2008 春
遠藤治

春宵やマシンルームに鉄格子
筺体に抽斗のある春灯
引き戻すケーブル長し春の夜
ケーブルを束ねて春の盛りなり
埋め殺す通信機器や春の闇
船に立つ船長の妻花の冷え
船行きてしづまるまでの春の河
ごろごろと舞台を回す花の雨
桜蘂濡れゆき熱の色帯びぬ
骨の傘律儀に持ちて花嵐
はらわたに春の水満ち春の鯉

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