2007 夏
遠藤治

たくさんの乳房によりて夏来る
はつなつや三段低き船着場
白南風やこの棚一冊五十円
顔中を駆使し薄暑の小龍包
バスーンの角度ただしき薄暑光
海芋咲く宮尾すすむのごとく咲く
思ひ出し笑ひまた卯の花腐し
畜生の道を急ぐや五月闇
幕末の京都のやうな梅雨の夜
昼顔のやうに仕事をしてゐたる
夏草の始まつてゐる道路かな
夜濯ぎの水のつながるうす明り
やや高き麦酒を買つてだらだらす
ありとある甘き香あつめ日焼止
少年が必ず落ちるゴムボート
波乗りの姿勢のままに呑まれけり
焼きそばを重ね持ちたるビキニかな
はみ出して回るLP夏の恋

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