ツキノワグマと私たちのこれからは?

泳ぐツキノワグマ写真 東京のクマたちは,人々の生活空間に意外と近いところで暮らしていることがわかりました.また大きな力を持っているために,まれには人々と摩擦も起こしています.
 もし私たちが絶対に100%の安全を求めるのであれば,身近にいるクマたちをすべて駆除してしまうというのも一つの方法でしょう. けれどそれ以外に方法はないのでしょうか? もしそこにいるというだけで,そうしたクマたちをすべて駆除してしまうと,どうなるでしょうか.奥多摩のクマたちは,里付近から奥山までを広く生活に利用していることが分かってきました.したがって里付近の駆除であっても,奥山からクマがいなくなるかもしれません.また先に述べたように奥多摩からクマがいなくなれば,他の地域とのクマの交流の回廊がなくなることを意味します.
 最近は日本の各地でも,人々との間で問題を起こしたり,あるいは問題を起こしそうなクマを生け捕りして,カプサイシンスプレーなどを使って”お仕置き”を行い,人間の怖さを教えた後に,奥山へ再び放すというような試みもされるようになり,成果をあげてきています.
 東京のクマたちは,都県あるいは市町村境界を自由に行き来しています.それぞれの自治体が協力しあっての,総合的な管理プログラムをつくるための試みが今一番求められそうです.そしてそのためには,私たち一人一人が,クマをはじめとする東京の自然に目を向けることがなにより必要なのではないでしょうか.

写真:奥多摩湖を泳ぎ渡るツキノワグマ(1995年10月23日渡辺誠司氏撮影)

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