日本経団連(御手洗冨士夫会長)発表の「希望の国、日本」(御手洗ビジョン)の内容はゾッとさせら
れた。
その内容の主なものを列挙してみる。
◎規制改革などを実現することで、15年まで名目で年平均3.3%、実質で同2.2%の経済成長を達成
◎遅くとも11年度までには消費税を2%引き上げる
◎国・地方税を合わせた法人実効税率を10%引き下げる
◎憲法9条を含めた憲法改正 自衛隊の保持を明確化 集団的自衛権を行使
◎ホワイトカラー・エグゼンプションを柱とした労働改革
◎自立した広域経済圏を目指すため15年度までの道州制導入 15年度までに現在1800強ある市町村を
半分程度に統合
◎政治寄付を拡大するため政治資金規正法を改正
◎愛国教育(国旗掲揚・国歌斉唱の推進)
などである。
こいつらは、一体日本をどうしようというのだろうか?誰のためにこのようなことを行おうとするのか?
取り敢えずは、税制面から見てみると、消費税を上げて、法人税を大幅に引き下げるという。
法人税基本税率は、1988年には42.0%だったものが、段階的に引き下げられ1999年以降は、30.0%となっており、
国際的にも遜色の無いところにまで低下している。日本経済は、昭和40年代のいざなぎ景気を超える
長期の景気拡大期に入り、過去最高の収益を出している企業も少なくなく、銀行の不良債権も消えた。
にも関わらず、一般庶民の側では、景気拡大の実感が殆どないのが実態だ。
これらの企業は血の滲むリストラを敢行し、特に銀行などでは、公的資金(国民の税金)の投入に
よって救われた面も大きい。国家財政も、依然として800兆円超の膨大な国債残高があり、その額は
現在でも増加中である。減税どころではない。
今後は、こうした企業は、少しでも国民に還元させるような努力をすることこそ大事である。銀行などは
あれだけ国民の税金をつぎ込みながら、預かった預金の利率は殆ど増えていない。そのくせ、貸すときには
莫大な金利をとるのだ。国民をなめるのもいい加減にしろ。
企業側をもっと減税しろ、足りない分は消費税で賄えとは、本末転倒も甚だしい。
ホワイトカラー・エグゼンプションもおかしな制度だ。ホワイトカラーの職種では、時間では必ずしも賃金を
評価できるとは限らないのも事実である。しかし、バブル崩壊後、年功序列的な賃金体系がなくなるとともに、
本当に能率的に働いている社員は、元から高くなっている。一定以上の役職の社員は、年俸制にしているところ
も少なくない。
現在最も大切なテーマは、如何に過労をなくし社員の健康を守るという労働時間短縮であろう。
なくすべきは残業代ではなく、残業そのものなのだ。
例えば8時間労働を7時間とか6時間に短縮するための法整備などが大切だ。
無論、そうなれば基本給も7/8、6/8に減らして構わないが、残業をやったらきちんと残業代を支払う
ことは当然だ。
経団連の考えには、そのような視点が、まったく欠けているのだ。
もっともっと残業代などをカットし労働強化を強めたい、というのが本音なのだろう。
そうやって儲けたカネを企業側は、どうするのか?政治資金規制法を改正し、自民党など業界の利益に直結 した政党に献金するのだそうだ。これでは、癒着が横行し、政治システムが旧態依然としたものになって しまう。とんでもない話だ。こういうことをあからさまに口にすること自体、神経がおかしいとしか言いよう がない。
だが、何よりも不可解なのは、今回憲法9条の改正、愛国教育の推進を掲げていることだ。
彼らにとって直接的な利益に繋がらない政治絡みの話を何故持ってくるのか謎である。
こいつら一体何様のつもりなのか?
憲法改正は安倍政権の悲願である。安倍政権では既に教育基本法の改正を実現し、愛国心を明記した。
防衛庁を省に昇格させた。安倍政権にコビを売り見返りに法人税減税など自分達の主張を実現しよう
という狙いがあるのは間違いない。
また、日本が戦争をする国になれば、軍需景気で彼らの儲けは多くなり、それで私腹も肥やせるとの
判断もあるのだろう。
愛国教育の推進の手段として、国旗国歌を学校現場だけでなく、企業でも取り入れるようにしたいとも
主張している。学校現場でも現在もめているテーマであり、それを企業でも強制するような方向に持っていく
とは只々異常としか言いようがない。いくら仕事が出来ても君が代を歌わなかった社員には減俸や左遷、
下手すると解雇などとんでもない処分が行われることが現実味を帯びてきたのだ。
これは、経営側のパワハラであり、時のタカ派政権と組んで、お上や企業組織に歯向かわない従順な社員
や国民を作り出そうとしている抑圧社会の創出である。
「みたらい」だか「てあらい」だか「べんじょ」だか知らないがこの男は、経済界の上層部の人間の利益しか
全く頭にないようだ。自分達が儲かりさえすれば弱者の気持ち、環境、平和、その他世界規模の問題など、
微塵も感じたこともないのだろう。
今や経団連は、そこらの街宣右翼などよりもはるかに悪質危険な圧力団体である。
このような圧力団体に政治家が振り回されるようなことは断じてあってはならない。
また日本国民も、この圧力団体の動きから今後も目を離してはならない。