全長句切字容認五吟歌仙・鶏頭花の巻

 

   鶏頭花夜の一部が乾きけり     朝比古

     過剰なる輪郭揺るる秋思かな   四童

   金色のパゴタ聳へて月天心     振り子

     姫椿支那の茶碗にほくろあり    守

   春蘭や雲涌き初むる地の湿り     百花

     うららかに馬に見られし頭頂かな  子

ウ  嘴をすぼめ巣箱に入りにけり      古

     初夏の夢わさわさと乗車口     守

   丸ビルに事務所を構へ雲の峰      童

     秋鯵のぜいごのことに光りをり   花

   電球を替へられぬ母黄落期       古

     隠し子に鵙鳴く空の匂ひかな    子

   冬満月おひつじ座からおうし座へ    花

     真向ひに金木犀茶の如きひと    守

   朧夜の真珠のいびつ愛でてをり     古

     見習が歯石を削る鳥曇       童

   花茣蓙に兄弟子もなほ身の太く     守

     かさぶたの膝こつくりと遠列車   子

ナオ 筑波嶺や雲ひとつなき夕茜       花

     昨日から二人で暮らす学生寮    童

   奥付に元号三つ明易し         古

     明治通りを昭和の妖怪火の如く   守

   お手植ゑの松を正門農学校       花

     流暢なフランドンなる豚の舌    子

   嘘つきと新蕎麦啜る麓かな       童

     寄り道のあとの道草豊の秋     古

   柚子の香や楊枝の手元見てをりぬ    花

     良き人に月引力の身を任せ     守

   君抜きの湯舟の中へ棹さしぬ      子

     粉雪の滑りてマリア像の胸     古

ナウ 始まりは天地無用の御空かな      童

     東西に国旗突き出る将校舎     子

   遠くより莫迦正直な笛太鼓       守

     騙し絵のごと雛壇の続きをり    童

   花の下少女へ結ぶ蝶りぼん       花

     逃水も運河も青き離陸かな     子

 

起首2003年09月07日

満尾2004年01月29日

 

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