野生動物の調査研究には,いくつもの方法があります.例えばその動物の生活の痕跡を調べるというのもひとつです.今回ご紹介する方法は,動物を捕まえる方法です.もちろん殺すわけではなく,ワナで捕まえその場で麻酔を施し,必要な情報を集めた後に放します(これらの作業は環境庁の許可を得て行われます).
一般にこうした捕獲を,学術捕獲と呼んでいますが,具体的には体のサイズの計測,血液の採取,外部寄生虫の採取等を行う他,必要に応じ組織や精液の採取なども行います.また無線発信器や耳票の装着なども,一部のクマに行います.得られた情報からは,そのクマの年齢,健康状態,性的な成熟,遺伝的な多型性,等々が分かり,これらを蓄積することで,地域のツキノワグマの特色が解明されていきます.
| 1991年 | 1992年 | 1993年 | 1994年 | 1995年 | 1996年 | 1997年 | 合計頭数 | |
| オスグマ | 1 | 4 | 2 | 1 | 1 | 1 | 3 | 13 |
| メスグマ | 1 | 3 | 3 | 1 | 2 | 3 | 1 | 14 |
| 合計頭数 | 2 | 7 | 5 | 2 | 3 | 4 | 4 | 27 |
上の表は,これまでに東京都内で学術捕獲されたツキノワグマの延べ頭数を示しています(再度捕獲されたクマも含む,延べの捕獲個体数).重複個体を除くと,合計で25頭のツキノワグマが捕獲・放逐されています.
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| 写真:麻酔からの覚醒を待つメスの成獣(奥多摩町1996年8月6日 42kg 8.5才) | 写真:耳票と無線発信器内蔵の首輪を装着した状態のメス成獣(奥多摩町1996年9月17日 27.5kg 4.5才)奥多摩ではこのような小型のクマが多いことが確かめられつつあります |