W杯に防災対策急務

都市防災研究会幹事 野上 純与(『神奈川新聞』2002年2/6『提言箱』掲載)


 日韓共同開催の、サッカー2002年ワールドカップが5月31日に開会し、6月30日には決勝戦が、鶴見川多目的遊水地にある横浜国際総合競技場で行われる。

 東アジアそして世界の平和的安定のためにも、サッカー2002年ワールドカップの果たす役割は大きく、ぜひ成功させなければならない。

 そのワールドカップを成功させるために、最も大切なことは、外国から来日する選手、応援団、観光客はじめ、市民の生命、身体、財産の安全を確保することである。

 そのために、警察・公安当局は、フーリガンなどを視野に入れた防犯対策に万全を期して、最善をつくしている。

 しかし、その防犯対策に比べて、きわめて切迫している神奈川県西部地震や東海巨大地震に対応する防災対策は、決して十分とはいえない。

 東海巨大地震神奈川県西部地震は、1972年に発生した八丈島東方沖地震を、長期的前兆とする。以後、東海巨大地震には、1996年に震源域における微小地震の活動が静穏化する中期的前兆が現れ、いま、震源域の地殻変動は、沈降から隆起へと質的に変化しつつあり、2002年春から2004年春までの間に、短期的前兆としての地震活動を経て発震する現実的可能性がある。
 また、神奈川県西部地震は、三宅島火山の活動以後、短期的前兆期にある。

 その現象として、2001年6月から同年11月にかけて、神奈川県西部地震の栗源域である西相模湾断裂の西側にある箱根火山の山体が膨張する地殻変動があり、同年12月8日には、その西相模湾断裂の北側にある丹沢山地を震源とするマグニチュード4.6の小地震が発生している。

 「備えあれば、うれいなし」。防犯対策にあわせて、直面する東海巨大地震神奈川県西部地震の防災対策に万全を期すことはワールドカップ成功への前提条件であり、その条件を充たすことが急務である。


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