今年も後半年を切り、景気が下げ止まりつつあるようだ。あれだけじゃぶじゃぶとカネをばらまけば そりゃ、少しは経済指数は良くなるだろう。だが雇用の方は、失業率5.2%、有効求人倍率は0.44と 悪くなる一方だ。
当たり前の話で恐縮だが、経済というのは、モノを作りモノを販売する供給者とモノを買い消費する
消費者の両者が存在して初めて成り立つのだ。供給者と消費者が互いに利益になり、更にはそれが社会
全体にも役立つ三方よしにならなくてはいけない。
経済が悪いということは、供給者、消費者のいずれかあるいは双方に何らかの問題点があり、利害が一致
しなくなっているということである。
日本は、今年に入り様々な景気対策を行っている。定額給付金、高速道路休日千円乗り放題、住宅ローン減税
などである。その他、検討中のものとしては、消費税を毎年1%ずつアップして12%に最終的にする(一気に
上げないで少しずつ上げることにより消費意欲を高めさせ財政再建も行う)、政府紙幣の発行で調整インフレを
行う、などがある。
だが、これらの施策は、いわゆる消費刺激策であり、大前提として「景気が悪いのは消費者側の問題
である。消費者にカネがないので使わない。だからカネを配る。だから減税する。」とか、「消費者が
カネをけちっている。カネを貯蓄させないような政策を打ち出し、何が何でも消費に向かうように仕向ける。」
いうのが根本の発想である。無論、消費者側に将来に雇用、年金等に不安があるのでそういうものを取り除く
必要はあるだろう。財政再建も必要であり、消費税論議も避けては通れない。(私的には、消費税は12%どころか
20%にしたって構わないと思う。その代わり、医療費は全て無料、小学校は完全無料化にし、年金も必ず支給しま
す、ゆりかごから墓場まで安心した生活を保障します、との確約があればの話だが。)
だが、肝心なのは、消費者側の問題点だけでなく、供給者側に問題はないのかという点でありそれが
全く抜けているのだ。
いくら、消費者の懐がよくなり、将来的にも安心だ、ということになったとしても、供給者側が消費者の
ニーズに合っているものを供給してくれなければ意味がないのだ。ましてや、「現代の若者は保守的だ。もっと
カネを使え!」などという論理は全くの的外れもいいところだ。
今、必要なのは、消費刺激策より供給刺激策なのだ。
資本主義というのは、行き詰まると必ず供給者側が不正なモノを作り出す。典型的なのが、4年前の
マンション耐震強度偽装事件(震度5にも耐えられないマンションを販売)である。携帯等電化製品も売れなく
なると、大した利便性の進歩もなく機能だけが複雑多岐になったモノを新商品と言って如何にも目新しい錯覚を
与え売りに出す。しかもコストを安く済ませるために派遣従業員や外国人労働者を使い不況のときはいつでも
切り捨てる。そうして、最後は供給組織そのものが滅びる。
アメリカのGMが経営破綻したのも、大きな見栄えの良い車を自社のブランド名で売れば必ず売れる、後は政府が
国民に対して自動車ローンを組みやすくなる施策を行ってくれればそれでよい、と認識しかなかったからだ。
燃費を良くするとか、環境対応のための開発努力を怠ってきた。
その点日本の自動車メーカーは、ましな方で、プリウス(トヨタ)、インサイト(本田)などのハイブリッドカー
は納車まで数か月待ち状態の売れ行きとなっているようだ。最も国営化されたGMも、今後は環境対応車に力を
入れていくようで、日本の自動車メーカーも浮かれてはいられない。
ま、とにかく、良いもの(社会ニーズに合ったもの)を作れば売れるという私の見解は間違っていないないようだ。
今後は、供給者側に消費者や社会に本当に必要なものを品質を確保して必要なだけ供給させる(モノを作る 労働者の労働条件も守る)ように管理監督することが大切であろう。その役はやはり国家がやらざる得ないであろう。 こうして考えてみると、やはり今後の日本を含めた世界は、社会主義化の方向へ進んでいく流れには逆らえないだろう。