風のささやき

Shimbo氏、夏の終わりに思う。赤とんぼは夕日に燃えてと。

(夏の終わりのちょっとシリアスモード版)

 8月が終ろうとしている。子供たちの長い夏休みも終る。そんな夏休みとはだいぶ前から関係をなくしているのに、感傷的な気分を覚えるShimbo氏。「どこか秋めいた風が木々の梢をくすぐるからさ」と寂しげに笑うShimbo氏は、自分の中に眠る遠い記憶をまさぐっていた。

 幼い頃、Shimbo氏は故郷のY県で夏休みを過ごすのが常だった。大好きな祖父と祖母のいる土地で、手足を真っ黒に駆け回るのだった。楽しくてしかたない毎日。けれど、その楽しさの分だけ、夏休みの終わりはどこか寂しく、東京に帰る前には決まって部屋の片隅で泣いているShimbo氏がいた。

 あれもそんな東京に帰る少し前のことだった。Shimbo氏は寂しさに一人とりとめもなく歩き、川原に辿りついた。時刻は夕刻、川面は炎を流したような紅に染まり、すすきが夏にさよならを告げるように、ゆっくり揺れていた。
 
 そんなShimbo氏のまわりには、無数の赤とんぼが透明な羽を空に打ちつけていた。夏の終わりの真っ赤な装い。そんな赤とんぼを追いShimbo氏が空を眺めると、赤とんぼたちは、次々と夕日に交わり、燃え尽きるように溶けていく。まるで命を高めすぎて、燃え尽きてしまうかのように。
「夏の真っ赤な夕焼けは、赤とんぼの色」そうつぶやくShimbo氏。どんな小さき者でも、与えられた命を高ぶらせずにはいられないことに、限りある生の切なさを思ったという。

 夏の終わりの日、急にハーブたちに優しくなるShimbo氏。気味が悪いというハーブたちにも、Shimbo氏はどこか寂しげに笑ってみせた。

今週のおまけ

ママ、早く赤とんぼ食べたい!