しげぼうの言いたい放題


・シャレにもならない少子化対策国家ニッポンで相次ぐ妊婦たらい回し(2007年10月31日)

救急車などが妊婦を搬送中、医療機関に2回以上受け入れを拒否された件数が、2004年から06年までの3年間で 2452件に上ることが10月26日、総務省消防庁と厚生労働省が行った全国調査で明らかになった。 受け入れ先に収容されるまで3時間半かかったケースもあり、医療体制の不備で多くの妊婦が「たらい回し」 にされている実態が浮き彫りになった。 それによると、06年の1年間に2回以上「たらい回し」されたケースは、東京都が279件と最も多く、 次いで神奈川県(247件)大阪府(137件)と、大都市ほど受け入れ拒否が多いことが分かった。 最多は東京都の事例で、受け入れまでに26回拒否されていた。 3年間でみると、受け入れ拒否回数が10回以上の件数は全国で61件に上っている。
これを受け同庁は同日、全国の消防本部に対し、妊婦を含めた患者の搬送時に医師の指示を受けて救急処置が できる救急救命士などが医療機関に連絡することや、患者の特徴的な症状などを的確に医療機関に伝えるよう、 都道府県を通じて通知した。

調査は、奈良県橿原市在住の妊婦が今年8月、受け入れ病院が決まらず10箇所の病院を転々とし、 救急搬送中に流産した問題を受け、全国の消防本部を対象に実施された。同じ奈良県では、昨年も 出産中に意識を失った妊婦の搬送が19病院で断られ、やっと見つけた大阪の病院で 脳出血と判明。帝王切開で出産したが、母親が一週間後に死亡という事件を起こしている。

全くシャレにもならない。 世界的に人口爆発が問題になる中、少子化対策そのものに意義があるのか、という問題はさておき、 何年も前から少子化対策を国策として実施しようとしているこの国でどうしてこんなことが起こる のか不思議でならない。 児童手当を拡充してどうのこうのなどとカネをばら撒くことだけ熱心で、実際に子供が生まれようとすると 手術スタッフがいない、かかりつけ医のいない妊婦の搬送は想定外などと受け入れを断る。 確かに、こうした妊婦の多くは、何故もっと前から産婦人科へ行かなかったのか?という疑問が残る ケースが多い。お金の事情やら、妊娠の事実すら知らなかったとか様々な理由があるのだろう。 しかし、どんな不測の事態が起ころうと迅速に最善を尽くすのが医療機関の役割であり、それらを支えて いくのが国の役割ではないのか?これは妊娠出産という事態だけでなくあらゆる急病や事故などに共通 して言えることである。

上記のような対策を取ることは当然として、このようなことが起こる根本的な要因はというと、ずばり ここ数年来の構造改革路線の負の部分の表れと言えるのではないか? 日本の子供の出生数自体は、第2次ベビーブームの1974年以来ほぼ例年のように下がり続けている。 にも関わらず、ここへきてこのような問題が浮上してくるということは、出生数減少を超えるだけの 出産医療の衰退があると考えられる。
事実産婦人科を持つ病院は、1996年から2004年の間に26・4%も減少している (2006年10月4日(水)「しんぶん赤旗」)。 確かに、過密労働や訴訟リスクが高いため、産婦人科医師の成り手が少なくなっているのも事実だ。 だが産科医の医師不足を招いている根本要因は、ここ数年来の構造改革路線にともない、医師養成を 抑え、医療費削減、診療報酬引き下げなど公的病院に対する圧力と言えよう。これは、産婦人科に 限った話ではなく小児科その他にも言えることだが、儲からないものは安易に切り捨てるという発想が あるのだろう。
身近なところを見ると、私の娘が1998年1月に産まれた埼玉県和光市の国立埼玉病院。ここは現在、 産婦人科は残っているものの出産は取り扱わないとのことだ。国立病院でさえこうなっているのだから、 私立病院ではどんな状況になっているか容易に想像できよう。

対策としてはやはり、こうした医療現場の方々には充分な報酬を与えて、地道に医師を養成し数を増加 させていくしかない。でないと、日本の医療はどんどん廃る。国民の健康と安全を守る国家 としての当然の役割と言えるだろう。そのような発想を持たずして、無駄なものは削りたい、 でも若い人はもっと子供を産め、増やせ、などと言うわがままな無能な政治屋には何も任せられない。
今までの構造改革路線の負の遺産に対する早急な対応を求めたい。 如何なることがあっても、医療の切捨てだけは絶対にあってはならないことだ。


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