六吟歌仙 白南風の巻

 

   白南風や昼の海図を取り戻す       玉簾

     夢の如くに行き交ふ日傘       四童

   天金の革表紙てふ仕様にて        百花

     両手をひろげ抱へる銀河        守

   名月へ髪を梳かしてゐる花魁      朝比古

     のぼりつめればずずこの鳴れり   振り子

ウ  引金を引いては発条の心地よき       童

     触覚置いてロンド踊らむ        簾

   草陰に物証ありし蝶の里          守

     佐保姫の履く水のぽつくり       花

   おぼろ夜に足枷のある遊びして       子

     抱きあひつつ凍蝶となる        古

   銀色のスプーンで削る冬の月        簾

     をのこの付けるをんなの名前      花

   羊水にあるごと象の耳うごき        古

     おほいに怒る早川雪州         童

   白刃の坂駆けのぼる花吹雪         守

     トランペットに蜜蜂止まり       子

ナオ ときどきは唇舐めて甘茶仏         花

     マニ車手に蜻蛉生るる         簾

   露けしき白木の材に墨を打ち        童

     死語つぶやきて粧ふ山河        古

   ブンガワン・ソロを歌ひて町なかへ     子

     ヨウグルト鉢刺す十字星        守

   蓑笠子ゆらりと水にうららけし       簾

     雨の子の抱くこごめなでしこ      古

   遍路杖母へあづけて寄り道の        花

     野草の名前けものに尋ね        守

   なみなみと醤油をかけて月に吠える     童

     鵙の高音にしづまる争議        子

ナウ 血の色の林檎螺旋に剥き続け        古

     臍のをはりに絡む知恵の輪       簾

   流氷の隙間猟師の同心円          守

     催眠術のやうな春昼          童

   大過去も過去も落花のただ中に       子

     春を惜しみて瞬ける星         花

 

起首 2003年05月15日

満尾 2003年09月06日

 

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