六吟歌仙 鏡台の巻

 

   鏡台にかの香水の名残かな       雨香
     梅雨寒のやや固き抽斗       四童
   からつぽの胃袋のまま海を見て     由季
     雁落とす錠前ひとつ         香
   昇りくる月に尺金あててをり      藤幹
     あたらしき家あたらしき米      童
ウ  計算の藁半紙には野の香り        幹
     襞の畳めぬ絽の法衣にて      秀彦
   ゆるめれば人魚と化する小鉤留め     幹
     ながるる指に髪をゆだねて    水星人
   風花に媚薬の混じる隠岐島        季
     初蝶群れて崩す波の端        彦
   春月のクレヨンの線おほまかに      人
     絵本の外へ進む機関車        香
   短夜の拳闘になき延長戦         彦
     お花畑で休む筋肉          季
   ふたの湯を角度変へつつ回し飲み     童
     煙のもとに集ふ人々         人
ナオ 御利益はまんべんなくと護摩の壇     幹
     行者部屋には強き冷房        彦
   ぎんいろの風たをやかに夜の秋      人
     コイントスして西瓜番決め      季
   国境の柵かるがると鹿来る        童
     指で探りし鶏頭の襞         香
   祭日の仏の守りは休みたし        彦
     ふところ深く熟れた付け文      幹
   稲の中ふたりほどよき身長差       季
     釣瓶落しを見てゐる手と手      人
   割り箸を割る前に見る月の舟       香
     まこと正しき着陸姿勢        童
ナウ 骨盤をゆるめて聖歌歌ひだす       季
     からんころんと転がる冬日      幹
   男めく妻の指先葱を盛る         彦
     笑ひ出したる山といふ山       童
   ウクレレの小さき穴へ花吹雪       人
     人の如くに集ふ春雲         香

                    起首 20060618
                         満尾 20061214

 

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