2012 冬
遠藤治

乗車券冬の日向に差し出せり
敗荷といふミッションを遂行す
レシートに愛の言葉や冬銀河
クリスマスツリーの森へ連れて行く
梟に肩紐のなき眼かな
歳晩や人妻の香の会議室
極月の人に戻らぬ犬あまた
敏感な把手ばかりの寒夜かな
体毛の薄き地球や寒卵
人類の最期の選挙山眠る
牛丼の並々ならぬ七日かな
日差やや低きところを冬の蝶
入母屋の雪の届かぬ壁白し
対流の一例として燗の酒
おでこから生まれた人と春隣

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