七吟歌仙 春土の巻

 

   あたらしきものの光るや春の土    玉 簾

     木々の形をなせる囀       四 童

   風船はマラッカ海峡通過して     東 人

     ガムラン色の霧に誘はる       簾

   月見酒酌みて詩人と哲学者      朝比古

     耳傾けるりんだうの花        簾

ウ  けんけんの足を替へかへ夏の浜      童

     ふるさと遠く亀とたはむる    不 孤

   近松を伴ひくぐる鉄条網       振り子

     旱星降るベツレヘムなり       簾

   雪のごと讃美歌とめどなく青く      童

     夜の国道赤ランプ点く        人

   れこうどの流るるままに夏の月      簾

     ドアの数だけくちづけの音    な む

   半眼に後朝の背を見送れば        孤

     おはぐろ池に映りし大火       古

   壺に散る骨散る白き花明り        む

     底から生るるてふてふの影      子

ナオ うららかにムスリムの売る瑠璃瓦     人

     儀式のやうな汝への愛撫       古

   連れてゐるドーベルマンの尾は立ちて   子

     拾ひし手帳に某国事情        孤

   くらがりでひそひそと喰ふとろろ飯    む

     隣は太る秋の妖怪          童

   星飛んで少女のシャドーボクシング    古

     黒き手袋印鑑を押す         人

   ほんたうにあたしでいいの目を見てよ   孤

     あやとりしてる四本の脚       子

   月光に濡れエルメスの装鞍所       む

     アラモの砦唐黍を焼く        人

ナウ 秋澄みて上の歯消ゆる縁の下       童

     をはることなきのぞきからくり    む

   納豆の糸を伸ばせる異母兄弟       古

     五人囃子に同じ眉あり        簾

   花の香の唇すこし開きたる        子

     たゆたふばかり春暁の夢       孤

 

                        起首2002年4月15日

                        満尾2002年6月17日

 

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