菅内閣では、日本が環太平洋連携協定(TPP)に参加する方向で動き出している。
TPPは、元々2006年5月にシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国加盟で発効した経済連携協定 だが、アメリカ、オーストラリア、ベトナム、ペルーが参加を表明し、次いで、マレーシア、コロンビア、カナダ も参加の意向を明らかにした。 2015年までに協定国間の貿易において、工業品、農業品、金融サービスなどをはじめ、全品目の関税を10年以内に 原則全面撤廃することにより、貿易自由化の実現を目指すというものだ。菅首相は、「平成の開国」とも言って いる。
これに賛成する意見としては、自由貿易によって日本の企業の国際競争力の強化され、経済成長がもたらされ、
景気、雇用が上向く。日本は資源がなく外国にモノを輸出することによって成り立っている国だから貿易の障害
となるものは即刻取り除くべし、などの意見がある。
だが、そもそも外国との貿易交流を盛んにすれば、日本が良くなるという発想自体に問題はないのか?
日本の江戸時代は、外国との交易が殆どなかったにも関わらず、食料を自分達で賄い、250年以上も不自由が
なかったのだ。(更に付け加えるなら、この時代、対外戦争も一切なく、衛生面でも同じ頃のロンドンやパリより
も江戸の方が遥かに上をいっていた。)
特に、農産物に関しては、現在日本の食料自給率が40%しかないのが、TPP参加によって20%を下回る
可能性すらあるようだ。日本の農家は壊滅的な状況になる。自分の国の食料は自分の国で賄うという意識がないと、
世界情勢によって価格が大きく変動したり、食料そのものが手に入らなくなる事態も起こり得る。日本以外
の国の安全基準が緩い食料が出回るリスクもある。
食料は自分の国(地域)で生産し、自分の国(地域)で消費するという地産地消は、食料運搬のコストや労力、
輸送のためのトラックや船、飛行機などのエネルギー節約にもなり環境にも良い。
貿易とは、我々の生活を豊かにする手段ではあるが、目的ではない。極端に言えば、特に農産物に関しては、
貿易してはいけないものなのだ。農産物を貿易で手に入れるときは、余程国内が異常気象で農産物が作れなかった
ときくらいである。
やれ外国との競争だの、GDPがどうのと目先の経済成長率ばかりに目が行ってしまうのは愚の骨頂である。 外国にモノを輸出することによって成り立っている経済構造こそ改革すべきではないのか? 今日本に必要なのは、コンクリート中心の国から農業中心の国に変えることこそ最も大切である。 現在は、農業の担い手が高齢化して、若者に引き継がれない。彼らを育て、教育し、国内の農産物を 増やすことが肝心だ。もっとも若者を育て、立派な社会人として育成することは農業に限ったことではない。 深刻な大学生の就職難に対してもっと具体的方策を打ち出すべきだろう。高齢者の年金支給を早めて高齢者 の労働市場からの撤退を促進したり、外国人労働者の採用規制などをすべきだろう。高齢者も外国人も、人が 足りなくてどうしようもない、というときに労働者として採用するのはよいが、現在のような雇用環境では 雇用抑制は仕方あるまい。
民主党政権も、当初は「コンクリートから人へ」というスローガンを打ち出した。
温室効果ガスを2020年までに1990年比25%削減という目標も打ち出した。
だが、高速道路無料化などと、どう考えても矛盾することもやろうとした(恐らく民主党支持の自動車系の
労組の意向が強いのだろう)。子供手当など人口を増やして住環境の悪化を促すような政策も行った。
しかも、こうして子供を増やしたところで彼らは将来まともな就職先に就ける保障はない。要はただ単に
消費をしてもらいたいから子供を増やしたいだけなのである。
更には、財源がないのに法人税の減税で企業だけは減税するという。無論減税分が雇用や設備投資に
回る保障は全くない。
そこへ更に、TPPに参加して農業までも国際競争させるのだという。先に私が言った地産地消の論理と正反対
のことをやろうとしている。何もかも行き当たりばったりで、個々の政策を繋いで全体像を見ると矛盾だらけ
で一貫性がまるでない。
自民党政権時代よりも大企業べったりで、環境も、庶民の生活も悪くなる一方である。
何が「平成の開国」だ。むしろ、今こそ明治の開国前の価値観を見直さなければならないのに・・・。 このような国賊政権は一刻も早く、退場してもらわないとこの国はますます悪くなる。