七吟歌仙 万歳の巻
四辻で万歳をする寒さかな 振り子
いつしか雪の覆ふ人界 四 童
地下室の赤き扉は放たれて 東 人
耳に今でもチターの響き うさぎ
音楽の母が身籠もる後の月 童
三つ子に林檎ひとつずつ 子
ウ 長き夜の箪笥の奥は魔女の国 ぎ
鏡の中に恋文を書く 朝比古
ししむらへゆっくり降ろす縄梯子 人
二枚の舌でほどく結び目 童
英国の長距離ランナー転がりて 子
草の匂ひを深く吸ひこむ 掃除機
ホーミーに満ち始めたる夏の月 古
トルキスタンへ汗血馬駆く 人
伝説の指輪の石は海の青 機
木立ざわめく王子の帰還 ぎ
目に見ゆる風を落花と言ひけらし 童
笛吹くやうに巣箱をかける 古
ナオ 春昼の父はオーバーオール穿き ぎ
僅かに映える虹の根の国 子
ゆるゆると泉に沈む銀の匙 古
コップ一杯水をください 人
火を点けて煙草を渡す白き指 機
貝殻色の瞳に変はる 童
大聖堂絵筆銜へしボッティチェリ 詠犬
新郎新婦へ鐘鳴りつづく 機
シーバスに断髪力士乗り込みて 人
玻璃の杯何で満たさう ぎ
月光の庭には嘘を入れる穴 機
ケーキのやうな男と女 古
ナウ 夥し葉摺れ鎖骨の上下して 子
腕立て伏せを軽く百回 犬
萎え易きものを包めり春帽子 ぎ
岬廻れば黄砂降りくる 人
花万朶大陸にある火の力 古
夜を灯して果てぬ組曲 機
起首2002年1月9日
満尾2002年3月3日
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