ツキノワグマと人間のトラブルは?

 奥多摩山地には昔から人々が生活しており,また最近はレクレーションの場としてもよく利用されています.人々とクマの間のかかわりはどうなっているのでしょうか.

発生場所 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計件数
人間生活空間 1992年 3
1993年 4
1994年 3
1995年 3
1996年 0
奥山空間 1992年 2
1993年 1
1994年 5
1995年 5
1996年 2
合計件数 1 0 1 1 2 4 3 7 4 1 4 0 28

凡例:○は発生が1件,◎は2件を示します

 上の表は,1992-96年にかけて奥多摩山地で報告された,人間とクマの遭遇件数を示しています.通常奥多摩のクマは12月から翌年4月まで冬眠に入ってしまいますので,その期間を差し引いて考えれば,遭遇の発生は,年や季節や季節にあまり関係なく起こっていると考えられます.ラジオトラッキングの結果が示しているように,クマは意外に身近に生活していることを考えれば,うなづける点です.これらの遭遇のうち,クマが人間をアタックして怪我を負わせたのは3例(28例中)でした.3例中の2例は行楽中の釣り人とハイカーで,残る1例は帰宅途中の地元の方でした.

 これまでクマとの遭遇が起きると,多くの場合は捕獲オリや銃によるクマの駆除が試みられてきました.しかし最近は,遭遇が起こった際の状況を判断して,もしくり返しの発生が懸念されない場合は,駆除を避ける方向に変わってきています.山を利用する人間の側に注意を喚起する立て看板なども利用されています.しかし自治体によってはクマが生活することを人々に積極的に知らせることは,観光産業などに対してイメージダウンになるとして,躊躇する例も見受けられます.

峰谷写真 ヒノキクマ剥ぎ写真
写真:奥多摩町峰谷の”峰”集落から望む”奥”集落.峰集落には,東京都で一番標高が高い人家が存在します.奥集落の後ろに見える尾根は石尾根で,雲取山に続きます. 写真:ツキノワグマによって樹皮をはがされたヒノキ植林木.奥多摩では被害としては顕在化していないものの,初夏の頃に発生が認められています.
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