2010 冬
遠藤治

小春日のバックミラーになにもなし
行く水の碧をつらぬくもみぢ谷
吊橋を揺らす小春の彼氏かな
アナログで大きなものを冬の蔵
男とか踏もうと思ひブーツ買ふ
舟虫に似た舟の行く師走かな
仲見世の帰り冬日のまぶしかり
提灯を投げては掛ける年用意
薄ら日のけふを限りの淑気かな
坂の名のさだかならざる三日かな
松過ぎてむかし海なる町行けり
待春のだらだら坂をふるき町
被写体をあへていふなら春隣
南北の移動にはバス日脚伸ぶ
寒の夜の友の日記を訃報とす
節分のどの闇も角張つてをり

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