2009 夏
遠藤治

羅の目にもの見せる腕かな
くらやみを鮎と名づける泪かな
冷房のおほきな家の犬吠える
おのづから主賓と分かる夜涼かな
クラインの壺から注ぐ冷酒かな
丑三つの時計代りの蚊遣かな
むづかしき氷菓頼んでしまひけり
煙管吸ふ大叔父怖き夜涼かな
立ち並ぶ人のつがひの砂日傘
遊船の足で押さへる渡り板
割箸を詰込過ぎし晩夏かな
古本が私のにほひ大西日

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