中華人民共和国/遼寧省/吉林省/黒龍江省
中国東三省国境の旅
Dong san sheng guojing
(2008.7.8〜20)
初夏に東三省の遺跡と中国と北朝鮮の国境を見てまわりました。
長白山(Chang bai shan)
東三省と朝鮮の国境付近に連なる長白山地の中心に位置するのが標高2744メートルの長白山である。ここ長白山は東北地方、朝鮮半島のひとびとの信仰の山である。頂上は16もの峰峰に囲まれ真中に面積9.7平方キロメートル、水深373メートルの天池と称するカルデラ湖がある。天池の湖水は長白瀑布で滝となって落ちて下り、松花江、図門江、鴨緑江の源流となっている。
西と北の登山コース
中国側から長白山への登山コースは西麓と北麓のニ方向がある。両方ともに山麓に山門が設置されていて登山者はここで専用のシャトルバスに乗り換えて登っていく。
(西門コース)
西側の西大門は標高995メートルにある。ここでシャトルバスに乗り換え急な坂道を登っていくとシャトルバスの駐車場がある。ここから山頂までは徒歩となる。高山植物を見ながら階段の道を1236段ほど登ると天池の縁へ到着する。頂上は狭く天池を巡る歩道はないが国境線が走っているので国境にこだわる人は西門コースを登る必要がある。また、こちらは高山植物が自生しているので花も楽しめる。
(北門コース)
北側の北大門の施設は西よりは立派である。大門からシャトルバスのガイドの案内も上手い。シャトルバスの終点で4WDのジープに乗り換えて羊腸たる急坂道を猛スピードで登る。こちらのコースは峻立する奇岩をぬって天池の縁を歩くことができて十分天池の風景を堪能できる。時間がなくてどちらか一つのコースを選ぶのであれば北門コースがよいのではないだろうか。
| 北門から登った天池の風景 | 長白山天池 |
| 対岸は朝鮮である。空は青青く澄み渡り雲が悠悠と浮かんでいた。湖水は空に染まり一層青く、そそり立つミ峰峰は湖水に映りいっそう険しく天池を囲む。素晴らしい天候が授かったことにこころより感謝!! 天池の広さは約10平方キロメートルで日本の摩周湖の19平方キロメートルより小さいが深度は373メートルと摩周湖の211メートルを凌ぎ田沢湖の423メートルに迫る。 標高2189.1メートルに浮かぶ湖水は神秘さの象徴であるが、裾のに広がる原生林の雄大さにも神心の悠久さを感じる。 |
![]() |
長白山天池国境
西門コースの中国朝鮮国境
西門から天池をめざした日は昨日の雨上がりで空は雲で覆われ視界がきかなかったが、だんだん空が晴れ天池に到着したときには雲が消え湖水を取巻く険しい峰峰も湖水もくっきりと姿を現わした。
| 国境は一本の杭と白い柵で中国と朝鮮を分けていた。中国側の山頂は狭く観光客がごったがえしていた。なぜかこの白い柵が倒れ観光客はこの柵の内側(朝鮮側)の断崖のへりまで進み素晴らしい眺めを堪能していた。しばらくする監視員の注意で観光客は中国側へ推し戻され倒されていた柵が立てられた。このとき観光客の中にいた私も正式には朝鮮へ行ったことにならないが、朝鮮の土を踏んだことにはなったのであった。 |
![]() |
| 国境の杭で記念写真 | |
![]() |
国境を示す杭を挟んで記念写真を撮る環境客の姿が絶えない。中国5と書かれた面の反対側には朝鮮文字が書かれている。 |
長白山瀑布
天池は周囲を山で囲まれているが唯一北側に口があり湖水が流れ出している。天池から1250メートル下ったところで滝となって落ちている。この滝が長白山瀑布で落差は68メートルある。
| 長白山を訪れるひとは断然朝鮮人が多い。彼らは素足となり石に腰を下して流れに足を入れている。 | ![]() |
長白山周辺
撫松で前泊
