Subject:        TFP-XXXXIII

  もうかれこれ20年にはなるだろうか。最初に引き受けたとき、じゃじゃ馬を扱うような気分であり、『これは手に負えんな』とも思ってしまったものだ。ところがどうだ。今日では私を称える信者の群れが私の後ろをついてくるようにまでなってしまった。
  『支配人!私にチャンスを頂けませんか?』と、3番目に並んでいるフランキー為谷の一言で私は空にうかぶ雲のベッドから叩き起こされた起こされた気分になった。
『えーっと君は、、フランク君か。うーむ今日はそんな気分じゃないなぁ。そこのポリアンナと切磋琢磨するというのはどうかね?』
と、私は作り笑顔を悟られないよう慎重にかつ大胆に、5番目に並んでいる玲奈を指差し、為谷と玲奈を順に見やって、お互いを意識させるようにした。

  頬を赤める玲奈に向かって為谷は、さも「あ、居たの?」と言いたげな表情を見せる。玲奈は恥ずかしげに下を向おり、左右の人差し指がぶつからないようにくるくる回すのに夢中になっている様子で、為谷の一瞥にはまったく気がついていない。
『・・・・・ゃない!?』
『ちょ・・・じゃない!?
ちょっと、ちょっと失礼じゃなぁい!?

  どこから現れたのか、見たことも無い女性が列の奥から大声を上げてやってきた。喧々囂々としているが、覚醒し切れていない私には何をもめているのか皆目検討がつかない。しかもその女性の持つスーパーの袋から飛び出している葱の臭いが目にしみる。
『ちょっとあなた、なぁんですか?今の態度は!』
私に怒っているらしい。
『少なくともコチラ、どういう関係かわかりませんけど、この人、女性を蔑視してませんか?ちゃんと見てました?』
どうやら、為谷の態度が気に食わなかったようだ。
『それを黙ってみているなんて、しかもちょっと含み笑いなんてしてませんでした?』
おっと、為谷と私が標的らしい。

  何が起こったのか理解できない玲奈はオロオロしている。
『あなたもあなただけど、今は、』と、その女性。『私が言っているのは、この男性とあちらの偉そうにしている人!』
当たった。今日はいい日かもしれない。いや、違う本質はそうではない。だが、見慣れた風景だ。もう何十年もみてきた風景だ。

いかがなさいました?
1番目に並んでいたジェット渡辺の一言に振り向く女性。
『・・どうって??、、あっ!
背後から問いかけた渡辺に振り向いて応えた女性の一瞬の隙をついて、為谷が女性を羽交い絞めにした。さぁショーの始まりだ。
・・ッロッ、・・ェッロッ、・・ジェッロッ、・・ジェッロッ・・・・
『さぁ、支配人・・・』、と促す渡辺。
生血の色と死血の色のソレが私の手に宿っているのを確認し、歯をむき出して今にも飛びつきそうな女性の額に向かって一気に振り下ろした。。。。
一瞬の静寂の後、『・・てっきり、的外れだと・・・思ったのですが。。』と、渡辺が目を丸くしている。
未熟者!そうなると、お前たちの様に名前を聞かねばならんだろうが!』
絶叫の後に気絶した女性の額には、大きく
「たわし」
と、遊び心で黒い影をつけた赤い立体的な文字を刻んでおいた。自分の機転のよさに満足したのだった。




2003 の作品。。。