ECM (Manfred Eicher)

My Best ECM Selection

 ECMはとても好きなレーベルです。とにかく35年以上経つのに一貫してオーナーでもありプロデューサーのマンフレート・アイヒャーの美意識が作品の隅々までに行き渡っているというほんとに希有なレーベルで、作品自体には当たりはずれも多いレーベルなのですが、ジャケットデザインの美しさ等にもECMの魅力にはまる要因があると思います。ここでは私がお勧めするECMの作品10枚を紹介したいと思います。まあ35年以上も続いていてアルバム枚数は1000点を超えようとしている今、私が聴いたことのあるアルバムはそのほんの一握りと限られていて、他にも聴いたことのない素晴らしい作品が多々あると思いますが、とりあえずこの10枚は傑作といって間違いないでしょう!?

1

RETURN TO FOREVER / CHICK COREA (ECM1022)
言わずとしれた大名盤ですが、何を隠そう私がジャズを聴くきっかけとなったアルバムです。それまでロックばかり聴いていた私が、高校生になり初めてこの作品を聴いた時に受けた衝撃は忘れられません。ジャケットもさることながら、美しくも躍動的な表題曲や軽快で楽しい"What Game Shall We Play Today"に極めつけの"Sometime Ago-La Fiesta"のフローラ・プリムのヴォーカル、スキャットもツボにはまりまくりでした。

2

SOLSTICE / RALPH TOWNER (ECM1060)
これぞまさにECMと言った美しくも緊張感漂う奇跡的な一作。曲はラスト1曲を除いて全てラルフ・タウナーのオリジナルで、ラルフ・タウナーがヨーロッパ勢のヤン・ガルバレク、エバーハルト・ウエーバー、ヨン・クリステンセンというECMを代表するアーティストと最初にコラボレートした作品で、4人の個性がみごと一体化したすばらしい作品です。

3

SILENT FEET / EBERHARD WEBER COLOURS (ECM1107)
エバーハルト・ウエーバーも大好きで、彼の独創性はベース(ソリッドタイプのエレクトリックアップライト5弦ベース等)自体にも現わており、その音色にも個性が感じられ、他にもいい作品がいっぱいありますが、この"カラーズ"と名乗った最初の作品ではドラムがジョン・マーシャル(ソフトマシーン好きだし)になったこともあってよく愛聴しています。ここでの長尺の3曲は美しくも熱のこもった演奏でグループとしてのまとまりが増した傑作だと思います。

4

DEER WAN / KENNY WHEELER (ECM1102)
ケニー・ホイーラーのECMでの作品には、はずれがありません。アルバム毎に演奏スタイルがずいぶん違いますが、どれもすばらしい作品ばかりです。特に1作目「GNU HIGH」と2作目にあたる本作がずば抜けていいです。このアルバムにはヤン・ガルバレク、ジョン・アバークロンビー、デイブ・ホランド、ジャック・デジョネットに1曲のみラルフ・タウナーとECMのオールスターが顔をそろえていることもあって、とてもECM的なアルバムに仕上がっています。

5

MOLDE CONCERT / ARILD ANDERSEN (ECM1236)
凄いです!これはCD化の際に4曲追加されて78分の収録になり凄さも倍増!! 1曲目からとばしまくりです。アンデルセンの他ジョン・テイラー、ビル・フリゼール、アルフォンス・ムザーンの4人が普段のECMでの演奏からは想像が出来ないほどハイテンションで弾きまくってます。特にビル・フリゼールのロックギタリストも真っ青な演奏。こんな熱い演奏を間近で聴いたらどんなに感動するか解らないほどのライブ録音です。

6

FRAGMENTS / PAUL BLEY (ECM1320)
ECMは初期からコンテンポラリーなフリージャズを数多く制作・発表してきました。ブレイの作品も早くから発表され「OPEN, TO LOVE」等の傑作も出していますが、ECM作品同様フリージャズには当たりはずれがの振幅が大きいものです。しかし、少々のブランクを経て発表されたこの作品、脇を固めるジョン・サーマン、ビル・フリゼール、ポール・モチアンの作品の他カーラ・ブレイやアネット・ピーコックの曲の再演も含み、まさに再起をかけて望んだのかのような作品。共演三人の演奏も素晴らしく奇跡的な傑作に仕上がりました。

