生活保護受給者数205万495人(厚生労働省2011年7月時点。1951年度以降で過去最多)。
貯蓄ゼロ世帯が過去最悪の28.6%(2011年)。
年収200万円以下の給与所得者が5年連続で1000万人を超(2010年)。
日本の貧困層の拡大を示す数々の指標がある。
こんなとき、こういう人達を最も支援しようと考えている政党は、共産党と社民党であろう。
暮らしを優先、格差の是正を強く訴えている。
ところが、この2つの政党は全く冴えない。週刊文春4月12日号の最新の世論調査では、
民主144vs自民209vs維新+みんな76 になると予想している。 で、共産党はというと7議席、社民党は4議席と
前回よりも更に議席を減らすということになるらしい。民主党大惨敗で、自民もさえず、維新の会とみんなの党が
大躍進ということになりそうだ。
共産党と社民党は、今世紀になってから選挙の度に票と議席を減らし続けた。
共産党は、参議院の東京選挙区では定員が5人に増えて、小池晃のような幹部級を送っても勝てない(それまでは
4人区でも大抵4番目以内で当選していた)。最新の調査でも全く上昇の兆しがない。
中道政党が政権を握っていて、信頼を失ったとき、通常世論は左か右に両方向へ別れるのが一般的だ。自民党という
中道右派政党が信頼を失い、民主党という中道左派政党が政権を握った。今までなら、共産、社民が駄目なのは民主党
に期待が集まったからだと考えられる。しかし、その民主党がこけて受け皿となるはずの両党がこれほどの体たらく
で、世論は維新のような極右政党を支持してしまう。右と左に分散せず右向け右で一斉に右へ行ってしまうという現象
が起きている。
先に言ったように、貯蓄が0の貧困者の割合が28.6%もいるなら単純計算しても、本来共産、社民両党で28.6%の国民
が支持していても不思議ではない。しかし、実際は各種世論調査でも消極的支持を含めてもせいぜい共産党が3%、
社民党が2%程度であろう。貧困者層を全く取り込めず、逆に極右政党に彼らを走らせているものは何なのか?
まず、共産、社民の党自体の問題があることは否めないであろう。 同じ考え方のもの同士で協力関係を模索したりせず、いつも互いに足を引っ張り合うことを繰り返し懲りない体質が 一つの問題であろう。増税に反対します、福祉は絶対に切り捨てません、とマイナス面に触れないことも信用できない と映るのかも知れない。また、社民党の福島党首などが、TVに出演して死刑廃止を主張するなども反感を買う原因 となっているのかも知れない(死刑廃止は保守層の政治家にもいるが)。
だが、大きいのは、日本の国民性や社会体質が大きいのでろう。
日本は戦後、1980年代後半までずっと右肩上がりできた。「会社は一生雇ってくれる」「給料は毎年必ず上がる」という
伝説的なものが生まれていた。そうすると、それを前提として住宅ローン、その他借金してでもモノを買うというライフ
スタイルが定着した。借金をするときは、深夜まで働いて残業した場合の金額を将来の見込み収入と言って少しでも多く
借りられることを考えた。
だが、それがバブル崩壊と失われた20年で全く通用しなくなった。それだけならよいのだ。通常、不況になれば
労働時間を短くして給与や残業代が減っても皆で我慢して分かち合おう、とか、これを機会に有休を取り易くしたり
労働条件を改善しよう、とか合理的発想が出てくるはずだがそれが全くないのだ。
大半の日本人は、住宅ローンや無理な借金を組んでしまっているため、「給料を減らすな」、「もっと残業をさせろ」、
「能力のない社員を切れ」、のような発想になってしまっているのだ。「チョンやシナ人を追い払え」などと
排外主義的なことを訴える者もいる。
更に最初から仕事に恵まれない貧困者も、自分の収入を増やすことを諦め、公務員や教員といった安定的な仕事をしている人
を叩いてくれる「キミオタ大阪市長」に共感を覚えるようになっている。
これが、共産党や社民党が伸びない大きな要因だ。借金してモノを買うのが当たり前みたいな戦後の風潮が、このような形で
日本の右傾化をもたらしているのである。
よくよく見ると日本の完全失業率は5%程度なのに、貯金0世帯が28.6%もあること自体がおかしい。
金銭感覚にルーズな人間がそれだけ日本には多いということなのだろう。働くことが出来ない、あるいは就職活動がうまく
いかない人は仕方ないとして、それ以外で貯蓄がない人間は、それこそ自己責任と言ってよい。
だが、それでは済まないのである。こうした人が選挙で「バカウヨ都知事」「キミオタ大阪市長」のチルドレンを大量に当選
させれば日本は、いつか来た道を辿ることになる。