集安から303号線で通化までもどり、通化から今日の宿泊地である撫松まで201号線を通化〜白山〜江源〜撫松と車を進める予定でした。白山のガソリンスタンドで給油して出発したらすぐに道路工事に遭遇してしまい201号線は通行止めになっていました。やむなく予定を変更して江源より204号線に迂回し靖宇を経由して撫松へ向いました。江源からは高原を走った。その頃から空が暗くなり悪いことに雨も降り出してしまった。車窓から農村風景を眺めると一階建ての建物が軒を寄せ合い集落をなし、畑は山の頂上までずっととうもろこし畑が続いているのが印象に残った。
撫松の朝市
ホテルから長白山西麓へ出発する。町の中心部の十字路は日曜の朝ということで朝市がたち買い物客でごったがえしていた。車は人の勢いに圧されて立ち往生し時間を浪費した。
中国では今でもこのような人盛りを目にすることがたびたびある。私の田舎でも過っては暮市、安市、初市などたち人盛りがして華やかな街を演じた時期があったのであるが、このような中国の風景に行き当たると思わず目を細めて眺めとても懐かしく思うのは私だけであろうか。
周辺の道(dao)という地名について
長白山近傍で道(という漢字を使った地名が並んでいるところがある。谷に沿っては四道溝、六道溝、八道溝、十二道溝などがあり、河に沿っては頭道白河、ニ道白河、三道白河などがある。
西門からニ道白河へ
西麓を見て西門をでて本日の宿泊場所のニ道白河へ向う。原始林を貫く道は工事中であるのに加え昨日の雨でぬかるんで最悪の状況であった。でこぼこのぬかるみに火山岩をみんなで運んで詰めて通過したり、目の前を走るダンプが車輪を泥に取られ立ち往生、ここでも1時間ほどストップしまった。ダンプは自らの脱出を諦め作業が頓挫したので全員でまた火山岩を道脇の泥に放り込み迂回路を確保してようやく通過できた。合計ロスタイム1時間半前後、広大な中国ではあまり気にならない時間の滞留である。
| ニ道白河十字路 | |
![]() |
ホテルは十字路の角にあった。ホテルの窓から眺めると西部の街のような雰囲気がただよっていた。目の前にスーパーマーケット(超市)があるが人の出入りは少なく歩くひとも疎らである。しかし朝はひとびとが集りミュージックを流してにぎやかに体操をしていた。北京や江南で見られるような社交ダンスのようなことままだここでは見あたらない。 ホテルの玄関先にでて日本のラジオ体操の第一、第二をやって北麓登山のため身体をほぐした。 |
自然博物館
長白山の自然を集めた博物館が市内にある。長白山の山麓の自然を植物、動物などを切り口にして体系的に知ることができた。長白山は東経127度38分〜128度16分、北緯41度42分〜42度25分、海抜720〜2691メートル。生物地理は中国東北〜日本混交林と掲示されていた。松本清張の小説「神々の乱心」のなかに木材など森林資源やテンなどの毛皮類など満州国時代の長白山の自然についての記述がある。現在においても原始林は広がりを見せここに生息する動物の様々であるだろう。興味を持ったの狼熊鹿虎豹など獣類、武昌魚など魚類や丹頂など鳥類の剥製及び麝香、熊胆などの産品など自然の豊富さである。
| 狼の剥製 |
![]() |
長白山の国境については取外しできる木製の衝立によって引かれている現状からしてミリメートルまで規定するような固定されたせんではなかったのがおもしろく感じた。隣人との境であってもブロックベ塀であったり金属のフェンスであったり固定されているが、ここは移動式のつい立てなのである。誰がつい立をどかしたてくれたのか不明であったが、わたしも観光客の波におされて自然と朝鮮領へに入ってしまったことも公式には言えないことなのであるがそうなのである。民族共通の祖神の山ということでそういうふうになっているのか理由はわからなかった。
長白瀑布では流れに足を入れる観光客の姿が見えた。朝鮮人かどうか人種は不明であったが、足を流れにつけるということは身を清めるところまではいかなあいだろうな、だからそれは祖神にもっと近づきたいとの現れであるのではなかろうか、その気持ちをはかりかねた私は石に腰を下して流れに足をつけてみるとそういう考えがまとまったのでした。
つづく 中華人民共和国へ戻る