中華人民共和国/新彊ウイグル自治区
烏魯木斉市
烏魯木斉
Wulumuqi
(2007.9.21〜22)
ウルムチ
旅館(ホテル)の店先に駱駝が繋がれ窓から赤い光が洩れる馬糞の臭いが漂う異国情緒豊かなユウラシア大陸の大草原の都市である。
なんて幻想を抱いたがそれはまったくの見当違い・・・新彊ウイグル自治区の首府であるウルムチは高層ビルが建ち並び自動車が溢れる大都会だったのだ。
紅山(虎頭峰)から見た中心街
この左手にボゴダ山の峰々が見える
トルファンからウルムチへ
トルファンからウルムチへ向うハイウェーを天山山脈の間をぬって行く。やがて日は天山の峰に傾き塩湖は光を反射して白く光る。だんだんに風が強くなる。バスの進行を危うくするほど横殴りの風が絶え間なく吹く。風が吹きやまないという谷がここにあり、ボゴダ峰を背景に無数の風車が羽根を回し続けていた。やがて道は夕暮れた白い都ウルムチへとたどり着いていった。
天山山脈の風を受ける風車群
日暮れにウルムチへ着いた。ウルムチとはウイグル語で美しい牧場という意味である。名前だけが自動車が溢れるビルの林立するこの都が遊牧民の土地である証なのである。紅旗路にある城市大酒店3階の平政という日本料理店で食卓を囲んだころは街はユーラシアの闇につつまれていた。
ウルムチの朝
あした宿を出て散歩した。新彊大酒店を出ると前を新華北路が伸びその先にこんもりとした紅山が見える。そこが最初に見物する紅山公園である。
禿山で赤い岩を剥き出した禿山は紅山を称されたが、今は緑が生い茂るウルムチ一の公園である。頂上に紅山宝塔が立ちウルムチのシンボルとなっている。
紅山公園
小高い丘の公園はサルビアやカンナ、バラなどが色鮮やか咲いていた。朝早くからここに市民が集まって太極拳や剣の舞い、扇の舞いなど舞踊で身体を動かしている。また琵琶を弾くものや書を練習するものも見える。ここ辺境の都ウルムチでも中国のどこの都市でも見られる定番の公園風景が見られるのである。
青空に赤い紅山宝塔(鎮龍塔)
断崖から見下ろすと麓に池があり釣人がのんびりと釣り糸を垂れている。
休憩所となっている楼閣の梁の四方に孫悟空の物語が描かれている。もう少しウイグルの文化に関係のあるものがあってもよいのではないだろうかと思われた。
芭蕉扇を持った悟空
新彊ウイグル自治区博物館
シルクロードの出土品約3万点が収蔵されている。また、カザフ族、タジク族、ロシア族、タタール族、ウズベク族などの展示コーナが設けられていて諸民族の生活様式を容易に知ることができる。
ミイラの展示
ウイグル自治区で発掘されたミイラが展示してある。3800年前の小河墓地から出土された成人女性のミイラは3800年前のヨーロッパ人種のものである。また有名な楼蘭美女もここに眠る。美女は年齢は45歳、身長152センチ、血液O型と分析されている。薄くきりっと結んだ唇、落ち窪んだ眼孔、瞼には愛らしい睫毛が残る。頭はすっぽりと帽子が被され舟形をしたポプラの木棺のなかで眠っている。
草原石人
3000年も前に草原に置かれた石人が展示されていた。この草原石人は遊牧民族の墓碑であるらしい。この石人は東方を向いて置かれたそうだ。このことにどんな意味があるのであろうか。
バサール
市内のバサールへ行った。午前中であるためか客はまだ疎らである。テントの店先に西瓜が山盛りに並べられ客を待っている。こんなたくさん売れるのかなとちょっと疑問に思った。
伝統的なバザールが現代的なショッピングモールへと変貌するのも時間の問題である。経済発展によって伝統的な良さも破壊されてしまうのはおしい。
経済発展によって街も住む人も変化する。伝統的な民族の生活様式もやがて棄てられ今様に標準化されてしまう。それは現代版漢化ということであろうか。時代の圧力を受けてマニ教から仏教へ、仏教からイスラム教へと柔軟に変化してきたウイグルは経済発展の風を受けている。
(ウルムチ完)
今回の旅はいままでの中国の旅と違った感じを持った。そこが遊牧民の土地だからかも知れない。遊牧民族と農耕民族が衝突と融和を繰り返す土地。今でも騎馬民族の誇りが受け継がれている土地。その物語の大劇場がシルク古道であるのではなかろうか。
(シルク古道の旅完)
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