六吟歌仙 牡丹雪の巻
 
   牡丹雪窓に四隅のありにけり    振り子
     隣家に消ゆる傘を振るひと   四 童
   春の炉の髯の長短見比べて     百 花
     風船を剃る練習の日々     な む
   朧夜のういらう今日も泣いてをり  東 人
     月下の椅子の影におどろく   紫 野
ウ  六本の足くろがねの蟋蟀に       童
     色無き風の巣鴨プリズン      子
   再会を誓ふ筆先触れ散りて       む
     霜踏む尼の後ろ髪ひく       花
   曼陀羅に融けて暮れゆく息ふたつ    野
     人数分の皿を揃へて        人
   玻璃超しのプールの月の割れもせず   花
     飛行船にて目指す国境       野
   ユーコンの河きしきしと解氷す     人
     親潮に乗り春を急ぎて       童
   輪に入れば見知らぬ同士花見酒     む
     文殊菩薩の性別を訊く       子
ナオ ねぢ抜かれ二度と歌はぬオルゴール   野
     三行半を湯冷め心地に       花
   神棚の高さで直す冬の闇        童
     カインの裔の労働意欲       人
   月曜の床屋にバンド集まりて      子
     また増えてゐる金魚のお墓     む
   絵日記の四枚目より白紙にて      花
     グルメな猿の健康診断       人
   愛人をふはり宥めるすべもなし     む
     ながながし夜を罪のくちびる    野
   ダブリンに馬蹄のひびく月明かり    子
     秋さらに澄み磁力渦巻く      童
ナウ 枯野へと地軸傾く音すこし       花
     シート外せば白き母子像      む
   唖蝉のすずしき幹に待つてをり     童
     水際に沿ふて回廊を来る      子
   島ひとつおほひつくして花吹雪     人
     格子を洩るる猫の産声       野
 
起首 2003年01月03日
満尾 2003年03月23日
 
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