おぞましいことが現実に起こった。日本人2人がイスラム国(ISIL)に拘束され、身代金を要求された後、 首を切断されて殺害された。ISILは見せつけるかの如くその映像をネット動画に投稿、世界中に公開した。 ISILは、ヨルダン人パイロットも拘束し、ヨルダンで拘束されていたISILのテロリスト死刑囚の解放を 求めたがヨルダン政府が応じなかったため、殺害動画を公開(実は死刑囚の解放を求める以前に既に殺害 していた。しかも生きたまま火あぶりにするという残虐なものだった)。
何はともあれ一番悪いのはISILだ。無論、殺害された2人の自己責任論を持ち出すなど論外だ。
とにかくどういう形であれ、彼らを壊滅させなくてはならない。
誰も異論はないだろう。彼らはまともに取引の出来る相手ではなく、巨大な犯罪集団である。カネで解決したり、
安易に要求を飲んでも駄目だ。
かと言って武力一辺倒でも犠牲が多く出るだろうし、どれほど効果が上がるかわからない。
とにかく対応を誤れば、却ってISILを勢いづかせる。
彼らの資金源を断つ、彼らに同調しそうな人の出入国をチェック強化する、
情報収集能力を向上させ確実迅速な情報を掴めるようにする、
など地道なところからやっていくしかない。
では、安倍政権の今回の対応はどうだったのか。実は昨年の衆議院解散前には、日本人が拘束されていることを
安倍は知っていた。
無論、騒ぎになるとISILが何をするかわからないので水面下で何らかの動きを模索していたのであろう。
だが今年1月に、こういう事実を知りながら、敢えて中東を訪問し、
ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル支援すると大々的に宣言したのは大きな判断ミスだった。
いくら人道援助だと言ってもそんなことはISILから見れば、大きな違いはない。
周辺国を支持するとしても、あんな風に大きな声で「反テロ国家を支援する」などと、
威勢のいいことを叫ばなくても良かった。
やるならISILを刺激しないように具体的内容は表に出さないように進めるべきだった。
案の定、ISILは今後日本をテロの標的にすると言い、日本に身代金2億ドルをふっかけた。
反ISIL支援のために拠出するとした額と同額である。
安倍にしてみれば、私はこんなにテロを批判しています、私はこれだけ仕事をしています、
と単にアピールしたかっただけなのだろうが、国家の指導者としては軽薄この上ないパフォーマンスだったと言える。
その結果、人質の殺害はおろか、日本人はどこに居ても決して安全とは言えない状況に陥ってしまった。
それにしても、2004年のイラク人質事件と同様に、
今回もまた日本の政治家や国民は人質となった方の自己責任追及に走った。
人質が生きている間は、高村副総裁が人質に蛮勇呼ばわりしたり、
国民の怒りを政府ではなく人質に向けようとした。
そして、人質の殺害が確定した後、一転して「自衛隊の人質救出のための派遣」など自衛隊を海外派兵するための
法整備や憲法改正が必要だと言い出した。
あれ?危ないところに行って捕まったら自己責任じゃなかったの?どうして自衛隊を海外に派遣するの?
という突っ込みも受け付けず、ひたすら一本のレールを突っ走ろうとする恐ろしさ。
結論から言えば、今回の一連の騒動は、何とか自衛隊海外派兵に道筋をつけようとした巧みな世論誘導なのだ。
先程、2億ドル拠出は軽薄なパフォーマンスだと書いたが実はマッチポンプで、
こういう方向へ持っていくために敢えてそのようなことを言ったのかも知れない。
どっちにしても安倍というのは、まともな指導者とは言えない。
問題なのは、こうした矛盾点をマスコミが政権に対して指摘しなくなっていることだ。
安倍のマスコミに対する恫喝もあるのだろうが、国民の間に政権を批判することは悪だ、
という空気が広まっているも非常に恐ろしいことだ。
無論人質が捕えられているときに過度な政府批判は、相手を利するということは確かだ。
しかし、人質が殺害された後、政府の対応に問題がなかったかを検証するのは大切なことだ。
こうした使命をマスコミが果たせなかったら日本はまさに戦前戦中と同様な状態になっていくだろう。