九吟歌仙 店番の巻

 

   店番をしつつ初日を待ちにけり      玉簾
     近頃切らぬ門松の先         四童
   谷根千のお化け階段転がりて       雨香
     色なき風に乱歩の眼鏡        詠犬
   まだ温き椅子に集まる月あかり     朝比古
     次期社長から蟋蟀もらふ       天気
ウ  エレベーターホールに置きし冬薔薇     樹
     落ちた花弁の数で占ひ        葉月
   はじめてのキッスに気絶してしまふ     気
     わづらひ始めに齧る錠剤        香
   郷里から速達とどく朝曇        ぽぽな
     春満月へ蒸気機関車          犬
   がうがうと躑躅もパリも燃えてゐる     気
     モデル立ちして風船配り        古
   オバQの着衣の中の大図解         童
     ウランちゃんより謎の少なく      月
   裏表磨かれている花崗岩          な
     川渡り行く院殿大姉          童
ナオ はつなつの鏡の奥にゐる人よ        樹
     右と左でちがふ触感          気
   つなぎたる手と手そのままポケットに    樹
     ひひなの頬のすこし黒ずみ       古
   雪解風皆既日食崩れつつ          犬
     片目に映る菜の花畑          月
   ぺろぺろと油を舐める猫のゐて       古
     お蔵破りを決行の夜          な
   湯殿より一糸まとはず急を告げ       童
     信楽焼をためつすがめつ        気
   競売のハンマーひびく窓の月        な
     鞴を踏めば揺るるコスモス       簾
ナウ 種を採る指先やがて熱を持ち        香
     くちびる寄する杯に雪         樹
   うばはれし味さがしつつ身を離し      月
     踏絵のやうな明りを点す        古
   あたらしき町に住む日の花の宴       気
     半音上がるコーラスうらら       犬

 

起首 20060101
                         満尾 20060603

 

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