六吟歌仙 珈琲香の巻

 

   珈琲の香りひろがる弥生かな      樹
     かたちのままに芽吹きをる樹々  四童
   もの好きが蝌蚪の水辺に集まりて   天気
     祝ひの席にアロエのブーケ    葉月
   高坏を手に入れ月見次郎冠者     玉簾
     CD数多鳥威したる       雨香
ウ  爽やかな畳の部屋に座り込み      月
     また叱られてばかりの句会     気
   封切れば花びら一つ落つる文      香
     夕焼色を君の鼓膜へ        簾
   暗闇が前に後ろに脈打ちて       童
     しやんと伸びたる巫の背      樹
   寒泳は月の静かの海の果て       気
     箒星撃つ手に枯尾花        簾
   広場にて利き目に映す影法師      月
     カツパドキアに薄氷踏みぬ     樹
   海越ゆる衣装に飛ばす花模様      香
     紐の理論を聞けば行く春      童
ナオ 縁側の猫を入れたる箱眼鏡       簾
     東照宮で手帖をなくす       気
   遺されし万年筆に飾文字        樹
     ロースルロイスのいろは桃色    童
   読み止しのレシピに記す安全日     香
     地雷踏む気で閨の戸を開け     気
   足裏に灯す手のひら温かき       月
     ねずみちよろりと出でし涅槃図   樹
   井戸端のたらひを満たす春の星     簾
     写真のやうに焼ける食パン     香
   動くなと言はれて人の世に残り     童
     肌を貫く一面の月         月
ナウ 折り紙の谷より出づるいぼむしり    香
     拝むかたちで落ち穂を拾ふ     気
   美以外の口実なくて屹立し       月
     登れば下りる春の山々       童
   掲げたるグラスにうつす初桜      樹
     瞼に仕舞ふ音色は朧        簾

 

起首 2005年03月14日

満尾 2005年11月24日

 

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