必ずついてくる。


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