2008 秋
遠藤治

谷間から胸の始まる秋麗
吹抜に秋の光をしつらへる
水平な運動多き踊かな
遠近法もちゐ自転車せまる秋
二人して秋の電波を飛ばしけり
色鳥や怒髪のごとき避雷針
全身が秋黴雨なる人に逢ふ
銅像に静脈あらは鰯雲
試合果て応援も果つ秋茜
秋の夜のはじまつてゐる犬の舌
虫の音の紐ある本に挿す栞
茎のある緑の酒や虫の夜
悉達多提婆達多と飛蝗採る
やや白き林檎のやうに歳をとる

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