風のささやき

Shimbo氏、スペイン情熱旅行!「フェンヒローラ編~地中海の若大将~」

 その日、いつものように朝早く起されたShimbo氏であったが、ご機嫌はと言えば、情熱的な恋が終った割には、そこそこだったという。その日はスペイン旅行の一番の目的の一つ、アルハンブラ宮殿見学が入っていたからだ。ギターの名曲「アルハンブラ宮殿の思い出」。Shimbo氏がクラッシック・ギター界にデビューしたきっかけはこの曲を弾きたかったから。その日、Shimbo氏の頭の中では朝からギターの音色が響き、知らぬ間に鼻歌を歌いながら生ハムに食らいつくShimbo氏に、まわりは怪訝な目を向けていたという。
  朝食から1時間後には、バスでホテルからすぐのアルハンブラ宮殿に到着。入口のところには朝早くだというのに長い長い人の群れ。ここは有名な観光地なので、この場所にきて入場しようとしても随分と待たされることがあるのだという。「それは、このShimboの網の目のように張り巡らされた情報網にもひっかからなかった」とちょっと冷や汗をかいたShimbo氏。その横をすり抜けて、Shimbo氏一向はアルハンブラ宮殿へ。このときほど、ツアー旅行の素晴らしさを実感したことがないという。長い列を作る観光客に「アラ、アラ」とおばさんチックな声をかけながら、アルハンブラ宮殿内へ。門をくぐるなり「ここが憧れのアルハンブラ!」といきなり写真をとり始めたShimbo氏。ところが、そこはスペイン国王が建設を進めたルネッサンス様式の王宮ということで、ちょっと別物。「へんな期待させやがって」と、ぶつくさ呟き続ける、相変わらず見る目のないShimbo氏であった。

 そこから、また少し列を作って並んだ後、アルハンブラの王宮の中へ。一歩足を踏み入れた其処は、イスラム様式美の世界。ヨーロッパの建築に見慣れたShimbo氏の目には、とてもそれが新鮮に思えたとのこと。そうして、内部を歩いているうちに自然にインスピレーションが湧き上がるのを覚えたのだという。「今だったら完璧なギターの演奏ができる」と思ったというShimbo氏。「アルハンブラ宮殿が俺で、俺がアルハンブラ宮殿!」と、意味不明の統一感を主張し、ガイドさんにすぐにギターを持ってきてくれとの指示を出したという。もちろんその要求はすぐさま却下も、顔をトマトのようにしてハイな気分になったまままのShimbo氏を落ち着かせるまでには、100人以上の人間が入れ替わり立ち代り説得を続けたのだという。

 お騒がせのアルハンブラ宮殿見学を終えたShimbo氏。昼食で訪れたレストランで、イカ墨の煮物を食べたのだが、まだ少し上の空。墨で歯を真っ黒にしたまま、アルハンブラの余韻に浸っていたのだという。

 その後、バスは一路今日の宿泊地のフェンヒローラへ。「何でそんな聞いたことのないところにとまるのかね。趣旨が理解できないね。」と、この場所への不満をたらたら述べていたShimbo氏であったが、そこは、れっきとした地中海のリゾート地。目的地が近づくとガイドさんの案内のアナウンス。「エ~、今日の宿泊地は海の目の前です。水着を持って来た方はどうぞ泳げますので、海水浴をお楽しみ下さい。」「何! そんなことは一言も聞いてなかった」というShimbo氏。もっとも白雪のように透き通った肌を焼く気はしなかったので、「まあ、いいけどね」とそのアナウンスを聞き流していたのだという」。

 ホテルに着いたのは17時前。時間もたっぷりあったので海でも見学に行くかと出かけたShimbo氏であったが、老若男女が海で楽しそうに遊んでいるのにつられて、ついつい浜辺に降り立ったのだという。そうして、ズボンをめくり海に入ると気分はもう若大将。上着を脱ぎ捨てると、手にギターを持つ真似をして歌い出す始末。そうして、目の前を通った若いカップルに「ギターを持ってきてくれないか!」とお願い。怪訝そうなカップルに「若大将、若大将、エ~と、young shogun わかる!」とまくし立てたShimbo氏。けれど相手にされず「まったく若大将もわからないなんて、近ごろの若い奴はてんで話しにならない」とおかんむり状態だったのだという。

 その後、20曲ほど歌い続けていると、やがて空は暗くなり、もう浜辺にはShimbo氏一人。せっかくいい気分でいたShimbo氏であったが、そろそろ帰らなければと思い、水を買おうと立ち寄った店で、各種オイルサーディンや牡蠣といった缶詰や生ハムを発見。ビールも売っていたので、大量に買い込み、一人ホテルに戻り、地中海の似合う若大将の自分に乾杯していたのだという。「やっぱり俺って日本海より地中海派?」と納得顔のShimbo氏。随分と貧乏くさい若大将だと、きっとハーブたちなら突込みを入れていたことだろうが。

今週のおまけ

幸せだな~。僕は海に居るときが一番幸せなんだ