日本中、お祭り騒ぎだ。日本時間8日朝5時頃に決まった2020年夏のオリンピック候補地選び最終投票で
イスタンブール、マドリードを破り東京が勝利したからだ。これで経済も上向き、世界中が日本を認めて
くれた、と思っている人も多いだろう。
折角の祝賀ムードに水を差すようで申し訳ない。これは日本人として親バカ的な視点ではなく、第三者として
客観的に見た場合の私の考えを述べさせていただきたい。
正直言って、私は今回の東京に対するイメージは最悪だった。4年前に立候補した時よりも悪い条件が多かった。
その第一は2年前の東日本大震災に伴う原発事故が未だに収束しておらず汚染水漏れなど新たな
問題が発生したことだ。
第二に気象的な問題だ。オリンピックが開催される7月後半から8月は日本では
もっとも暑い季節であり、その暑さは年々増している。今年は記録的な猛暑であり、ゲリラ豪雨、関東でも
竜巻が発生するなど異常気象であった。いや異常気象というよりここ数年このような状況が続いており
それが恒常化していると言えよう。前回1964年の東京オリンピックでさえ10月に開催されたというのに
その当時より更に熱帯化いるこのような時期に開催など出来るのか?
(東京は8月の平均気温は1981年〜2010年までの30年間で27.4℃だが、直近4年だけみると2010年から
今年まで29.6℃、27.5℃、29.1℃、29.2℃と3回も29℃を超えているのだ。)
第三に外交的摩擦、領土問題、外国人排斥デモなどの問題だ。
日本と言えば、憲法9条があり、絶対に戦争をしないというのがウリだった。
ところが、昨年あたりから、韓国と竹島領有問題、中国とは尖閣領有問題が発生し、軍事的にも
一触即発の危機が訪れた。日本では憲法9条を改正せよ、との論調が強まり、一般の市民(ネットウヨク)は、
新大久保などで、「韓国人を殺せ!」「韓国人を犯せ!」とまで汚い口調でデモを行うようになった。
実際暴力沙汰が起こらないにしても、こういうバカな奴らが上記のような言葉を沿道から発するようでは
それだけで恥ずかしいことだ。
その他にも、アスリートに対する監督の暴力問題、猪瀬都知事のイスラム諸国を小バカにした発言なども、
オリンピック精神や招致活動としては問題であった。
とは言え問題の全くない国などはない。マドリードは、経済危機で財政も悪く失業率は25%を超えているという。
イスタンブールは、反政府デモが起こったり隣国シリアの内戦が飛び火する可能性もある。
相対的に見れば、IOC委員からは日本は平和で豊かな国というふうに映ったのだろう。
ある意味そうかも知れない。日本の失業率は4%を切っており、夫婦共稼ぎが当たり前、仕事を探すよりも
自分達の子供を保育所に預けられなくて困っているとか、皆が長生きし過ぎて年金を支払う財源がなく
なっているとか、外国から見れば贅沢な悩みなのだろう。世界が危機になればなるほど安全資産として
「円」が買われる。
そういう意味で消去法的に日本が選ばれたというのなら確かに納得だ。
だが、IOC委員はもう少し日本に対して突っ込むところはあったはずだ。
上記私が挙げた問題点の中で、IOC委員が突っ込んだのは一番目の原発問題のみで後の問題は完全にスルーだ。
選手が健康的にプレー出来るかということで気象状況は極めて重要だし、悪質なデモを言論の自由の名のもとに
放っておくことは好ましいはずはない。「あなたのところではこんな悪質なデモがあるが、対策を取って
いるのでしょうか?いないならば支持できません」「中国や韓国との関係は大丈夫ですか?将来戦争の可能性もある
のですか?」という委員が出なかったことは不思議でならない。
トルコに対しては、シリア内戦問題を材料にしながら(トルコとシリアは戦争しているわけではない)、
日本に対しては日中、日韓問題をスルー。トルコのドーピング問題を材料視しながら、日本の柔道のアスリートに
対する監督の暴力問題はスルー。IOC委員達の頭は、最初から東京しか眼中になかった、そう疑われても
おかしくなかった。
ともあれ、民主的な投票により東京に決まった以上、東京には万全な体制でオリンピックを行ってもらいたい。 ただ、安倍首相が演説した「福島の原発の汚染水の問題は敷地内で食い止められる」という発言が嘘だった場合や、 東京招致に気を良くして国威発揚などと傲慢な態度を日本国民が取るようになったら、IOCは即刻2020年の オリンピックを中止にしていただきたいことを最後に付け加えておく。