7

THE AMAZING ADVENTURES OF SIMON SIMON / JOHN SURMAN (ECM1193)
ジョン・サーマンは早くからシンセサイザー等の電子楽器を取り込み使いこなしてきたが、79年ECMでの最初のリーダーアルバム「UPON REFLECTION」でサックス、クラリネット、シンセサイザーを駆使した完全ソロ・アルバムを吹き込んでいます。その成果をさらに発展させコンセプト・アルバムに仕上げたのが本作、ドラムや作曲面にジャック・デジョネットの協力を得て、1曲目のミニマルなシンセのリズムにバスクラで奏でられる美しいメロディ、2曲目のフリーキーなソプラノサックス、多重録音を駆使した3曲目等サーマンの魅力が十二分に堪能できます。

8

NAPOLI'S WALLS / LOUIS SCLAVIS (ECM1857)
またまた凄くて笑ってしまいそうな作品。ルイ・スクラヴィスは、民族音楽や現代音楽奏者とも共演するなど多彩な活動をしている実力派ですが、前作のクインテットに加わったVincent Courtoisのチェロが凄いです!前作でもチェロでノイズ・ギターのような音を出していました。このアルバムはさらにHasse Poulsenというギタリストが派手にギターをかき鳴らし、もうプログレかジャズ・ロックみたいです。中盤には美しいナポリ民謡風な曲が出てきたかと思うと突然拡声器を使ったみたいな歌が出てきたりと一筋縄では終わりません。もう最高!

9

TALES OF ANOTHER / GARY PEACOCK (ECM1101)
後にキース・ジャレットのスタンダーズとなるゲイリー・ピーコック、ジャック・デジョネットによるトリオの記念すべき最初の録音で、曲が全曲ピーコックの作品ということでピーコック名義になっていますが、スタンダーズの作品として聴いても問題のない3人のインタープレイが感動をよぶ傑作名盤です。

10

SOMEWHERE CALLED HOME / NORMA WINSTONE (ECM1337)
ブリティッシュ・ジャズ・シーンでの活躍で知られるノーマ・ウィンストンですが、ECMではケニー・ホイーラーとジョン・テイラーとのAZIMUTHとしても数枚のアルバムを出しております。これはECMとしては珍しい唄物アルバムとして87年に出されました。バックは夫でもあるのジョン・テイラーのピアノとトニー・コーのサックスとクラリネットだけというシンプルな編成にノーマ・ウィンストンが囁きかけるように歌い、しっかりとECMらしい透明感が溢れたアルバムに仕上がってます。

番外


MUSIC FROM TWO BASSES / DAVID HOLLAND / BARRE PHILLIPS (ECM1011)
数多いECMの作品から10枚となるとどうしても外さなくてはなりませんが、最初期に制作されたこの1枚はどうしても紹介したくて番外扱いで紹介します。ECMには個性的なベーシストやベーシストの作品が数多くありますが、もともとマンフレート・アイヒャーがベーシストだったからかもしれません。そんなアイヒャーがデイブ・ホランドとバール・フィリップの二人に世界初のベースだけのデュオ・インプロヴィゼイション・アルバムを作らせました。ベースみたいな地味な楽器だけでアルバムまるごと即興など聴いてられるかと最初は思いましたが、ところがどっこい一気に聴けちゃうすばらしい作品に仕上がってました。正確にはレコードの1面が完全な即興で2面に収められた5曲は作曲がなされていますが、初挑戦でこんな凄いアルバムを作ってしまう初期ECMの勢いを感じさせます。

 結局、個人的に好きなアーティストの作品から選んでしまいましたが、まだまだ他にもパット・メセニー、キース・ジャレット、ヤン・ガルバレクの諸作など傑作アルバムが多々ありますが、ECMにはこれからも良質なアルバムをどんどん作っていただけることを期待しております。(06.12.31)

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