四吟クラシック音楽歌仙・濁り酒の巻

 

   濁り酒二十世紀のソナタかな      守 ブーレーズ「ピアノソナタ第2番」

     虫も驚く夜の音響        四童 マウリツィオ・ポリーニ

   月光の降るたび水の戯れて     あめを ドビュッシー「月の光」ラヴェル「水の戯れ」

     バックハウスの齧る黒パン    東人 ウィルヘルム・バックハウス

   フランスに於いては棒の如きもの    童 バッハ「フランス組曲」

     振りおろしたる緩急の波      守 バルトーク「オーケストラのための協奏曲」

ウ  外套の巨人の背の遠ざかる       人 マーラー「巨人」

     年玉で買ふ玩具のピアノ      を L・モーツァルト「おもちゃ交響曲」

   鉱泉に両手浸して弾きはじめ      守 グレン・グールド

     おでこの軒に汗の滴る       人 ゲンナジー・ロジェストベンスキー

   春宵の異国の門に仁王なし       童 ムソルグスキー「展覧会の絵〜キエフの大門」

     大西洋を渡る初蝶         を コルンゴルト

   いざ歌へ国連ビルといふ巣箱      人 カザルス「鳥の歌」

     友をふりたるピアノ科の美女    守 桐朋学園大学音楽学部

   その夜また月も寝息もまつしろに    を シューベルト冬の旅・第1曲「おやすみ」

     三十六の黒き鍵盤         童 ショパン「練習曲」op.10-5

   偶数の花に埋もれし闘牛士       守 ビゼー「カルメン」

     アレグレットで羊の毛刈る     人 アレグレット

ナオ 空砲にふるると揺れて春の雲      を チャイコフスキー「1812年」

     ピアノの蓋の閉まる音聴く     守 ケージ「4分33秒」

   追ひ出されオランダ人とさまよへる   童 ワーグナー「さまよえるオランダ人」

     犬かきとせむ宇宙遊泳       を ホルスト「惑星」

   息止めてしやつくり治す調律師     人 スタンウエイ専属調律師

     スフォルツァンドに慣れてしまつて 童 ハイドン「驚愕交響曲」

   手のひらにポルタートある野分中    守 ベートーヴェン「テンペスト」

     プラハ国民劇場の月        人 スメタナ「売られた花嫁」

   夜学子もやがて空飛ぶ医者となり    を ミヨー「スカラムーシュ」

     神の右手はホルンの中に      童 ホルン

   逢ひ引きの石の回廊こだまして     人 「ワーグナーとコジマ」

     ボレロで歩む助さん格さん     守 ボレロ

ナウ 熱帯を旅するときの薬箱        を ヴィラ=ロボス「ブラジル風バッハ」

     パイプオルガン天上を向き     童 アルベルト・シュバイツァー

   階梯に腰掛け語る十一月        守 武満徹「ノヴェンバーステップス」

     春の兆して大地は踊り       童 ストラヴィンスキー「春の祭典」

   いろいろの肌見せ合ふて花の宴     人 ガーシュイン「ラプソディ・イン・ブルー」

     Aの音しばし鳴りて霞みぬ     を 全楽士・全楽曲

 

起首 2004年09月27日

満尾 2005年02月24日

 

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