しげぼうの言いたい放題

 


・専守防衛国家に核保有の意義はない(2002年06月09日)

官房長官が、非核三原則を将来変更する可能性もある、などと言ったらしい。 最初は、政府首脳の誰かが言ったのどうのと報じられていたが、結局官房長官が、それは私だ と認めた。慌てて専守防衛と非核三原則は守りますなどと弁解したが、ちょっとお粗末である。

憲法9条は戦争放棄をうたっているが、自衛権までは否定はしていないというのが一般的な 解釈である。戦争放棄と核保有は別問題で、自衛のために核武装も可能であるという考えの 人間も自民党など保守系に多い。だが、どう考えても核というものは自国の防衛のために 使用されるものとは考えにくい。自国の防衛とは、例えば外国から飛行機で空襲をされた、 とか、自国に外国の軍隊がどやどやと入って侵略行為が行われたときに、それらを撃退する ものである。戦いの場所は、当然自国かその周辺ということになり、防衛のために核などを 使用すれば、自国の人間の多くも傷つく。つまり、核が使用される場所は自国から遠く離れた 外国でしか有り得ない。核保有論者は、核を持っていること自体が外国から「あの国を侵略し ようとすれば核で報復されるから恐い」と思われ自国防衛の役割を果たすと考えるのだろう。 しかしそれは防衛という枠を大きくはずれた威嚇である。

日本政府は、これまで外国の意見に振り回されて行き当たりばったりで解釈改憲を進めてきた。 思うに、日本という国は、国防に対してどうあるべきかという理想像が描き切れていないのでは ないか。だからこそ、ああいう官房長官の発言が出てきたのだろう。 私は、国防に対して特に自衛隊の役割というものに対するレベルを次の8つに集約してみた。

1.完全非武装中立型・・これは、自衛隊の存在自体を全く認めない。日本はコスタリカの ような完全な非武装中立型であるべきとする意見である。日本国憲法発足当初は、この考え方 が一般的だった。

2.防災型・・自衛隊の存在自体は認めないが、地震、その他災害が起こった場合は、現実 に存在している自衛隊の人達を活かして使うことは許されるとする意見である。

3.専守防衛型・・自衛隊は、外国から侵略を受けたときに限り国内やその周辺で侵略者を 追い払うために武力を行使することが可能とする意見である。

4.PKO参加型・・自衛隊は、国連平和維持活動に対して、武力を伴わない協力 (地雷の撤去、物資の運搬等)が可能とする意見である。

5.PKF参加型・・自衛隊は、国連平和維持軍に参加して、世界平和のため武力を伴う 協力も行なうべきとする意見である。あくまで世界のコンセンサスを集約した国連の意見に 従うことを前提とする。自由党の小沢党首あたりがこのレベルに属する。

6.安保重視型・・自衛隊は、安保条約を結んでいる同盟国(アメリカ)が侵略を受けた 場合、日本も同盟国を助けるために軍事行動を起こすことが出来るとする意見である。3に おける自国の範囲を同盟国の範囲までに広げたものである。

7.世界の警察型・・自衛隊は、アメリカのように世界の警察として、世界各地の紛争に 積極介入して、国連とかアメリカの意見とは無関係に独自の判断で、軍事行動を起こす事を 可能とする。もはや、誰が見ても完全な軍隊である。

8.帝国型・・これは、ズバリ大日本帝国復活である。軍隊を使用して、北方領土や 太平洋戦争以前の日本の領土を武力で奪い取り更に新たに領土を拡張させようと試みる ことである。今の時代、右翼の一部の人間くらいしかいないと思うが。

以上のような軍事レベルで、どのレベルを目指すのかをはっきりさせなくてはならない。 まず理想像を描き、その結果によって初めて改憲の必要性が生じてくるのだ。私の考え ではレベル5以上を目指すなら、明らかに改憲が必要だと思う。3や4もグレーゾーン かも知れないが。私個人としては、憲法を変えてまでレベル5以上のことを行なう必要 はないと思っている。

日本では、アメリカのアフガン攻撃に対して後方支援ということで、改憲も行なわずに いきなりレベル6のことを行なってしまった。 核武装の可能性を示唆するような人間は、レベル7以上のことを考えていると見て間違い ない。 こうした隠れ右翼みたいな奴等が、表面的には平和を求めるとか言って、実際には、 なし崩し的に逆のことをやってしまった。自由党の小沢党首のようにこの線まではよい、 ここから先はダメと明確な目標がないのだ。レベル5が正しいかはともかく、レベル6は 絶対認めないと筋を通した点は評価できる。

それにしても、官房長官の父親は、故福田元首相である。彼は首相を辞めてからも、アメリカの カーター元大統領ら世界の引退した指導者を集めOBサミットを開催、核廃絶や地球環境問題を 訴えていた。あの世でさぞかしお嘆きのことであろう。


  戻る