七吟歌仙 氷菓の巻

 

     氷菓食む砂丘に遠く家族かな    天 気

       村の広さで過ぎる夕立     四 童

     寸劇はカンブリア紀でとどまりて  振り子

       毛づくろひする三毛猫の鈴   詠 犬

     つま弾きの指先も見ず月も見ず   玉 簾

       玉蜀黍の髭の反乱       朝比古

  ウ  花野へのバスむずむずと揺れてをり な む

       かはいい掏摸に心奪はる      気

     次の手を考へてゐる初デート      犬

       恋の破魔矢を担いで帰る      子

     待春のきりきり痛む十二指腸      古

       みちかけまはるいかれ帽子屋    簾

     チェス盤に駒散らばつて夏の月     む

       機械の音で桑の葉を食む      童

     春雷を連れて旅する繻子の靴      気

       ボンドガールの散らす花屑     古

     夏の河一寸法師椀に乗り        犬

       箸先でみる恋の湯加減       む

  ナオ ものおもふ油女の身に火がついて    簾

       片寄りがちに落葉踏みくる     子

     銃声の響き尽くして眠る山       童

       リッキー・ネルソン口笛を吹く   犬

     ひよつとこの乗り込んでくる冷房車   古

       灰になる頃まほらに着いて     気

     奥津城を撫でる右手は痴情的      子

       阿佐田哲也のナルコレプシー    む

     抱擁の解けず一番鶏の鳴く       犬

       胡桃の舟はみづうみの上      簾

     月にゐる人形いつも横向きで      子

       泡を吹いたり泡を食つたり     童

  ナウ 筒井堂スラプスティック創世記     む

       聞き耳頭巾紛れ込む壁       簾

     ベルリンのうつた姫から来し手紙    古

       焼けばおほいに霞ひろがり     童

     三界が一に溶け合ふ花の雲       気

       緑雨に光る半島の先        子

 

                        起首 2002年6月27日

                        満尾 2002年9月13日

 

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