しげぼうの言いたい放題

 


・ここが問題だ、非拘束名簿方式(2000年10月13日)

与党が現在の参議院比例代表区を非拘束名簿方式にしようとしている。これに対して

野党は、猛反対して一切の審議拒否戦術に出て異常な国会が続いている。

そもそも、現在の参議院の比例代表制とは、どういうものなのかと言うと、投票者が

政党名を記入し、各政党の得票率に応じて、各政党の当選者の数が決まるという制度

である。自民党の得票率が4割なら全体の4割の議席数を割り当てるというように、

国民の政党の支持率という点では正確な民意を反映する。この制度の問題点は、比例

区に立候補した候補者に当選の優先順位を決定しなくてはならず、その優先順位が各

政党で決定されるため、それが必ずしも選挙民の意志を反映していないことである。

古い話だが、田中角栄のロッキード裁判が問題になったときの1983年の参議院選

では、自民党で当時田中派の二階堂幹事長が田中派の候補者ばかりを自民党の比例名

簿の上位に乗せるといったことをやって大いにひんしゅくを買った。

このような問題を直そうというのが、今回の「非拘束名簿方式」である。これは政党

名を書いて投票しても、候補者の名前を書いて投票しても良いという制度である。

候補者の名前で書かれた票もその候補者の属する政党への投票とみなされ、政党名で

投票された票と合わせた合計の票で各政党への議席数を決定する。当選優先順位は、

候補者の名前で書かれた票で得票の多い者から優先的に当選する。

問題は、候補者の名前で投票された票が、その候補者の属する他の候補に影響を与え

てしまう点にある。

例を挙げてみよう。定数が仮に5として、自民党にA、B、C、Dの4候補、民主党

にE、F、G、Hの4候補が立候補しているとする。自民党のA候補がタレント出身

で知名度が高く400万票取ったとし、B,C,Dが仮に0票、政党名を自民党と書

いた票も0だったとする。一方、民主党のEが30万、Fが25万、Gが20万、H

が15万、政党名を民主党と書いた票が10万あったとする。

自民党全体の票は400万、民主党全体の票は100万ということになり、新制度で

は、当選者は自民党のA,B,C,Dと民主党のEとなる。

自民党のB,C,Dは誰も投票していないし、政党自民党への投票も0。にも関わら

ず、彼らは当選で、民主党で25万票取ったF候補が当選出来ないというのは誰が見

ても納得いかないであろう。

これは、極端な例であるが、野党が審議拒否まで行なって現在反対しているのは、こ

のような現象が起こるからに他ならない。当然ではあるが、大切なのは単に「自民党

が有利になるための制度だから」といった理由での反対では世論の支持は得られない

ということだ。それでは、単に自分達が不利になるからという自分勝手な言い分でし

かない。具体的に非拘束名簿方式とはどういうもので、どういう欠陥があり、有権者

にはどんな不平等があるのだということを分かり易く説明することだ。

最後に一言、仮に今回の選挙制度が与党のゴリ押しで決まったとしても、選挙をやる

有権者がしっかり意識を持っていれば問題ないということだ。テレビに頻繁に出てい

るだけで、政治のことなど全く勉強していないようなタレント候補などに安易に投票

せずに、しっかりとした政治理念を持った候補者を選ぶよう心掛けようではないか。


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