様似・戦争の記録第1集−8

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あとがき

昭和二十年六月二十三日、様似村幌満沖で、幌泉(現えりも町)の三隻の漁船がアメリカ潜水艦の攻撃を 受け、十六名中、十名が犠牲となった。
太平洋戦争で、日高地方における民間人が犠牲になった最大の「事件」である。
この「事件」に次ぐのは、八日後の七月一日、静内沖で漁船三隻がアメリカ潜水艦の攻撃で八名が死亡し た「事件」だ。(「静内町史」)
私は、本稿で「幌満沖漁船撃沈事件」のほぼ全容を調査し、記述したと思っている。もちろん、「はじめ に」で述べたように、先達者として、北海道新聞記者・菅原淳氏の「聞き書き」活動があったことは、私の 励みにもなった。
「事件」乗組員全員の氏名を確定し、それぞれ十六名の遺族から聞き取りをしたのは、本稿が最初である と自負している。ただ、私には、アメリカ側の資料の有無を確認するだけの力量がなく、援用できなかった のが残念だ。
しかし、「様似町史」も「えりも町史」も全く触れていない「事件」を明らかにしたことは、両町の戦争 被害の実態をより豊かにすることができたと思っている。
聞き取りの中で、見ず知らずの私に、犠牲となった夫や父親のことを話してくださった遺族のみなさん、 「事件」生存者の渋田重信氏、菅野久七氏に深く感謝する。
また、「事件」調査の先達者、北海道新聞記者・菅原淳氏が氏の「聞き書き」の引用を快く承諾くださり 改めてお礼する。
さらに、調査には、様似町図書館、えりも町史編さん室長・神子島清八氏から、多大な協力をいただいた ことも付記し感謝する。
本書を、幌満沖に消えた漁民と、「民間人」であるとして、何の補償になく、戦後の困難を耐えてこられ た遺族のみなさんに捧げる。

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