中華人民共和国/甘粛省
永靖県
炳霊寺石窟

Yongjingxian
Binglingsishiku
(2007.9.16)
蘭州市街よりバスで炳霊寺石窟へ向う。
劉家峡ダムまでバスで約2時間かかる。道は険しい断崖の谷底を曲がりくねって登っていく。見上げると斜面は真っ青な空を突き刺す頂きへと続き、今にでも地すべりを起こし崩れてくるような無数の亀裂が横に走りっている。その模様は人が切り開いた九十九折りの山道のようにも見える。道は峠を越え下りとなった。急な斜面に人家が見えはじめ、ようやく劉家峡水庫(ダム)に到着した。このダムは黄河最上流のダムであり水は青く澄んでいた。澄んだ黄河を見たのははじめてである。

劉家峡ダムをボートで行く
7人乗りのモータボートに乗りダム湖の上流にある炳霊寺へ向う。ダムは黄河の水を満々とたたえている。ダムの両岸は遠くに険しい峰峰が連なり紅い帯のような断崖が湖面に落ち、空には白雲がわき峰を覆っている。

ボートの旅はすこぶる快適である。途中から湖面が黄色に変わり、両岸が迫ってくる。ここが劉家峡というところなのであろう。武陵源を凌ぐような奇岩がそそり立っていた。やがて断崖に炳霊寺という朱色の文字が見えてくる。右側の建物は道教寺院である。

炳霊寺船着場
船着場は黄河の流れで崩されないように分厚いコンクリートで防御されている。

炳霊寺石窟
船着場で下船し頑丈なコンクリートの階段を登ると参道があり最近建てたと思われる山門風の入り口へと続く。そそり立った奇岩が迎え真新しい歩道は谷間の石窟へとわれわれをいざなう。しばらく行くと小さな門がありくぐると石窟が並んでいる。

炳霊寺の建物はすでに失われ、断崖に183窟が現存する。代表的なものは高さ27メートルもある唐代の弥勒大仏であるが、大窟は見あたらず小規模な窟が多い。大仏の頭上にある自然の洞窟を利用した第169窟には西秦の建弘5年の銘があり、すでに424年ごろには盛んに開鑿が行われていたと思われる。
石窟区に入ると入り口から番号を付されて小窟が並んでいる。いずれも三尊仏や七尊仏が安置されている。小窟であっても私ひとりの財力ではとても製作は無理であろう。当時のひとびとにとっても寄進の額は決して小額ではなかったと思う。
第3窟〜第9窟
最初の第9窟までは撮影禁止である。
第3窟は唐代の窟で三尊仏を安置、第5窟は仏坐像を中心とした七尊仏、第6窟は北魏代の窟で七尊仏像を安置し樹下説法図を現わす、第7窟は菩薩像を安置、第8屈は五尊仏に壁画が残る。
| 第10窟 観音像のような仏立像である。手は転法輪印(説法印)をむすび、後壁には頭光背光の朱色が残っている。お参りする人々に安らぎをあたえてきたことであろう、大きなまあるい顔が印象的である。 |
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第11窟
岩を荒彫りしたような3体の仏像が並ぶ。いずれも色は剥げ落ち岩をあらわにしている。
11窟三尊仏立像

| 第22窟 五尊仏坐立像 裳懸坐に結跏趺坐する如来を中心にして二弟子、ニ脇待菩薩の五尊像であるが、ニ弟子の像は失われている。蓮の花の頭光の緑色と、壁の上ほどに浮ぶ蓮の茎に浮ぶ化生ニ仏が印象的である。 |
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23窟 五尊仏坐立像

第28窟
裳懸坐に結跏趺坐する如来を中心にして二弟子、ニ脇待菩薩、ニ天王が立つ七尊像である。壁に描かれた双樹や頭上には宇宙船のような宝蓋と七雲のシルエットが印象的である。

第46窟
椅子に倚坐する如来を中心にして二弟子、ニ脇待菩薩、ニ天王が立つ。樹下説法図をあらわしているのか、壁に描かれた双樹や頭上の花のような雲のような模様が印象的である。
46窟五尊仏坐立像

第64窟
円形の台座に立つ菩薩立像を中心に首と腰をひねったニ菩薩が立ち、守護神天王が邪気を踏みつけて魔物が入るのを防いでいる。
64窟五尊仏立像

第86窟
椅子に倚坐する釈迦如来を中心にして二弟子、ニ脇待菩薩が立つ。壁に描かれた光背や頭上の宝蓋は繊細に描かれており翡翠の緑色が残り印象的だ。
86窟五尊仏坐立像

第134窟
結跏趺坐する三体の仏像、そのあいだに双髷の脇待菩薩が立つ。
134窟三仏坐像

大仏
炳霊寺石窟を代表する大仏さまである。大仏といえば弥勒仏と相場はきまっているので弥勒仏であろう。台座にどうどうと倚坐する形は楽山大仏とおなじである。両肩のうわっぱりの文様や台座にたれる衣文などが印象的である。
弥勒大仏

第169窟
臨夏市に遷都して全盛期を迎えた西秦(西暦420年ごろ)代に造営された。鮮卑族の乞伏氏は厚く仏教を信奉したと思われる。仏像はグプタ仏の影響を受けた西域塑像の様式である。
仏立像

シルク古道の旅、先ずは炳霊寺石窟をまとめてみました。最初の撮影禁止の窟はメモをきちっととる時間もなく、地元で資料の購入を失したので、うまくまとめることができませんでした。また、撮影できた窟も自己流の解釈でまとめましたのであやしい説明になっているかも知れませんので了解願います。
しばらくは毎月シルク古道の旅を載せていきます。
中国は行くところ行く所で新たなおもしろさが発見できます。
次回もお楽しみに
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